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騎士になりたい令嬢の行動は無自覚です   作者: 蒼凰
1章・シェーナ王国編
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オルテーガ帝国ロジェの手記『第3章・戦の足音、不審な影』

『女は強い男に惚れる』


市井で流行っている恋愛小説を宰相に取り寄せて貰い、執務を終えた夜に読み耽る。何度も俺の部屋に女達が押し入ってきたが最近は反応がないからか、何もしてこない。

押してダメなら引いてみろ、の精神でやっていることに気付いていないのですか、と宰相はゲンナリとした顔で言ってきた。陛下が相手にしないから私のところにとばっちりが来るんですよ、と。それを何とかしての宰相だよ、といえば困った様に笑った。


「強い方が惚れるのか?」


身近な信頼できる歳の近い男は残念なことに宰相しかいなかったので聞いてみた。


「何故男の私に聞くんですか。聞くなら陛下の元に押しかけてくる、母君選別淑女達に問えば良いのです」


「絶対に勘違いをしてくるし、面倒だから嫌だ」


デマを流してくるだろう。寝所を共にしてくれる、情熱的な人が人気です、ですからわたくしと練習をして陛下本命の方を打ち落としましょうとか何とか。

俺の愛した彼女はその様な、身体の関係を持ちたいと願う相手ではないだろう。いや、俺のほうにその気がないわけではないがきっと彼女にその様なことをすれば幻滅され、二度と顔を合わしてくれない確信がある。そもそも、彼女と恋人関係になっていない時点でお察しであるとは思うが彼女にとって俺は些細な人間だ。まずは『特別な人間』という地位をゲットしなければーー。もしかすれば、俺は人間と認識されていないかもしれない。


「人間になるにはどうすれば良いのだろうか」


本気で問えば宰相が残念そうな顔で俺を見やった。


「そんなことよりも、陛下。あの件は進められるのですか?」


主人の恋愛事情はそんなこと、とばっさり切り捨てられた。冷酷な臣下である。


「勿論だ。……力を持ち過ぎた自治区を見過ごすわけにはいかない。特にニューウェースト。先鋭の剣士がいる上、周辺自治区をまとめ上げる手腕は見事だ。故に、危険因子は取り除かねばならない。分かっているだろう?」


「分かってはおりますが、危険因子といっても、考えようによってはこちらと同盟を結ばせ、協力してーー」


「裏切りがないとは言い切れない。なら、早いうちに直轄地にするべき。騎士の選別は任せる」


一方的に会話を切り、宰相を執務室から追い立てた。不満げな顔をしていたが「陛下の御心のままに」と言って去っていった。


ーーー


陛下は何かに焦っておられる。誰かの姿を追い求め、国をより良くしようと奮闘されている。陛下の冷酷な判断は、余計な火種を後世に残さないという面から見れば良いと言えるだろう。しかし、無駄な殺生を行い、無駄な恨みを買うという面から見れば悪いとも言える。私にはどうすれば良いのか分からない。きっと勉強不足なのだ。

フェルリーナ・ニューウェースト。

人外の美貌を持つ、類稀な才能を持ち合わせた剣士。誰にも殺せない孤高の騎士。

最近ニューウェーストとその近郊自治区を往復していると連絡が入った。きっとこれを陛下に伝えればニューウェーストにとんでいき、フェルリーナ・ニューウェーストの手足を鎖で繋いででも城に連れ帰るだろう。

不本意なことではあるし、これは国を裏切る行為でもある。本当はしたくないのだが、私がしなければ。

そう思って書をしたためていたのだが。


「そんな危険を冒さずとも、その情報は既に握っている。宰相殿」


フェルリーナ・ニューウェーストが何もない空間から突如現れ、手紙を火で燃やした。


「フ……」


「おおっと。声は出さないでくれ、あと、私は女を捨て無事騎士になったのだ。そこのところを頼む」


妖艶に笑うフェルリーナ・ニューウェーストは私の口元を優しく塞いで言った。



『フェルリーナ・ニューウェーストの逸話より抜粋』


ーーー


「ザビレイ殿に戦準備を進める様に書簡を出しました」


宰相がそう言ってきたのは、母が痺れを切らして『早く跡継ぎを作れ』と俺の部屋まで押しかけてきた翌日のことだ。あの女が良いだのこの女が良いだの夜通し話しかけられて寝不足の中報告されたので若干トゲのある口調になってしまった。


「ああ、そうか」


「もしかして、不機嫌ですか?」


「寝不足だ」


はあ、とため息をつけば宰相は小声で「もう、フェルリーナ嬢のことは諦めれば良いのに」と呟くのが聞こえた。


「残念だが、俺が彼女を諦めることなんてない」


きっ、と睨みながら言えば宰相は苦笑をこぼした。


「そうですか。ところで、ザビレイ殿から陛下は戦場に赴くのか、と質問が来ていますが、どうなさるつもりで?」


「勿論。俺も戦う。言い出した俺が戦場に行かなくてはおかしいだろう?」


「では、現地にも行かれるのですか?」


「ああ」


俺の確認待ちの書類にきちんと目を通しながら判子を押していく。『最近国境沿いで不審な人影を見る。こちらに危害は加えてこないが不安なので調査してほしい』という依頼書で手を止めた。


「最近体を動かしていない。机に座っているのは退屈だし。この件を調べてみるか」


「陛下がする様なことではないのですが、止めても行かれるのでしょう。行く際にはきちんと仰ってくださいね。公務のスケジュールを組まなくてはいけないので」


「ああ」


〈オルテーガ帝国ロジェ・オルテーガ13歳、ニューウェースト自治区フェルリーナ・ニューウェースト14歳 (失踪)〉

ロジェ・オルテーガ及びフェルリーナ・ニューウェーストはチートということで。

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