表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/114

46.協力者

 ――私は気づいてしまった。


 魔王は……

 私が言った『相棒(パートナー)』って言葉を、めちゃくちゃ気に入っているっ!!



「パートナーって、どういう事ですか? 何か利害関係でもあるのですか?」


 レンは圧倒されそうな美貌の笑みに負けじと、グッと眉を寄せ怪訝そうに魔王を見る。


「……ふむ。私の望みは、ビーチェがいればそれだけで良い」


「「はい?」」


 思わずレンと同時に聞き返してしまう。 

 ハァ……と、見兼ねたノアが口を開く。


「魔王は、ベアトリーチェ嬢以外の人間には興味が無いのですよ。人間界にとって、それは最大の利になるでしょうね。ベアトリーチェ嬢は、この国やご家族をとても大切にしていますから」


 うんうんと、私は頷く。

 前半はちょっとひっかかるが、この国と家族が大切なのは本当。ノアの言う通りだ。


「それって、ベアトリーチェ嬢ひとりが犠牲になるってことじゃないですか!」


 レンは怒りを顕にする。


「レン様、それは違います。私は、彼らがいなければ……エルネスト殿下とアリス様に無実の断罪を受けていました。婚約破棄や、最悪は国外追放だってあったのです」


「そ、それは……」


 私がダンスパーティーの出来事を指していると、レンは気が付いている様だ。


「ですから、犠牲になどなっておりません。私は、ここに居る魔族のみんなが好きですから」


 これは、絶対に言っておきたかった。

 レンの方を見ていたので彼らの顔は見えなかったが、温かい優しい視線を感じた。


「寧ろ、ベアトリーチェ嬢が魔族と関係があると知られれば、人間によって彼女が血祭りにあげられるでしょう。若しくは……魔王を抑えられる存在、救世主(メシア)として利用されるかもしれません」と、ノアは言った。


 えっ!? 何それ、初耳なんですけど!

 

「もしも、レンがベアトリーチェ嬢の身を案じるのであれば、こちらに協力していただきたいのです」


「協力……ですか?」


「そうです。レンは勇者として召喚されましたが、国王とは謁見していませんね」


「……はい。謁見には順序があり、時間がかかると言われました」


「聖女と言われるアリス嬢においても然り。つまり、国王陛下はまだ魔王の復活を信じていません。そもそも、この世界には沢山の国があるのに、この国だけがその兆候を得るなど少々胡散臭いのですよ。陛下の命を受け、宰相や影の存在が周囲の国々の情報を探っています」


 ノアがお父様とやたら会っていたのは、それだったのね。


「そんなことって……」と、レンはショックを隠しきれない。


 まさか、国王から信用されていなかったとは思いもしなかった。いくらなんでも、異世界から勝手に召喚しておいて、それは酷い話だろう。


「別に、レンを信用するしないの話ではありません。誰が、何の目的をもってした事なのかが問題なのです」


 ノアは素早くフォローすると、話を続ける。


「我々には、不穏な要素諸共この国を消し去るのは簡単なのです。しかしながら、ベアトリーチェ嬢はそれを望みません。それ以外の方法として……人間達で解決できるように、我々は手を貸し動いています」


「もしかして、怪しいのは……宮廷魔術師団とアリス嬢ってことですか?」


 レンの問いかけにノアは頷く。


 あれ? 


 思わず首を傾げる。

 今の二人の会話に、エルネストが含まれていないのが不思議だった。


「なぜ、レン様はそう思うのですか? エルネスト殿下も関わっていますよね?」


「……ああ、何となく直感と言うか」と、ぽりぽり頭を掻く。


「直感ですか?」


「エルネストは、僕が魔道具を着けていると知らないんです。……ただ、アリス嬢がどうなのかが分からなくて。それで」

「交換日記、なのですね?」


「はい、そうです。それを確かめたくて、ベアトリーチェ嬢に協力をお願いしました」


 レンが盗聴を疑っていたのは、魔術師バスチアンとアリスだったのだ。

 疑うきっかけなったのは、アリスをつけて保健室を覗いた時だった――と告白しだした。


 ぁうっ……!! 恥ずかしいっ!


「あの……ベアトリーチェ嬢と魔王は恋人なのですか?」

「ち、違っ」


 恋人ではないが、直球すぎる質問に戸惑いを隠せない。


「だから、大切なパートナーだと言っている」


 魔王は全く揺るがない。

 ノアは小さく溜息を吐く。


「ベアトリーチェ嬢は生まれた時から事情があり、魔力が不安定なのです。それを、魔王の魔力で補っています。時々、魔王が魔力を流して安定させているのですよ。以前、ベアトリーチェ嬢が倒れたのを見たでしょう?」


 おおっ! 見事な嘘八百だ。いや、半分本当か。


 私が日向であることを、まだ隠し続けてくれるのは有り難かった。

 正直に話すのは、今じゃない。私がちゃんと義兄に向き合う時だ。それは近いうちにきっと来る――そんな気がするのだ。

 

「あ! だから、わざわざ保健医に?」と、閃いたようにレンは言う。


 いいえ。魔王は絶対退屈だっただけです。

 心の中で謝りつつ、微笑んで誤魔化しておく。


「それで、どうしますか?」と、ノアは再度尋ねた。


「わかりました、協力します。僕も捨て駒なんて御免ですからね。奴らの尻尾を捕まえますよ」


 肩を竦めてレンは言った。


 答えに満足したノアはフッと笑う。

 ノアが魔王を見れば、頷いた。


「では……協力者であるレンには、私達の本来の姿をお見せしましょう」


 顔を見合わせた三人は、魔族の姿に戻った。


 背中から輝くような銀翼を生やした、元天族のノア。

 人間の姿よりかなり大きくなった、ブルーグレーと茶の美しい毛並みのムキムキの剣士。ワーウルフのロラン。

 耳とシッポが愛らしい魔眼のオッドアイ、猫獣人キーラン。


 全員が魔王直属の部下で、他の魔族とは桁違いの力を持っている。ほんの少しだけ、それを解放しているのか……立っているだけで凄い威圧感だ。


 うーん、圧感だわ! 

 どうせなら、戦隊モノの決めポーズでもしてほしい。


 ロランがいつも半裸だったのは、服を着ていても本来の姿になると破けてしまうのが原因だそうだ。

 変身する前に、いそいそと制服をジゼルに渡していた姿は、ちょっと可愛い。

 ノアとキーランの服が変化するのは、何か特殊能力が働いているのだろうか?


「……マジ、か」

「これで、少しは信用してもらえますか?」

「ああ……どう考えても、俺には倒せないよ」


 後退ったレンの口調が、義兄らしく戻っている。


 クスリと笑った眼鏡無しのノアは、「魔王は更に別格ですよ」とレンの耳元で囁いた。


 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ