表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士になりたい令嬢の行動は無自覚です   作者: 蒼凰
1章・シェーナ王国編
2/29

2,入学式前日①

入学式前日。生徒会長補佐として忙しいであろう兄達が私の部屋にやってきた。


「久しぶりだな。フューネ。全然会えなくて寂しかったんだぞ!」


アンナが来訪者を伝えた瞬間にドアがパッコーン、という音を立てて取れた。

ん?

取れた、だと……?


「あ、やっちゃった。まあ、良いか、今年に入って未だ十回目だし」


長男のリュートが朗らかに笑ってドアの残骸を壁に立て掛けた。


「十回はやりすぎです」


窓のお掃除をしていた私は突然の事で暫く動けなかった。ようやく口が動く様になってそういうと、次男のオルナーが苦笑混じりに言う。


「軽く百回は壊していますよ、リュート兄さん」



私の二人の兄、リュートとオルナーはハイスペック、ほぼ欠点なしの好青年だ。

微笑めば周りの女子を恋に落とし、歩けば金魚の糞の様に女子を侍らせ、走ればタオルを差し出され、着替えれば脱ぎ捨てた服が取られている、という、妹から見れば『私の置かれている状況と違い過ぎて怖い』の一言にすぎる事態が発生していた。

銀髪碧眼で、伸ばした髪を下の方でリュートは赤、オルナーは青のリボンで結んでいる。剣の腕前は流石、剣術の名門、ニューウェーストの息子だ、と褒めちぎられるほど。

そう、兄達はチート過ぎるのだ。平凡な私と違い、多くを持っている。

しかし、リュートは力加減ができないのでよく物を壊す。私の知っているリュートは鉄製のパイプを折ってしまう程度の力しか持っていなかったのだけれど、どうやら魔法のかかった、常人では開けられない扉を開けてしまうほどになった様だ。



「ああ、そうだ。明日、入学式だろう? フューネに似合うドレスを用意してあるから、ちょっと着てみてくれないか?」


そのままにしないでください、とアンナが切れたのでリュートは仕方なくドアを元の位置にはめた。

え?

はめた?


「いちいち突っ込んでいちゃダメだよ。流さなきゃやっていられないから」


オルナーが上から魔法を上書きしながら淡々と言った。


「うん」


オルナーの言葉に返事をしたのだが、リュートは自分の言葉に返事をしたのだと思い、そうかそうか、と笑うと、私に似合わない、ターコイズブルーのドレスを何処からか出した。

何処から出したのかは気にしないことにする。


「安心しろ、これで汗は拭いていないから。あ、鼻水も拭いていないから」


口を開かなければ好青年、開くとずれまくっている兄はぐいぐいとドレスを押し付けるとオルナーの首根っこを掴んで部屋の外に出て行った。


「着替え終わったくらいに部屋に入るからなー」


ノックして下さい、とアンナがため息をついた。


「変人度に磨きがかかっていましたね、リュート様は」


「そうね」


アンナと私はお互いに吹き出し、ターコイズブルーのドレスをマジマジと見るのだった。



アンナに着せてもらい、その場をくるりと回るとアンナは「んまあ」と声を出した。


「ねえお嬢様」


アンナは伊達眼鏡とカツラをつけようとした私の手をやんわりと包んで耳元で呟いた。


「その格好で舞踏会の会場をご覧になって来たらいかがですか」


「何故?」


こんな、素顔を人様に見せてはいけない少女に、なんて酷な事を言うのかしら。


「何でもです! さあさあ、行って! ご友人が出来るかもしれませんよ」


友人。


「その話、乗ったわ!」


そうして、辺境の令嬢は三階の自室の窓から飛び降り、舞踏会を行う場所へと向かったのだった。


そこで、一人の美青年にロックオンされるとも知らずに……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ