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18.いよいよ本番

 結局、犯人は見つけられないまま月日は流れていった。 

 ……そもそも、犯人なんて存在していたのかしら?



 進級し二年生になると、オリヴィエも入学して来た。

 

 アリスとエルネストは、相変わらずだ。

 コソコソと逢瀬を重ねる位ならまだしも、最近では人前でもイチャイチャしている。

 

 前世の記憶がある私でも、引くわぁ……。


 ただ、そんな中でも水面下では色々と動きがあった。エルネストはアリスと一緒になるために、着々と婚約破棄の準備を進めている。 

 当然、こちらも証拠を集め、お父様とも連携をとった。本当なら、人前での断罪は避けたいが、残念王子はそこが自分達の見せ場だと思っているらしい。

 そう、ノアが止めても無理だった。

 

 ん? ノアに無理なことなんて無さそうだけど。


 ちょっと引っかかるが、考える事に長けている彼だ。任せておいた方が良いだろう。

 これまでも、何度も助けられている。あの二人に悟られず、学園内で多くの信頼を得ることが出来た。だからこそ、私は悪役令嬢とならずに済んでいるのだ。


 私のせいで、オリヴィエが弟だからと肩身が狭い思いをしたら大変だもの。


 反対に、エルネストとアリスは学園で浮いた存在になっている。

 けれど、皆に聖女だと知れ渡ったアリスと、この国の第二王子だ。教師も含め、誰も何も言えない。

 

 ――そして、運命の学園祭の準備に入った。

 


 ◇◇◇◇◇



「お嬢様には、やはりそのお色がお似合いです!」


 ジゼルは自分のことのように喜び、キラキラと瞳を輝かせてドレス姿の私を見た。


「ねぇ……。やっぱり真っ赤なドレスって、強烈過ぎではないかしら?」

 

 何だろう、ザ!悪役令嬢って感じがする。お父様から届いたドレスなので、着ないわけにはいかないけれど。

 

「そんな事ございませんっ。とても、お美しいです! ――いかがでしょう、皆様っ!」


 ジゼルは両開きの扉を開くと、魔族三人組に声を掛けた。


 ここは、いつもの魔王城。


 キーランが、私のドレス姿を見たがったことから始まった、お披露目会。

 ダンスパーティーの会場では、とても楽しめる雰囲気では無いだろうと、ジゼルが気を利かせてくれたのだ。城の一室を借り、当日と同じ支度をした。髪はもちろん、見事なまでに美しい花の様に結い上がっている。


「ヒナぁ〜! めちゃくちゃ似合ってて、可愛いよぉ!」


 真っ先にキーランが飛んで来ると、興奮して頬っぺを赤くしながらそう言った。高揚感が凄い。


「ああ!……き、綺麗だっ」と、言った後に恥ずかしそうにするロラン。


 自分で言って、照れないでほしい。こっちが恥ずかしくなる。うん、頑張って褒めてくれたの伝わるよ。硬派だもんね。


「ええ、とても良いです。舞台に映えますよ」


 いや……ノアの言葉は、絶対に意味が違うだろう。

 ははは。


「ノアも、キーランも、ロランも素敵よ」


 三人も、当日の正装でピシッと決めている。

 くっ! 眩しい……。男前過ぎて直視できないわ。きっと、会場では失神者が続出じゃないかしら?


「今日くらい、ジゼルもドレスを着たらよかったのに」


 いつもの侍女服のジゼルは、頑なに断ったのだ。


「いいえっ! 私は裏方に徹することが幸せなのです。ドレスより、新しい剣の方が魅力的です」

 

 剣て……ちょっとロラン、何故そこで頷くの? 

 あー、この前の休みに、いそいそと買い物に行っていたわね。ドレスじゃなく、剣を購入したのか。

 

「それにしても、私はやはり殿下が許せませんっ」


 ジゼルは、私が皆の前で傷付けられるのが、どうしても納得できないらしい。


「心配ありませんよ、ジゼル。これで、ヒナが……いいえ、ベアトリーチェ・ドルレアン公爵令嬢が、第二王子の婚約者という立場から、解放されるのですから。誰も、ベアトリーチェ嬢を蔑むことはありません。寧ろ、ホッとされるでしょうね、皆さん」


「そそ、ベアトリーチェ嬢は学園で人気凄いからさっ」


「王子と聖女の、その……何だ、アレは見るに耐えない。皆、ベアトリーチェ嬢に同情していたからな」


 そうなのだ。有り難いことに、同級生達は私にとても優しい。


 ――すると。

 えっ!?  何処からともなく、音楽が聞こえた。


「さあ、せっかくだから踊ろうよ!」

 

 城にある楽器をキーランが魔法で奏でると、そこはまるでダンスパーティー会場そのものと化した。

 魔王城に楽器とは、何だか不思議な感じだ。魔族達もダンスパーティーとかするのかしら?


 楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行く。


 これから会うであろう魔王に、また少し興味が湧いた。



 ◇◇◇◇◇



 ――いよいよ、当日。

 

 本来なら、婚約者であるエルネストにエスコートされ入場するものだが、私は一人で会場へと向かう。

 都合が悪く迎えに行けないと、手紙が届いたのだ。


 分かっていたが、都合が悪いって言い訳はアホっぽいなぁ。もっと洗練された言い回しは無かったのか。

 

 まあ、いいわ。全てのタイミングは、ノアから指示されたシナリオ通り。


 会場へ着くと、ふうぅっ……と息を吐き、前を見据える。


 よし、行くわよっ!

 

 ダンスホールへ踏み出すと、一斉に私に向けて視線が注がれた。正面には、エルネストとアリスが待ち受けている。


 背筋を伸ばし、ゆっくりと優雅に前へと進んだ。

 

 

 

 

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