【ヒナからの組閣報告】
「新生トイフェルラントで発足した、内閣閣僚達の簡単なプロフィールです。議会議員全員のプロフィールに先立って、こちらを優先的に纏めました。目通しをお願いします」
◇◆◇◆
・《内閣府》
内閣総理大臣 コーエン・フォン・ヒューレント
豚の耳と鼻を持つ豚人族の中年男性で、甘いマスクと引き締まった体躯のイケメン細マッチョ。トイフェリン出身の下級貴族で、ヒューレント男爵家の現当主。趣味であったご当地料理の食べ歩きでトイフェリンの邸を離れていたため、家族と使用人のほぼ全員が生き残った幸運な人物。
性格はとても陽気で、貴族でありながら、自ら厨房にも立つ大の料理好き。アッカーバーデンに自家用農園を持っており、使用人と一緒になって畑仕事に精を出す働き者。妻のダグナとの間に、一二人の子供がいる子沢山。ちなみに、愛人や非嫡出子は存在しない。
食料の増産と流通のさらなる拡大を公約にして当選を果たし、極めて良心的であった貴族のヒューレント男爵家の出であったことから、初代内閣総理大臣の大役を任された。
・《トイフェルラント議会》
議会議長 レニア・エーデルワイス
ウサギの耳と尻尾を持つ兎人族白兎種の女性で、自称永遠の二五歳を公言する年齢不詳の美魔女。旅芸人一座エーデルワイスの座長を務めており、公演時の役割りがハイレッグ衣装でのチケットのもぎりという、狙い澄ましたかのような呼び込み役。年齢不詳の色化で老若男女問わずに相手を魅了する、天性の人たらし。
エーデルワイスは古参の一座で、世襲ではなく実力による技術継承で存続してきたエンターテインメント集団であり、後進の育成に積極的な業界のリーディングカンパニーである。また、エーデルワイスを名乗れるのは一座の看板芸人とその引退者だけであり、その名は一流の証として広く認知されている。
レニアは元々耳の良い種族の中でも聴力に優れており、同時に複数の人物の発言を聞き分ける特技を持つ。その特技を買われ、議会議長の座に就いた。
・《国務院》
国務大臣 ゲアハード
狼人族の近縁種である犬人族の男性で、体躯の大きなグレートデーンのようなタレ気味の風貌をしている。ベルクドルフの鉱山を新たに開発する仕事に従事しており、その仕事柄、作業手順などの決まり事を忠実に実践して、安全を第一に考えている慎重な人物。
実家が零細の行商人であったため、幼少の頃から国内を見て回った経験を持つ。横暴だった貴族が一掃されて不公正な社会が是正される機会が巡ってきたため、議員に立候補して国務大臣の役職を射止めた。
・《財務院》
財務大臣 カスパー
背中に軟質の甲羅を持ち、頭と手足を胴体へ収納できる亀人族鼈人種の男性で、元信用ギルド本部の金庫番だった人物。お金を数えて正確に把握することが大好きという、一風変わった金の亡者。それ以外は至って普通で、大金に囲まれて仕事ができれば野心など不用という、史上まれにみる人畜無害な守銭奴モドキ。
金持ち貴族の金庫番になることを夢見ていたものの、コネクションが無く諦めていた。国家予算という大金と関われる仕事がしたいため、最初から財務関係の要職を目指して議員となっている無自覚な野心家。
・《法務院》
法務大臣 マンフリード・フォン・クヴェレ
虎人族の白変種の男性で、ウルカがクレソンを発見したトイフェルラント西北西の山間部を所領とする、辺境の名ばかり貧乏子爵家の四男。ウルカの一撃で被害を受けた所領の復興を陣頭に立って指揮していたところをリオに目撃され、ヘッドハンティングされる形でノイエ・トイフェリンでの暫定政府の仕事に就いていた。
当代のクヴェレ子爵家で唯一の白い虎で、古い言い伝えで白変は一族の飛躍の時期に生まれるとされている。だが当の本人は言い伝えなど意に介さず、幼少期から野山を駆け回って強靭な肉体を持つに至っている。
家族の勧めで選挙に立候補してみたところ、気が付けば法務大臣の要職に就いてしまった勢いのある人物。理屈よりも心情を優先する傾向が見られるが、実家の名を穢すような行為を忌避しているため、常日頃から己の行動を律してきた芯の強い好漢。
・《国防院》
国防大臣 マチルダ・ガーラント
赤い鱗を持つ蜥人族亜種の赤蜴族の女性で、泣く子も黙る元信用ギルド実働部隊オルカーン六番隊ガーラントの隊長。特定の管轄を持たない遊撃隊として、数々の実働案件の処理に関わってきた叩き上げの武闘派。
龍人化したリオから翼を取って色を変えたような風体から、赤竜や赤い暴風竜の二つ名で呼ばれることもある元独立傭兵で、肉体的にピークを過ぎている現在でも、日々のトレーニングを欠かさない常在戦場の体現者。
豊富な現場経験と戦闘指揮の能力を買われてノイエ・トイフェリンに移住し、暫定の国防責任者から正規の大臣へと横滑りした実力者。苛烈な一面を周囲に見せているが、本性は婚期を逃した子供好きのいかず小母。
・《産業院》
産業大臣 スタンリー
牛人族長角種の大柄の男性で、ブルドーザーのようなパワフルな筋肉ムキムキの逆三角マッチョ。青年時代に自分探しを拗らせ、トイフェルラント中で様々な仕事を経験してきた無敵の転職サバイバー。
急速発展するノイエ・トイフェリンに仕事を求めて流れ着き、これまでのトイフェルラントには無かった活気に惚れ込んで定住。業種を問わない助っ人家業を経て、産業大臣の大役を任されたパワフルな漢。
・《建設院》
建設大臣 バーレット
ガテン系を絵に書いたような立派な体躯の熊人族の男性で、魔導鉄道事業に参加しているバーニーの従弟。一族を代表してバーニーの様子をノイエ・トイフェリンまで確認しに来たところ、何の因果かバーニーの上司に収まってしまった機運の持ち主。
役所仕事の待遇が良かったためそのまま建設院で働き、魔導鉄道の環状線化計画を公約に議員に当選を果たした。
・《魔法院》
魔法大臣 ウルリカ
狼人族亜種の森狼族の妙齢の女性で、タイグレスに夫を奪われた未亡人。夫の遺品を横領せず返却してくれたリオへの恩返しになればと選挙に出馬して、見事に当選を果たした報恩の女。
魔法使と魔導士のランクがどちらもシングルBという優秀な二刀流の使い手で、恭一郎の開発した購入可能な魔導具を多く所持する新しい物好き。
魔導鉄道事業に参加しているブルーナとは水面下で繋がっており、独自の命令を出してブルーナに魔導具の研究をさせている、筋金入りの魔導具マニア。
・《厚生院》
厚生大臣 アレッサ
昆虫族の中の蟷螂種の女性で、長身細身で長い触角と鎌状の腕を持つ、とても綺麗好きな肉食種。個体数の少ない昆虫族の中でも肉食種は希少で、普段は狩猟用の鎌状の腕は身体に沿わせて衣服の中に収納し、三指状の腕と歩行用の足のみで生活している。翅を持っているが飛行は苦手で、基本的に陸上を歩行している。
完全な肉食であるため、食生活を支えるために畜産業に従事。自慢の鎌状の腕に家畜の世話用ブラシを取り付け、家畜の清潔を保ちつつ鎌の扱いが訛らないように鍛えていた。
自慢の鎌の清掃に余念がなく、暇さえあればナルシストを疑われるまでに念入りな手入れを行っている。その噂を聞いたアイリス・カッツェンバイサーが、身体の清潔を保つことの大切さの事例として取り上げたところ、巡り巡って厚生大臣にまでなってしまった。
ちなみに、旦那を食べたという噂が流れているが、選挙応援で隣に立って仲睦まじくしている姿が確認できたため、完全な流言飛語のデマであることが証明されている。ただし、スキンシップに甘噛みが含まれている点が、要観察の対象と注意喚起されている。
・《学務院》
学務大臣 レオポルド
レーヴェ家とは縁もゆかりも無い獅子族白変種の男性で、トイフェリンで貴族子弟相手の私塾を開いていた教育者。春の課外授業として生徒達と共にアッカーバーデンへと移動していたことで、九死に一生を得た。
遠出のためにトイフェリン市民の若者を扈従として雇い入れて随行させていたため、結果的に多くの若者を危機から救うことになった小さな英雄。
常々知識を独占する貴族の行いに不満を持っていたため、恭一郎の提唱する全国民に対する平等な基礎教育の理念に賛同し、保護下にあった若者達と共にノイエ・トイフェリンへを目指した。
生き残った元生徒や有志達によって選挙戦に勝利を収め、学務大臣の大役を掴み取った立身出世の人。
◇◆◇◆
「国内安定の第一歩、その出発点に立つことができました。まだしばらくは我々の介添えが必要となりますが、当初の計画通り段階的な民主化を行っていきましょう」




