表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/114

27.まさかの一日

 ――お、おうっっ……プリンだっ!


 周りからの反応がどう来るか、少し緊張しながら後ろの扉から教室へと入ると……直ぐに足を止めた。

 教壇近く、いつもの特等席に座るエルネストの横には、オリヴィエから聞いていた珍しい髪の人物の後ろ姿がある。


 転生前に見たお洒落さん達がしていた、毛先だけヘアカラーをして遊ぶ、上級者のそれではなかった。完全に黒と金の比率が、プリンとカラメルの状態……。


 彼は、日本人だ。もう、嫌な予感しかしない。


 フウゥ……と、ゆっくりと息を吸って吐く。

 一歩ずつ、その席に向かって進む。教室の皆が、私の登校に喜んでくれているのが分かる。

 けれど、先に挨拶すべきは馬……コホンッ、第二王子だ。

 柔やかな笑顔を保ちつつ、声を掛ける。


「エルネスト殿下、おはようございます。この度は、大変ご心配をおかけしました」

 

「……! ベアトリーチェ嬢、もう大丈夫なのか?」


 一瞬、顔が強張ったが、さも心配していたかの様に取り繕う。余程、周りから強く叱られたのだろう。


「はい。領地での療養で、だいぶ良くなりました」


 一応、完治とは言わない。何かあれば、病弱な体質は色々と使えると、ノアに言われのだ。


「それは、何よりだ。だが、まだ無理はしない方が良いぞ」


 以前なら絶対に言わないセリフだ。


「殿下、ありがとう存じます。あの、こちらは……?」


 私をガン見してくる視線を、無視する訳にはいかなかった。仕方なく、プリン頭の男子生徒を紹介してもらうよう促す。


「ああ、ベアトリーチェ嬢は休んでいたから、まだ会ってはいなかったな。他国から留学してきた、レン・モチヅキだ」

 

「ベアトリーチェ嬢、初めましてっ。レンとお呼びください」


 ぎこちない笑顔で自己紹介したのは……間違いなく、義兄だった。しかも見た目が、()()()からそんなに年数が経っていないことを物語る。


「ベアトリーチェ・ドルレアンと申します。レン様のお国は……どちらから、いらっしゃったのですか?」


 ニコッと、アリスの無神経な物言いを模してみた。

 紹介で他国とだけしか言わなかったのだから、それは聞いてはいけないのだ。


 エルネストはギョッとした。

 私がそんな聞き方をするとは思ってもみなかっただろう。今まで、外では第二王子の婚約者として先読みし、口を慎んできたのだから。

 

「……あの、えっと、多分遠いのでご存知ないかと」

「まあ、そんな遠いお国なのですか?」


 そりゃ、遠いわ。異世界だもの。


「あっ! ベアトリーチェ様っ!」


 背後から、空気を読まない本家本元がやって来た。


「お身体は、もう大丈夫なのですか? 盗賊に襲われたと聞いて、私っ……心配で心配で」


 両手を口元に当てたアリスは、瞳をウルウルさせる。


「アリス嬢、それは根も葉もない噂だと……!」


 明らかに、エルネストは焦っている。

 どうやら、エルネストはアリスを制御しきれていないようだ。レンも、困り顔をしている。

 

「アリス様……ご心配、痛み入ります。ですが、盗賊とは何の事でしょうか? なんとも物騒なお話ですわね。どちらでお聞きになった噂でしょうか?」


 さあ、白状しなさい。


「あらぁ〜? 噂なので、よく覚えていなくてぇ」と、アリスは不思議そうに首を傾げた。


 全く、白白しい。


「そうですか。アリス様、今後のお立場もございますので、あまり不確かなことは……お口にされない方がよろしいかと」


 そう、優しめの口調で釘をさしておく。


 結局、誤魔化され噂の出所は分からなかった。


 自分の席に着くと、待っていたかのようにオレリアがやって来た。

 そして、キーランとロランも普通に話し掛けてくる。かと言って、私と親密にするのも不味いので、普通に仲の良いクラスメイトって感じだ。


 もう魔族の三人は、エルネストの取り巻き役をする必要は無い。

 けれど――。

 彼らはエルネストの過ちを知り、最悪の結末を防ぎ、王子としての立場を守ったことになっている。エルネストなりに、三人には感謝しているみたいだ。

 そして、そのまま友人としての立ち位置をキープしているらしい。


 あれ? そういえば、ノアはまだ教室に来ていない。


「ノア様は、今日はお休みですか?」

「あら、まだいらっしゃいませんね」と、オレリアも首を傾げる。


 時間にきっちりしているノアが遅いのは珍しい。

 世間話的に、ロランに訊いてみた。キーランでも良かったが、うっかり余計な事を言ってしまう可能性がある。


「用事があるようで、それを済ませてから来るそうです。そろそろ来る頃でしょう」と、ロラン。


「そう、保健室だからっ」


 キーランも口を出す。


「まあ、どこか具合でも?」

「いえ、提出書類を出しに行っただけです」


 チラッと、ロランはオレリアから見えないよう、キーランを睨んだ。すると、テヘっとキーランは笑う。


 あ、言っちゃいけないやつね。


 その後、少ししてからノアは教室にやって来た。



 ◇◇◇◇◇



 授業が終わり、教室を出た所で話しかけられた――そう、まさかのレンに。


「ベアトリーチェ嬢、少しお話ししたいのですがっ」

「はい、何でしょうか?」


 何故……ベアトリーチェである私に話しかけたのだろうか? 私が、日向だとは絶対に知らないだろうし。


 この顔に一目惚れしたのかしら?


 久しぶりに、真正面から見た義兄。部屋から出て来なくなってから、殆ど目を合わせることも無かった。最後に見たのは、歩道橋の上からだ。


「あの、学園祭での話を聞いたんです。それで、少し興味が……あ、変な意味じゃなくて! 何か凄いなって。それに、この前オリヴィエとも友達になったので」


「そうなのですか……。私も他の国について興味があります。良かったら、今度オリヴィエも一緒にお茶会でもいかがでしょうか?」


 こちらも、勇者の役割を知りたい。

 

「ぜひっ! ありがとうございます!」と、破顔するとグッと手を握ろうとした。


 いつぶりの笑顔だろう……って! こっちの世界では、握手であろうと淑女にボディタッチはよろしくない。


 そう思った瞬間、急に何かに足を取られた。後ろへ倒れそうになると、フワッと背後から抱き止められた。


 ん? この感じ、まさか?


「ベアトリーチェさん、まだ具合が良くない様ですね」

 

 そう言ったのは、ガウンではなく白衣を纏った――紛れもない、魔王だった。


 

 


お読み下さり、ありがとうございました!

明日は、投稿をお休みしますm(__)m

ブクマ登録、評価頂き、大変感謝しております!

これからも、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ