表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/114

25.帰りましょう

「どうやら、勇者が召喚されたようですね」


「……えっ!? もう?」


 魔王から、魔力を流してもらう治療的なものを終えると、ノアがやって来てそう報告した。

 

 あの恋人繋ぎは未だに慣れない。早くこれを終わらせたくて、もっと効率の良い方法はないのかと魔王に尋ねてみた。


 すると「……ふむ、効率か」と呟くが、眉一つ動かさない。


 暫く無表情のままこちらを眺め、お互いの肌の密着部を増やせば早いと教えてくれた。

 そして……そのまま、スルッとガウンを脱ぎ出したのだ。


 ええ、全力で止めたわよ。


 恥ずかしいから、早く終わらせたかっただけなのに、それじゃあ恥ずかしいどころの騒ぎではない。

 寧ろ、即死だわ。で、仕方なくいつもの恋人繋ぎ。


 あれ?


「ねえ、ノアは何で制服なの?」


 もう、魔王が復活したのだから、ノア達が人間に成りすます必要は無いと思っていた。


「それは、学園に行っているからですよ」


 何を当たり前な事を――とノアの視線が言っている。


 ……ですよね。


「魔王が復活したのですから、色々な面倒事が起こる筈です。ついでに少々……ベアトリーチェ嬢のお父上、宰相閣下の手伝いをしています。もともと、約束をしていましたのでね」


 宰相からの仕事がついでって……。

 そりゃそうだわ、ノアは言うなれば魔王の右腕、魔界の宰相なのだから。ノアはこの機会に、人間界の動向を見ているのかもしれない。


「それで、キーランとロランは?」


 最近、ロランとキーランも見かけない時間帯が結構ある。


「勿論、学園に戻っています。そうですね……そろそろ面白い情報を持って帰ってくる頃でしょう」


 はて、面白い情報とは?


 丁度その時、部屋の一部の空間が歪むとキーランとロランが戻って来た。


「たっだいまぁー!」と、明るいキーラン。

「只今戻りました」と、きちんと挨拶をするロラン。


 魔王は、そんな真逆の二人に頷いただけだ。

 基本、魔王はあまり喋らない。かと言って威圧的ではなく、機嫌や感情を表に出さないだけなのだ。一度見せた笑顔は、幻だったのか。


 それとも……ただの根暗?

 

「それで、どうでしたか?」と、ノアは訊いた。


「うんっ、なんか学園に留学生が来るらしいよ」


 早速、テーブルのお菓子を摘みながらキーランは話し出す。


「留学生? それって、もしかして……」


 小説では、魔術師団の塔の最上階。そこで、魔王の復活を感知した者が、聖女とエルネストを呼び出し勇者を召喚したとあった。


「多分、召喚された勇者でしょうね。大方、聖女の護衛と、此方の世界の知識を教え込もうとの魂胆でしょう。それには、王立学園は最適な場所です。剣の扱いなどを身につけさせるのも、目的の一つでしょうが。勇者が、どこの世界の何者か分かりませんからね」

 

「あと、変な噂あったよ。ね、ロラン」


「ああ、ベアトリーチェ嬢の乗った馬車が盗賊に襲われたとな。だが、それはごく一部の者だけの話だ。あのダンスパーティーの場に居た者であれば、俺とキーランが領地に送ったと知っている。我々が戻っている時点で有り得ないと分かるだろう」


「その通りです。全く、面白い事ですね。領地に送り届けた後に襲われたか、ロラン達の存在自体を知らなかったかのどちらかでしょう」


 いや、領地行ってないし。そもそも、襲われてないよね。


「さて、ジゼル。馬車の方はどうなってますか?」


 ノアは、ジゼルに向き直ると状況を尋ねた。


「それはもう完璧に。公爵家の紋章も再現され、見事に仕上がっておりました。魔界には、素晴らしい技術を持った方々がいらっしゃるのですね」


「では、ヒナ。そろそろ、公爵邸へ戻る支度をお願いします。転移ではなく、勿論……その馬車で」


 満足そうな笑みを浮かべた、ジゼルとノア。

 あ、二人して何か悪い顔をしている。


 ふと、視線を感じた。

 今まで黙って見ていた魔王が、徐に立ち上がると、ノアの側に行き何かを耳打ちする。ノアの眉が上がると、そのまま眉間に皺を寄せ……目を閉じ大きな溜息を吐いた。


 魔王は何を言ったのだろうか?



 ◇◇◇◇◇

 


「お父様、お母様、ただいま帰りました」


 馬車から降りると、迎えに出てくれた両親へ挨拶をする。


「お帰り、ベアトリーチェ。ノアから聞いていたが、無事で何よりだ」


 例の噂について言っているのだろう。おや、お父様ったら、いつの間にかノアを名前で呼んでいる。


「はい、楽しい旅行でした。行かせていただき、お父様にはとても感謝しております。ジゼル、みんなにお土産を」


 旅行の証拠にと、キーランに転移させてもらい、お土産を買ってきてある。ジゼルは、馬車から荷物をもって来ると、使用人にも配って回った。


 旅支度を解き、珍しいお茶とお菓子で久しぶりの親子のティータイム。

 話に花が咲いた頃。突然、邸が騒がしくなった。

 バタバタと足音が聞こえると、勢いよく扉が開いた。


「父上っ!! どういうことですかっ! 姉上が、盗賊に襲われたって!!」

 

 声を荒げて、開口一番にそう言ったオリヴィエがそこに居た。そして、正面の私と目が合った。

 

「……っんな!! あ、姉上っ!?」


「あら、オリヴィエ……ただいま」


 あー、オリヴィエは学園だったし、みんな教えてあげていなかったのね。

 相当急いで来たのか、急な脱力で膝から崩れる弟に、申し訳なさでいっぱいになった。



 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ