表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

97/114

93.お買い物からの……

「ベアトリーチェ様、これなんていかがでしょう?」


 珍しくはしゃぐオレリアは、美しく飾られていたコサージュを手に取り私とミレーヌに見せた。

 

「まあ! とっても素敵ですわ、オレリア様」

「ええ、本当に!」とミレーヌも瞳を輝かせる。


 今日は、オレリアとミレーヌと一緒に貴族街にあるアクセサリーショップを訪れていた。


 目的は、ダンスパーティーで、お揃いで身につけるアクセサリー探しだ。

 最後の学園祭は、せっかくなので初めて行ったクラブ活動のように、皆で楽しもうとなった。

 もちろん髪型は、例のヘアアレンジ豪華バージョンに決めてある。


「お客様方、大変お目が高くていらっしゃいます。そちらは特殊な加工がされており、ライトの光で色々な輝きを見せてくれます。ドレスに付ける以外にも、髪飾りや、手首につけてもよろしいかと。更にリボンの色や素材を変え、ドレスの雰囲気に合わせオリジナリティを出すことも可能です」


 ピチっとしたスーツを着こなした、ショップの支配人は手を揉みながら次々と提案してくる。


「確かに、それも面白いですわ。リボンをパートナーの髪色に合わせるなんてどうでしょうか? シンプルな色の場合には、自分で刺繍を施すなど……」


 オレリアは、新しい流行発信にノリノリだ。

 学園に婚約者のいるオレリアは、濃いブルーのリボンに目をやった。


「ふふ、さすがオレリア様。ダンスで動くたびに輝くお花と、美しく揺れるリボン……ワクワクしますね。きっと、皆様が真似をしたくなりますわ」


 学園祭でそれが評判になれば、在校生はもとより、今回のダンスパーティーに間に合わなかった者は、社交界に出てから流行らせてくれるだろう。


 そして、互いに好きな色を選び注文した。

 出来上がり次第、それぞれの邸宅へ届けてもらよう伝える。

 

「では、そろそろ次へ参りましょうか」

 

 上客用に用意れていたソファから立ち上がり、店を出ようとした時だった。


「ベアトリーチェ・ドルレアン様宛に、お預かりしている物があるのですが」


 支店長に声をかけられた。


「私宛ですか?」

「左様でございます」


 誰からとは言わない、支店長の言葉に首を傾げる。


 この店に来るのは内緒で、私達の侍女しか知らないはず。だとしたら、私の動向を知ることが出来るのはカルロス達だけだろう。


「オレリア様、ミレーヌ様、先に馬車に戻っていてくださいませ。受け取ったら、すぐに参りますので」

 

 二人は顔を見合わせて「では、馬車でお待ちしておりますわ」と、ニッコリ微笑み先に店を出た。


 支店長について店の奥へ入ると、一見するとオルゴールみたいな形の、美しく装飾が施された物を目の前に置かれた。


 普通、プレゼントなら、ラッピングがされているのでは……。違和感を抱きつつも、それを受け取った。

 

「どうぞ、開けてみてください」

 

 蓋を開けたら曲でも流れるのかしら?


 底にゼンマイでもあるのかと、指で探すも見つからない。

 魔道具の一種かもしれないと、不思議に思いながら、蓋に手をかけてゆっくり持ち上げた。


「これは、どなたからからのプレゼントでしょう?」


「とても、品のある紳士の方でした。そう、鮮やかなグリーンのお髪が印象的な……」


「え……緑の髪!?」


 ()()()()()だと思った時には――もう、遅かった。

 パカっと開いてしまった蓋の裏には鏡があり、私の顔がしっかりと映っている。

 その刹那、景色が歪み視界が反転し、目眩に襲われた。


 

 ◇◇◇◇◇



 ――静寂。

 

 瞼を閉じていても分かる眩しい光に、だんだんと意識がハッキリとしていく。

 どにか上半身を起こして、ぶんぶんと重い頭を左右に振る。光で眼をやられないように、片目ずつゆっくり開いた。


『やっと、起きたね』

 

 聞きたくなかった声が頭に響いた。


 眩しさに目が慣れ、声の主を確認しようと辺りを見回す。カルロスの作り出す異空間に似てはいるが、真っ白でなんとも神々しい。


 天国――そう言われたら、信じてしまいそうな場所だ。

 

『ねえ、君。無視するとか、不愉快なんだけど』


 ――えっ?


 次の瞬間には、私の目と鼻の先に……ノアとよく似た顔があった。いや、似てるを通り越して瓜二つ。

 ただ、髪と瞳の色がノアとは違い、鮮やかな緑色をしている。


 目が……逸らせない。


 息が止まりそうな程の恐怖を感じ、身体が強張る。

 カルロスやノア、魔族の皆からは向けられたことのない視線。バスチアンでさえ、ここまでではなかった。


 背中を冷たいものが伝っていく。


「あ……あなたは、誰?」


『君、図々しいね。勝手に喋らないでくれる?』


 不機嫌さを隠そうともせず、私の額に指を押し付ける。


「……っ」


 逆らうと危険だ。

 とにかく、私が置かれている状況を把握しなければ。表情を気取られないようポーカーフェイスに徹し、頭の中で状況を整理していく。

 

 私は、あのオルゴールみたいな箱の蓋裏に嵌められた鏡を見た。それに自分が映った瞬間、目がまわってしまい意識を保っていられなかった。

 そんな中、何かに吸い込まれた感覚だけは残っている。


 可能性としては、私は鏡の中に居るのではないだろうか?


 いつも、私に危険が迫ると……鎖骨下の印が熱を持ち、勝手に発動していた。それが、今回は全く何も起こらない。

 つまり――。この空間内では、魔法が使えないのかもしれない。

 

 緊張からか、口の中が乾いてパサパサになってくる。


『君さぁ、あの時なんで魔王と一緒にいたの?』

「……魔王とは?」


 掠れた声で、そう答えるのがやっとだった。


 知らぬ存ぜぬを通さなければ……。


 男爵領で会った時、この天族はカルロスが魔王だと気づいていたのだ。そして、わざと気づいていない振りをして、私達を泳がせていた――何のために?


『人間のくせに、魔王の妃になるつもりだなんて何様だよ。人間が魔界の王妃なんて、笑えるんだけど』


 ……は、い?

 今、この緑頭はなんて言った?


「……妃って?」


 額に置かれた指先を徐々に下げ、私の鎖骨下……印の位置を強く突き、綺麗な口元を歪めて言った。


『王妃の印があるくせに、しらを切るなんて。本当に人間は愚かだね』と。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ