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84.解けだした謎

更新、遅くなりましたm(__)m



 キーランの魔法で靴を綺麗にしてもらい、一度寮へと帰った。

 そのままキーランに説明を求めたのだが、首を横に振られて断られる。


「今夜、魔王様とノアがちゃんと説明するからさっ」


 大まかな時間を指定したキーランは、猫の姿に戻ると私の手の甲をペロリとなめた。ざらりとした舌がくすぐったい。

 それから片目をつぶってウィンクをすると、窓から優雅に飛び降りて行った。


「今のケリー、可愛かったわ。でも……何だったのかしら?」


 首を傾げた私に、ジゼルはふふっと笑った。


「猫ではなくキーラン様のお姿でしたら、さぞ素敵な紳士のご挨拶でしたね」

「あ、確かに!」


 二本足で立ち、座る私の手に肉球プニプニの前足をそっと乗せた仕草は、正にそれだった。

 でも、キスを落とすのではなく舐めるとか……紳士にしてはちょっと惜しかったけれどね。


 まあ、可愛かったから何でもいいわ。


 ケリーに癒されて、約束の時間まで頭の中を整理することにした。

 侍女のマルグリートが白で、家庭教師の外見を知ったのは明け方のこと。


 その前に家庭教師を見て、私が最初に感じたモヤモヤ。原因は他にあったのだ――。



 ◇◇◇◇◇



 魔王城へやってくると、ロランとキーランが揃って待っていた。カルロスとノアの姿はまだ見えない。

 

「そろそろだね」


 キーランの言葉がまるで合図だったかのように、目の前にカルロスとノアが現れた。


「ビーチェ……」


 私を見た途端、目を細めて笑みを浮かべたカルロスに、キュッと胸が締め付けられる。

 私が返事に詰まってしまうと、久しぶりに会ったノアは少しだけ眉を上げた。

 けれど、特に何を言うわけでもなく本題に入る。

 

「揃ってますね。ああ、レンには後で私から説明しますので」

 

 どうやら、義兄は敢えて呼んでいないらしい。


「先ずは、これを」


 そう言って静かにテーブルに置かれたのは、見るからに高級そうな、年代物の宝石箱だった。

 しかも、王家の紋章付き。

 伊達に第二王子の婚約者として学んできたわけではない。それが何であるのかは嫌でも判ってしまう。


 ……ゴクリと唾を呑んだ。


「なんで、王家に伝わるこれがここに? 王妃殿下の物よね?」


 本物は遠くからでしか見たことはないが、王妃が国の祭事に身につける大切な宝石が入っているはず。

 頷いたノアは、パカッと開けた。


「これって……どういう事!?」


 見覚えのある、大きめの魔石が散りばめられた三連のネックレス。眩ゆい輝きを放ってはいたが……肝心の、真ん中に埋め込まれていたはずのが()が無かった。

 一番大きな魔石が置かれていた石座だけ、虚しく残っている。


「まさか、盗まれたんじゃ!?」

「いや、壊しただけだ」


 いとも簡単にカルロスは言ってのける。


「……は、い?」


 私の耳がおかしくなったのだろうか?


「ビーチェ、なんて顔をしているのだ。安心しろ、跡形もなく砕いてくれたわ」


 氷の彫刻のような美しい口元から出た言葉は、信じ難いものだった。


「ちょ、ちょっと理解不能です。まったくもって安心なんて出来ませんけど!」


 あってはならない大事件の予感に、サーっと血の気が引いた。


「我が王よ。その説明ではヒナが不安になります。王妃のところには、魔法で作った代物を置いて来てあると伝えなければ」


 眉間に皺を寄せたノアは、中指でクイッと眼鏡の位置を直しながら言った。


 そういう問題ではないと思う……。二人の会話に置いてけぼり感が半端ない。

 

「……ならばノアが説明すれば良い」

 

 不貞腐れたカルロスに代わって、小さくため息を吐いたノアが説明を始める。


「結論から言いますと、歴代の王妃が継承するネックレスに埋まっていた魔石が……本物のバスチアンの核でした。いえ、本物は正しくないですね。大元(おおもと)と言った方がいいでしょうか」

 

「――は?」


 より一層、解らなくなっていく。


「バスチアンの核があったのなら、バスチアンは最初から死んでいた……ってこと?」


「いいえ。奴は、生きたまま自分の核を取り出すことに成功したのです。そして、複製の能力。自身の命である核を安全な場に置き、人間を操ってきたのです」


「安全な場って……まさか」


「そうです、王宮の王妃の間です。国王の妃が代々受け継ぐ物として、大切に保管されて来たのでしょう。持ち主を王とせず、女性である妃を選んだのはバスチアンの狡猾な所ですね」


 確かに国王ではなく王妃の手元なら……。


 女性ならではの空間は、厳しい目を備えた臣下でもそう簡単には立ち入ることは出来ない。

 王妃ともなれば、身内や使用人の前でも常に気を張り続けなければならないのだ。


 地位が有るからこその孤独。

 だからこそ、闇を抱えたバスチアンは、彼女たちの心の奥底に沈んだ闇を利用した。

 硬く強固なもの故の脆さ。利用しやすい存在だったのかもしれない。


「でも、どうやって見つけたの?」

「それに関しては、王妃からのアリスへの不自然な動きがありましたから」


 ――そうか。今日のレイモンの話を思い出した。


「まあ、こんなに早く発見できるとは思いませんでしたが……」と、ノアは不本意そうな表情で、チラッとカルロスを見た。


 ん? 


「ふんっ! ビーチェを冒涜するからだ」


 頬杖をついたカルロスは当然だと言いたげだ。


 はい? 私がいつ冒涜されたのだろうか?


 いや、私のことではないのかもしれない。

 あの家庭教師に何かあって、カルロスは怒った――そう考えると胸が苦しくなってくる。


「『ビーチェ』とは……あの家庭教師のことですよね」と堪らずに、呟いてしまった。


 …………長い沈黙。


「「「「はあっ!!?」」」」と異口同音に声が上がった。


「ヒナは、何か激しく誤解をしているみたいですね」と呆れ顔のノアが言えば――。


「ビーチェはヒナでしょうがっ」とキーラン。

「どうした、ヒナ。……どこかで頭でも打ったのか?」とロランは心配しだした。


「で、でも。あの家庭教師は『ビーチェ』そのものではないですか? 本物がいるのならば、私はここを去るべきでは……」


 私の言葉に、全員が一斉にカルロスを見た。


 と同時に、ズン――ッと空気が重くなる程、カルロスは辛そうに表情を歪めた。


 ――ああ、やっぱりそうなのか。


 そう思った次の瞬間。

 パチリと指が鳴り……私はカルロスの腕の中だった。


「……え」


 見上げると、痛々しいくらい悲しげなカルロスが、私を見下ろしていた。



お読み下さり、ありがとうございました。

更新がゆっくりペースになりますが、これからもお付き合い頂けたらと思いますm(__)m


いただきましたブクマ、評価、感想、コメント、とても励みになりました。

本当に、ありがとうございます(≧∇≦)

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― 新着の感想 ―
[一言] まだ本調子ではなさそうな中での更新、どうも有り難うございました。 >「ふんっ! ビーチェを冒涜するからだ」 これって魂を無視して『ビーチェ』の容姿だけをそっくり再現したビーチェのまがいも…
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