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35.試合の行方

お読み下さり、ありがとうございます!

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 名前を呼ばれたロランとオリヴィエが、ステージに上がった。

 

「「「ワァァァァァァ――……!!」」」


 と会場中で歓声が響き、盛り上がりは最高潮だ。


 ロランとオリヴィエは、それぞれの学年で最強なのだ。それを級友達はよく知っている。

 だからこそ、これが決勝ではなく準決勝であるにもかかわらず、全員がこの戦いに注目していた。


 この試合で勝った方が次の決勝に進め、エルネストかレンのどちらかに当たる。

 レンは、試合をする度にレベルが上がるかの如く、強くなっていく。

 エルネストは、さすがはこの国の王子と言ったところ。

 オリヴィエは、私の弟なのだから折り紙付きだ。

 ロランは……うん、ハンデ付きだけど。こればかりは仕方ない。


「それでは、準決勝――はじめっ!」


 試合開始の声がかかった。


 ロランもオリヴィエも直ぐには飛びかからず、ジリジリと慎重に間合いを詰める。

 応援席では、固唾を呑んで見守っているのか、声援が静かになっていく。


 先に動いたのはオリヴィエだった。

 ロランは、私やジゼルに教えてくれる時のように、オリヴィエの闘志を楽しそうに受け止める。オリヴィエにとって、この戦いはとても良い経験になるだろう。


 ……けれど。


 純粋に試合の応援を楽しみたかったが、この試合はこれから妨害されてしまうのだ。

 ロランとオリヴィエが棄権になれば、もう一つの準決勝が事実上の決勝となる。真剣に訓練していた二人……エルネストとレンは、きっと知らないのだろう。いや、オリヴィエも含めたら三人か。


 何だか、無性に腹が立ってくる。


「……そろそろだな」


 救護テントの窓から様子を見ていた私に、カルロスは声をかけた。

 

 オリヴィエとロランの剣が重なり、ギリギリと鍔迫り合いをしているところだ。ハンデがあってもやはりロランは強い。力の差で、オリヴィエの剣をロランが弾いた。


 ――その刹那だった。

 

 二人の立っていた、ステージの端は音もなく崩れ出す。オリヴィエとロランはバランスを失った。

 爆発ではなく雪崩のような崩壊は、一見すると自然に壊れたようにしか見えなかった。


 安全を考慮し、場外の落下防止用に張られていた布も、土台のステージが崩れたせいで外れてしまっている。

 ついに、二人が立っていた場所も崩れ出す。崩壊し続けるステージのせいで土埃が上がり、ロランとオリヴィエの姿が見えなくなった。


 ――会場からは悲鳴が上がる。


 ステージはそこまで高くなかったけれど、確実に怪我は免れないと誰もが思った。


「大丈夫だ。重しは解いてある」


 息を呑む私の肩に手を置いたカルロスは、周りには聞こえない声で言う。

 そして、魔眼の視界を共有し、状況を見せてくれた。


 キーランの言った通り、おでこは全く関係なかったが、今はそんな事はどうでもいい。


 ロランは空中で体勢を立て直し、オリヴィエに向かって降下しキャッチすると、きれいに着地した。

 普通なら土埃で見えないが、今の私の目にはそれがハッキリ見えていた。

 

 ホッと胸を撫で下ろす。


「では。ベアトリーチェさん、キーラン君、行きますよ」

「「はいっ、先生」」


 医療道具を持ったカルロスと、現場に向かった。

 

 

 ◇◇◇◇◇



「ロラン君は、不自然な体勢で受け身をしたようですね。利き手を骨折しています。これでは、動かすのは不可能ですね……この後の試合は無理でしょう」


「……そうですか。とても残念ですが、こればかりは仕方ありませんね」


 大会責任者の教師は、ロランの診断結果を聞き落胆した。


「では、カルロス先生。二人をよろしくお願いします」


 そう言って、教師はテントを後にした。


 ステージは、土属性の教師達によって、あっという間に再建されていく。

 剣術大会では、力自慢の生徒の無謀な戦いで、ステージが壊されることが時々あるのだとか。


 今回みたいな崩壊は初めてらしいが、うまいこと全壊はしていない。命に関わる怪我もなかった。このくらいであれば、中止にはならないと教師は言っていた。


 後日、施工ミスにがあったのかは、詳しく調べるそうだ。



 暫くの休憩の後、新たに整えられたステージで、エルネストとレンの試合が始まった。


 分かってはいたけれど……。


 ベッドに横になって、目を閉じているオリヴィエを見た。

 大丈夫、怪我はしていない。

 あの時、ロランはオリヴィエに暴れられないよう、抱えると同時に気絶させたのだ。人間離れした動きも見られる訳にはいかないし。


「今度また、オリヴィエと再試合をしないとなっ!」

 

 私の気持ちを察したのか、ロランはそう言った。

 全く負傷していない……包帯グルグル巻きの手で、親指を立てニカッと笑う。


 まったく、男前なんだから。



 ◇◇◇◇◇



 エルネストとレンの試合は、僅差でレンが勝利し幕を閉じた。


 ――そして、表彰式。


 小説の通りに、空には金色の魔法陣が現れた。


 そして魔法陣の中心から、ゆっくり聖剣が出てくると、会場はどよめいた。

 光に包まれた聖剣は、勇者を選んだかのように、レンに向かって降下していく。

 

 この事を、レンもエルネストも知らされていなかったようだ。二人は驚きに身動ぎすら出来ずにいる。

 

 そんな中、宮廷魔術師によって連れてこられた聖女アリス。


 ……やはり、ね。


 これを画策したのは、宮廷魔術師とアリスだけだったようだ。

 純白のドレスを纏ったアリスは、レンとエルネストの真ん中に立つと、声高々に宣言する。


「神に選ばれし勇者レンと共に、エルネスト・ルーフェルブ王子と、私アリス・ミュレーで復活した魔王を倒します」

 

 ――世紀の瞬間の目撃者となった人々は、聖女と勇者と王子に歓呼した。




 ……で? 魔王、ここに居ますけど。


 開会式同様に救護テントの前から、それを見ていた。これから彼女達は、どうやって魔王を探すのだろうか。


「……まさか、()()が聖剣だとはな」


 カルロスは、作った教師の表情を消し……無表情で冷ややかに呟いた。


 あれ……魔王は怒っている?


 いつもの魔王とは、どこか雰囲気が変わった気がした。

 

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