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【トイフェルラント魔導鉄道 機関車走行試験編】

 ――トイフェルラント生活一五五一日目。




 恭一郎が設計した、機関車の一号機が完成した。製造はバーニーとブルーナを中心としたプロジェクトチームのメンバーによって行われ、オメガ残党軍との最終決着に掛かり切りだった恭一郎は、ほとんど手を付けていなかった。

 さすがにプロジェクトリーダーがこのまま何もしないとなると、周りへの示しが付かなくなってしまう。そのため、この日は単身エアストEXでノイエ・トイフェリンへと向かい、計画の進行状況の確認を行った。

 魔導車工場の一角で製造された機関車は、日本で稼働している電気機関車をイメージして設計されている。箱型の機関車の先頭に運転席があり、その後ろに機関車用大型魔導エンジン、さらにその後方に魔力電池とM‐コンバーターが配されている。

 この機関車は、積載重量二〇トンの貨車を一〇両連結した状態で、最高時速五〇キロメートルで走行することのできる能力を備えている。

 魔導車工場の裏手に敷設された試験用線路は、ノイエ・トイフェリンからウルカバレー方面へと延びている。現在は約五〇キロメートルまでの線路が完成しており、機関車の走行試験を行うだけなら十分な距離となっている。

 この試験用路線は最終的に、エアステンブルクを経由して、マイン・トイフェル空港まで延長される予定となっている。まずは単線で開通させ、ゆくゆくは複線化して、物流の動脈となって行くことになるはずだ。

 魔導鉄道本線は、フェアプシュタットから線路が建設され始めている。鉄道建設用の施設が正式に稼働を開始しており、製造された鉄道用資材を人力のトロッコで、線路敷設の現場までピストン輸送を行っている。

 魔導機関車の走行試験が成功した暁には、機関車は一度解体されてからフェアプシュタットまで運ばれ、再度組み立てられてから、線路敷設工事に輸送力を提供することになる。




     ◇◆◇◆




 実に三カ月振りとなるノイエ・トイフェリンに到着した恭一郎は、完成の報を聞いた機関車を自身の目で確かめるべく、魔導車工場へとエアストEXで乗り付けた。

 黄と黒の警戒色の機体が主脚での歩行で近付けば、かなりの振動と足音が響くことになる。そのため周囲の誰もが、恭一郎の存在に素早く気が付いた。

 トイフェルラント国内にもオメガとの最終決着の一報は、暫定政府からの発表という形でもたらされている。その後に起こった紅星軍による襲撃は、近衛軍に被害が出ているとだけ、詳細が伏せられて報道されていた。

 そのため、恭一郎の作業専用機として認知されている派手な色の機体が姿を現せば、誰もが恭一郎の無事の帰還を推測することができた。

 魔導車工場の屋内から、アドルフ、バーニー、ブルーナが姿を現し、恭一郎の現場到着を出迎えた。

「ご無事で何よりです、恭一郎様」

 エアストEXから降りた恭一郎へ、アドルフが代表して挨拶を行った。詳細な情報は暫定政府までしか把握していなかったため、恭一郎の怪我の有無さえ不明なままなのだ。

「心配を掛けて、済まなかった。想定外の相手との戦闘で、かなりの被害を出してしまったから、その後片付けに追われてしまった」

 恭一郎は普段通りに振舞うことで、彼等の不安を払拭ふっしょくするように心掛けた。ヒュッケバイン改が墜ち、恭一郎も重傷を負い、近衛軍初の戦死者が出たことは、彼等を不安にさせてしまうだけなので口にしない。

「今日まで君達に任せっ放しで、悪いことしてしまった。本来ならば今日あたりから現場に復帰して鉄道事業に専念したかったのだが、後片付けがまだ当分終わりそうにない。またしばらくの間、現場を君達に任せることになってしまうから、その前に最低限でも仕事をしておこうと、護衛無しで来た」

 オメガ残党の差し向けた暗殺者に襲われて以降、恭一郎にはハナを筆頭に、必ず護衛役の人員が同行していた。オメガ残党の脅威が去った現在も、トイフェルラントの最重要人物として、恭一郎は護衛対象の立場である。

 本来は恭一郎の隣に侍っている護衛役は、損傷したケーニギンと新型機製造のため、全員が基地の中にいる。カガリビの船体修理も同時に行っているため、人手と工期がいつにも増して逼迫ひっぱくしているからだ。

 マクシミリアンのゲシュペンスト、ヒナ、ミナ、リナのパラーデクライト、稼働可能な人型形態のハバキリ四機まで戦力として投入し、昼夜二交代制で突貫工事を遂行中だ。機体の大破しているハナ達も内部の工事に当たっているため、我に余剰戦力無しの状態だ。

 だからと言って、恭一郎は丸腰で来ている訳ではない。ノイエ・トイフェリンの別の場所で仕事をしているリオと魔法で繋がっている状態であるため、『出ろぉ! マジカルガール!』と叫びながらの指パッチン一つで、臨戦態勢の魔法少女が空間跳躍でご降臨あそばされるのだ。

 見方によっては、婚約者同伴で仕事に来ているに等しいが、普段も心の距離が近い者同士であるため、当人達には通常運転である。

「それで、完成した機関車を見に来たのだが……」

「それでしたら、工場の中で完成したばかりの貨車と、配線の接続確認をしながら連結している最中です。上物のコンテナは、明日の朝に納品される予定です」

 バーニーが魔導車工場の建物を指示し、機関車の現状を報告してくれた。引き込み線が建屋の中に延びている魔導車工場の一角で、試験が着々と行われているようだ。

 恭一郎がいなくとも順調に開発が行なわれていることに、優秀なチームメンバーの働きに感謝を覚える。私情を優先して修羅の道を往く恭一郎は、不在を任せてばかりいる彼等にいずれ何らかの形で報いなければならないだろう。




 魔導車工場の屋内へ足を踏み入れた恭一郎が見た魔導機関車は、白銀に輝く巨体が天井の照明からの明かりを反射して、鈍く輝いていた。全長二〇メートル、全幅三メートル、全高四メートルの箱型の車体だ。

 連結されているコンテナ用の全長一二メートルの台車は、五トン、一〇トン、一五トン、二〇トン用のコンテナを積載できるように、台車本体に複数の固定具が取り付けられている。

 現在は一〇両目の台車の連結確認作業を行っているため、数名の作業員がレールの下の作業用通路で声出し確認を行っていた。

「これまでのトイフェルラントには存在しなかった、電装系のチェックに少々手間取っていますが、『素人でも解る魔導鉄道マニュアル 整備編』を事前に頂いていたおかげで、作業中の事故などは一切起こっていません」

「ミズキに頼んで、CAの整備マニュアルを参考に、魔導鉄道用に発注しておいたマニュアルだ。役に立っていたようで安心したよ」

 作業風景を確認していた恭一郎へ、ミズキの作成したマニュアルを眺めながらアドルフが作業員の仕事内容を確認した。基礎設計から先の製造からは、戦支度に忙しかった恭一郎に代わって、ミズキが多大な支援をしてくれていた。

 並列量子コンピューターを得て、行動範囲と共に機能拡張も実現した現在のミズキは、複数の製造設備を同時に最大稼働させるだけのキャパシティーを得るに至っている。やろうと思えば、製造の一切をミズキだけで完結させることも可能なのだ。

 しかしそれでは、トイフェルラントの雇用や技術力の発展に、まったく寄与することができない。どうしてもアドルフ達トイフェルラント人を、魔導鉄道製造に関わらせなければならなかったのだ。そこで、図解のトイフェルラント語版マニュアルが作られた。という経緯である。

 結果は恭一郎達の期待通りに、トイフェルラント人だけでほとんどの行程をクリアして、機関車とコンテナ貨車の台車が完成している。




 やがて全ての連結作業を終えた機関車が、地球の標準軌道である一・四三五メートル幅のレールの上を進み、試験用線路に移動した。

「走行試験に同行したいのだが、可能だろうか?」

 試験運転を担当するというブルーナに、恭一郎は運転席への同乗を申し出た。機関車はワンマンでも動かせる仕様になっているため、車両の先端部にある運転席の作りは狭い。走行試験であるため、運転手のブルーナ、不測の事態に対応するバーニーの乗務が決まっており、計器観測用の作業員も複数人が運転席に詰めることになっていたからだ。

「本来は是非ともお願いしたい所だったのですが……」

 恭一郎の願いは、ブルーナによって却下されてしまった。どうやら今朝方、仕事を始める前のリオがブルーナ達に会いに来て、恭一郎の走行試験参加を拒否するようにお願いしていたという。

 そこで、魔法で接続中のリオに、恭一郎は詰問することにした。

(もしもし、聞こえますか、リオさん?)

『はいはい、貴方のことが大好きな、リオさんですよ』

 恭一郎の行動を予測していたようなレスポンスタイムで、リオが問い掛けに応えてきた。まあ、浅く繋がっている状態なのだから、当然と言えば当然である。

(魔導列車のテスト走行に同乗することを拒否されたのだが、ブルーナ達に何と言っておいたんだ?)

『安全装置が未整備の列車に、虚弱貧弱な身体の恭一郎さんを乗せられる訳がないでしょう?』

(自分の設計した乗り物になら、過去にも自分自身でテストを行ってきたはずだが?)

『お忘れですか? 今の恭一郎さんはトイフェルラントにとって、内外の重要な案件の中心人物なんです。本来ならば、現場や最前線に出るべきではない立場です?』

(それは理解しているつもりだが、責任者としての立場がある。自分の仕事には、最後まで責任を持ちたい)

『却下です。そもそも恭一郎さんは、入れ込んだ相手に対して、少々過保護が過ぎる嫌いがあります。もう十分にお膳立てしているのですから、あとは彼等に全てを任せて、吉報を待っていればいいんですよ』

(しかし、それでは……)

『しかしも案山子かかしもありません。率先垂範は大変結構ですが、それぞれに合った速度というモノがあります。恭一郎さんの仕事はトイフェルラントを大いに加速させてくれていますが、些か身の丈を越えた速度で発展しています。ここはもう少し加減をして、彼等の速度に合わせた発展速度に任せてみましょう』

 いつの間にやら、統治者としての心得を会得していたリオによって、恭一郎は説得されてしまった。確かに、恭一郎にも思い当たる節がある。トイフェルラントで生きるため、リオの行商などを全面的にバックアップを行なった。その結果、リオのヒュアツィンテ商隊は同業と隔絶した能力を持つ、数世代も時代を先取りした革新的な商隊となっていた。

 恐らくリオは、魔法に特化したことで魔素の枯渇により衰退した先史魔法文明の轍を踏まないように、魔法以外の分野にも発展を望んでいるのだろう。このまま恭一郎が革新的な魔導具を次々と量産してしまうと、特定の分野だけが異様に特化した、歪んだ国内基盤が醸成されてしまう危険性に警戒しているようだ。

 恭一郎が良かれと親切心で行ったことによって、トイフェルラントの発展が逆に阻害されてしまっては、それこそ本末転倒である。リオの言い分もごもっともなため、恭一郎は列車の走行試験への参加を取り下げた。




 とはいえ、時間を作ってノイエ・トイフェリンまで来て、何もしないまま帰るわけにはいかなかった。そこで恭一郎は、エアストEXで走行試験に同行し、並走しながら列車の走行状態を独自にモニタリングした。

 走行試験は十分に満足のゆく結果を出し、また一歩、トイフェルラントの流通が発展する切っ掛けとなった。




 ――トイフェルラント生活一五五五日目。




 この日、ホワイトインレット地中港に、オディリア共和国からの支援物資が到着した。大型輸送艦に満載された支援物資の多くは、カガリビの船体修復用の鋼材だ。

 近衛軍基地の持つ生産施設では、規格の違うカガリビ用の鋼材を生産することが困難であった。そこでシズマにお願いして、不足している樹脂製素材などと共に、纏まった量の鋼材を送ってもらったのだ。

 提供された支援物資は応急修理を終えたケーニギンに移し替えられ、海面下のゲートから地下ドックまで搬入された。そこからはクレーンやハバキリによって、必要な素材がそれぞれの修理個所へと分配された。

 支援物資の中には他にも、オディリア共和国内の有志から集められた様々なカンパが含まれていた。その出所の多くが、恭一郎達がヴェルヌ峡谷基地で保護した人物の縁者からだった。

 突如として攻撃を仕掛けてきた紅星軍を撲滅すべく、恭一郎が再び立ち上がろうとしていることは、オディリア共和国内でも周知の事実となっている。幾度も世界の危機を救った愛機が失われてしまったことも、多くの人々が理解していた。そんな再起を図る恭一郎のために、様々な物品が送られてきたのだ。

 その多くが寄付金という形ではあったが、中にはより実用的な、新素材の試験サンプルと製造データのパッケージ、お蔵入りしていた試作兵器の設計図、機体と共に失われたグライフの独自強化プラン、CAの格闘戦に特化した兵法書、果ては年端もいかない子供からの感謝状と、多様な品々が送られてきた。

 その中でも極め付けだったのが、義勇軍部隊としてアロイジアへの同行を求めてきた者達だ。その筆頭が、シン、カレン、カリム、そして生き返ったアレクサンダーを新たに加えた、ルー家の戦闘部隊であった。今回は軍属としてアスカも同行しているため、事実上のルー家全員集合である。

 恭一郎と初めて顔を合わせることになったアレクサンダーは、息子であるシンよりも幼い童顔をしており、精悍になりつつあるカリムよりも年下に間違われてしまいそうな合法正太郎だった。その血を色濃く受け継いでいるのがアスカのようである。と、いうことは、イスカはかなりズカ寄りのカッコいい美人であったのだろう。

 そんな一家は乗機のメサイアも伴って来ており、シンのアースラは武装を全てレーザー系統から実弾系統に換装。カレンとカリムの機体も、レーザースピアを試作型パーティクルソードに持ち替えている。

 さらにアレクサンダーも以前の乗機を再建途中で持ち込んできており、ルー親子の新旧メサイア四機が一堂に会していた。もしも彼等に侵略の意思があったのならば、トイフェルラントの南側は焼け野原になっていたかもしれないほどの、絶大な戦闘能力を持った援軍だった。

 戦力以上に恭一郎達を驚かせたのは、娘であるアスカの身体を借りたイスカによる、夫アレクサンダーへの激し過ぎるスキンシップだ。凶人と恐れられたイスカにとって、夫のアレクサンダーは世界の全てと言い換えても差し支えない存在であったようだ。

 娘の中身の一部が母親であることは理解しているが、どう見ても父と娘で愛し合っているような背徳的な光景に、これまでのテロリストというイメージから激しく乖離していることで、恭一郎達は背中に薄ら寒いモノを感じた。

 後ほどハリエットから、こっそりと教えてもらったことなのだが、どうもルー夫妻の関係は、物静かなアレクサンダーに情熱的なイスカが心底惚れ込んでしまっていて、色々と物騒なイスカもアレクサンダーの前でだけは、純情可憐な乙女になってしまってるそうだ。

 そんな可愛げのあるイスカを受け入れる度量を持ったアレクサンダーは、再起不能の身体を捨て、身体の不自由だった娘のために己の身体の一部を提供したイスカの行為を、心の底から尊敬して惚れ直しているようだった。

 恋は盲目。とはよく言ったモノで、アレクサンダーには娘の中にいるイスカの姿が瞳に映っているらしく、アスカもアスカで父親のような男性が好きという根っからのファザコンのため、三者の愛情は怪奇かつ背徳的な絡み合いの様相を呈していた。

 ルー夫妻の外聞的な問題にさえ目を瞑っていれば、イスカも暴走することなく、恭一郎達が強力な援軍を得られることになったのは、大変喜ばしいことである。




 ――トイフェルラント生活一五六五日目。




 フェアプシュタットへ分解されて運ばれた機関車が、再度組み立てられた。現地での走行試験を終えた機関車が、鉄道の建設資材を運ぶために線路工事へと投入された。最初は主に橋梁用の資材の運搬で、山間のトンネル同士を結ぶ高架部分をオディリア製の重機を用いて、物凄い勢いで建設を始めている。

 圧倒的な資材の運搬能力を得たことで、年内にベルクドルフ区間の開通が視野に入ってきた。このまま順調に鉄道建設が進めば、来年の夏までには、ノイエ・トイフェリンまでの区間が完成するかもしれない。そうなれば、アッカーバーデンまでの区間も、その翌年までには開通するかもしれない。当面のゴール地点であるグロッケンまでは、高架による長大な橋梁区間となるため、もうしばらくの時間を要することになるだろう。




     ◇◆◇◆




 新たに変形機構を組み込んだ、新型専用機の基本フレーム(骨格)が完成した。

 この世界に存在する機体は基本的に、フレームをモジュールに内蔵している。フレームの露出部分はコネクター周辺部だけであり、そのコネクターも頑強な装甲によって守られている。

 対する新型機の姿は、より太くなって人間の骨格に近い。より正確を期すと、腰から胴に至る背骨にあたる部分が、モージュール内部ではなく背面に露出して、著しくバランスが偏っている。その背骨と腰の部分には、変形用の特殊なコネクターが備わっている。機体には一対二本の主腕の他に、二対四本の大型副腕、もう二対四本の副腕に一本の特殊副腕を備えている。これは可変機構による形状の変化に伴い、機体が最適な形になるように機能が再配置されるための機構だ。

 基本形態であるミドルレッグは、胴体後方下部にコネクターが備わっており、そこに背骨にあたるフレームが接続されている。また、胴体底部と腰部が直接接触しておらず、変形によって胴体が反り上がり、空いた空間に腰部が織り込まれるようになっている。

 頭部と胴体は正面方向に対して流線的な構造となっており、胴体左右の主腕も肩部の装甲を排除し、腕部本体を流線型の装甲で覆うことになる。

 胴体後方の左右には上下に副腕が取り付けられ、上の副腕には小型化された魔力融合ロケットを連結配置した、推進用の主翼が取り付けられる。鳥のように可動できるため、従来機では不可能だった有機的な機動性が発揮できるようになる。

 下の副腕には、盾として扱える可動式の装甲板が保持される。可動範囲が全方向に対応しているため、防御面において死角はない。

 変形状態であるフォーゲルは、腰部の副腕と特殊腕によって、鳥のような飛行形態となる。変形時に織り込まれた腰部は、機体が深くお辞儀をしたような形状となる。そこで腰部の大型フロントスカートが、特殊腕によって胴体正面へと移動して、鳥のくちばし部分となる。

 腰部左右及び背部の大型スカートアーマーも副腕によって可動し、左右のスカートアーマーが腹部を覆う装甲に、背部のスカートアーマーが左右に分かれて側面の装甲となる。それと同時に、脚部は解放された後方へと動き、接地時は膝の関節が鳥のように逆関節型となる。

 飛行形態は頭部が半ばまで胴体に収納され、主腕は後方へと伸ばされる。上部副腕の翼は最大まで展開され、機体の左右に主翼として伸ばされる。

 下部副腕の盾は、腰部後方へ鳥の尾羽のように移動する。また、大気圏突入時には、この尾翼部分が機体の下方へ展開して、対熱シールドとして機能することになる。

 この機体には、失った機体の脳波コントロール用ブラックボックスの代わりとして、デスパイアから取り出された制御中枢が搭載されることになっている。こちらもある意味ブラックボックスであり、直接的な搭乗者の脳波コントロールの代わりに、最適なモーションパターンを学習によって導き出してくれるように再調整されている。

 動力は可能な限り小型化された魔力縮退炉を組み込み、E型およびM型のコンバーターを内蔵して、起動用魔力のみで稼働に必要なエネルギーを無限自己増殖させる、この世界で最小の永久機関となっている。

 破格の出力を得た新型機には、これまで搭載されてきたゲージ粒子技術と多重魔力障壁、イナーシャルキャンセラーの機能に加え、ゲシュペンストから次元潜航装置、デスパイアから空間歪曲装置が移植されることになる。

 装甲材も魔力と物理の複合積層構造であるヘルテン装甲を大盛りにして艤装することになるため、防御力もヒュッケバイン改を凌駕する。

 搭載されるセンサー類は、頭部のみならず、機体の各所に分際して配置される。これは変形することによって形態ごとに死角が変化するためで、それに対応するために増設されたモノだ。それと並行して、通常のFCSレーダーに加え、次元境界レーダーも追加で組み込まれることになっている。

 胴体前方寄りの中央部に配置されたコクピットは、背中合わせ式の複座となっている。ヒュッケバイン改のようにタンデムの方式ではないのは、単純に内部構造の関係によって、タンデムシートが組み込めなかったためである。それにより、パイロットシートと背中合わせのオペレーターシートのみとなっている。

 搭乗可能な人数が減ってしまった代わりに、機体制御の支援用に、並列量子コンピューターによって、ミズキが常駐してくれるようになる。結果的にヒュッケバイン改と同じく実質で最大三名での搭乗となり、サポート能力に下方修正は受けていない。




 新型機の武装に関しては、現在は試作品を製造中である。紅星軍に対して、従来の継続戦闘能力を念頭に置いたプラズマライフルのような熱エネルギーのT属性武装が役に立たない。そこで、実体実弾型の攻撃手段の他に、膨大な魔力を用いた武装も設計中である。

 いずれにしても、圧倒的な機体出力を存分に生かした化け物火力となることは、この時点でも確定路線である。後はそれを形にして、実際に機体に搭載するだけであった。

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