7,初日
本日二回目の投稿です。
いつ甘くなるんだろうか
王立シェーナ魔法学校はシェーナ王国が建国された時からあると言われる、超名門の学校だ。魔法に長けたものであれば誰でも入学が可能、と謳ってはいるが実際は貴族、王室、他国の身分の高いものしか入れない、そんな学校。
普段は外部から侵入できないように魔法で巧妙に隠されている。入学式前の数日、学園祭等の行事、卒業式後の数日のみ自由に誰でも出入り出来るそうだ。
『幻の白亜宮殿』とも言われる建物はとても美しい外装をしているらしい。
私はトイレを我慢していたせいでトイレのことしか考えていなかったのでちゃんと見ていなかったがアンナが「本当に美しかったですよ……」と頬を赤らめて言っていたのでそうなのだろう。
因みに貴族であれば誰でも入学できるというわけではない。
貴族には入学試験なるものが課せられ、ある一定点以上を取らなければ入学できないそうだ。シェーナ王族も、レイナハルン皇族も入学試験を受けるそうだが、貴族より採点を甘くしているとか。忖度は良くないと思う。
オルナー、フューネは主席合格を果たしたらしい。私はある程度手を抜け、と言われていたし、あまり行きたいとも思っていなかったのでちゃんと勉強せず受けた。
入学試験は自分の家で受けることができる。フューネ魔法学校の教師がやって来て不正をしていないか監督をするのが一般的だが、私は「あのお二人の妹様であれば不正などなさらないでしょう」と言われ、監督なしだった。良いのか。
不合格の自信を持って、入学通達の手紙を持って来てくれた魔法学校のフクロウを笑顔で迎え、手紙を開いた。そこには『主席合格』の文字が踊っていた。
その文字を見て絶叫し、アンナが手にホウキを持って駆けつけて来た。
「お嬢様、朝ですよー、今日から授業ですよー起きてくださーい」
アンナのモーニングコールで目が覚める。
「やっていけるかしら」
兄達に散々関わるな、と言われていた王太子、皇太子と顔を合わせ、王太子の護衛騎士を危うく殺すところだった。
そして、王太子は私の素性を探っているという。
「人生詰んだ、ってこういう事ね……」
「いや、多分それは寵愛受ける系ですー、お嬢様可愛いし」
「きつい冗談はやめて、アンナ。有り得ないから」
「謙遜しないで下さいって、これ絶対どっかで教育間違えてます、旦那様……」
アンナがよいしょ、と私の服を脱がせてくる。下着を身に纏った私をじー、と見て何故か「眼福」と呟いて雑に制服を被せてきた。
「いやあ、お嬢様って女の武器が大きいんですね」
「嘘おっしゃい。それに、大きいと戦いにくいから小さい方が良いわ」
「それ、他の御令嬢の前で言わないようにしてくださいね、確実に殺されます」
据わった目で言われ、ガクガクと頷くことしか出来なかった。
シェーナ魔法学校の制服だが、そもそも制服でないといけないわけではない。自分のファッションセンスに自信があれば自分の着たい服を着れば良い。
だが、あまりコーディネートが良くないと他の令嬢に叩かれて居づらくなり、退学するなんてこともあるそうだ。
女子は肌触りの良い、黒のワンピースに茶色の丈の長いカーディガンを腰の辺りで革製の紐で括ったシンプルなものだ。お洒落をしたい盛りの御令嬢は文句たらたららしいが、私は動くやすくて良いと思っている。
男子は黒いズボンに真っ白なシャツ、そして、 裾の長いトレンチコート。
私はスカートのような足がスースーするものは好まないので男子服を選択したかった。
「皆さんこんにちは」
しかし、喧しい。
講堂に集まるように、と昨日言われていた新入生達は好き勝手に友人だったり取り巻きだったりと話している。もちろん友人のいない私は一人だ。
私がきてからずっとそんな調子だったが、集合時間五分前にやって来た人物を見て、ふっと口を噤んだ。
「オルナー・ニューウェーストです。本日案内役を務めさせて頂きます」
近くの御令嬢が兄の色気に当てられてぶっ倒れた。
「一番見たい場所はどこかというアンケートをとった結果、格闘場が多かったのでそちらを案内いたしますね」
恐らく令嬢は兄上の所属する格闘クラブの主な活動場であるから、令息はなんかかっこいいからという理由で格闘場を選んだのであろう。
かくいう私も格闘場を選んだのだが。
「実戦の体験も出来ますので着替えたい方は着替えてきてくださいね」
その連絡の為に早く来たのか。
私はそう言われた瞬間に自室へ光の速さで戻った。
御丁寧にも私の兄達は服を用意しており。
「何故こうなった」
何故か令嬢に囲まれることになった。