【ミナからの調査報告】
「オディリア共和国の重要人物の、簡単なプロファイル情報を更新しました。確認をお願いします」
◇◆◇◆
・《シズマ・R・ライトハウザー》
オディリア共和国大統領
箱舟級大都市艦弐番艦デージー出身
デージー最大の軍需工廠に勤めていたおり、ハリエット・ラザフォードの両親と出会っている。この時、封印状態のヒュッケバインの保守と点検を担当していた。
後に軍需産業とのパイプを手に政界へと進出し、大統領にまで上り詰めた悪戯好きの中年男である。
大統領に選出されるほどの政治手腕を持っているのだが、本人の悪戯好きの行動が災いして、親しい者ほど採点評価が辛くなってしまう残念な上司の見本。
恋心を寄せていたジュリエットと親友ハワードの間に生まれた、娘のハリエットを二人の死後に後見人として引き取っており、今まで通りの悪戯好きの小父さんとして接していた。現在は書類上では亡くなってしまったハリエットの幸せを考えて、トイフェルラントを訪れないように我慢している。
政治的信条は中道で、ハリエットの味方を自認しているため、漸進派閥にやや傾いている。
・《ハリエット・ラザフォード》
オディリア統合軍上級特佐
箱舟級大都市艦弐番艦デージー出身
オディリア人の救世主である烏丸源一郎の直系の子孫であり、優秀なメサイア操者を数多く輩出してきたラザフォード家最後の生き残りであった。
メサイアへの適性が非常に低く、一旦は医学の道を目指してアイリス・カッツェンバイサーに師事するが、家族全員が戦死したためメサイアに乗ることになる。そのための強化手術を、師であったアイリスが担当している。この関係から、ハリエットはアイリスと同じ漸進派に所属することになっていた。
ハリエットは根っからの烏丸源一郎ファンであり、メサイアも自らの戦闘スタイルにそぐわない蒼凰に乗るという徹底振りを見せる。そんな憧れの人物の息子である恭一郎に対して意識をしていたが、それは異性への感情ではなく親戚や家族に対するモノで、特に兄として接してほしいという感情であったことが後に判明する。
北欧風の非常に美しい見た目と名門一族の出身ということもあり、オディリア共和国ではかなりの有名人だった。そんなある種完璧なイメージをひっくり返すような、非常に努力家でドコか抜けているドジっ子というギャップのため、ハリエットのシンパが大規模かつ影から応援する鋼のネットワークを広げていた。
適性強化の副作用で脳細胞が連鎖崩壊を起こした際、その美貌と血筋を我が物にしようと蠢動したアレス・バストロールの手に落ちるが、恭一郎の暗躍によって救助され、奇跡の代行者として生まれ変わり、恭一郎の義理の妹として生きることになる。
以後は烏丸遥歌と身分を偽り、後退してしまった精神年齢と失われた記憶の回復に努めている。
なお、この事実を知っている人物は、オディリア側ではシズマとアイリスだけである。
・《アイリス・カッツェンバイサー》
オディリア統合軍少佐
箱舟級大都市艦伍番艦マロー出身
軍医として外科とメサイア関連の処置に明るい人物で、後進の指導にも実績のある優秀な女医である。他人に対して物怖じをしない胆力を持ち合わせているのだが、生き急いでいるハリエットに対しては、セクハラまがいのお節介を焼く親戚のおばちゃんと化している。
そのプライベートはあまり知られていないが、結婚歴があり、夫が戦死したことで未亡人となっている。その夫との間には子を生したが、不幸にも夭逝してしまっている。
医者の卵として期待していたハリエットのことを実の娘のように心配しており、破滅へと突き進んでいるような姿を日頃から心配していた。やがて心配が現実のものとなり、ハリエットの遺体として回収された、自ら施術したインプラントを鑑定したことで、医学の限界を感じて引退を考えるようになる。
後に静養のために訪れたトイフェルラントで真実を知り、その返礼としてトイフェルラントの医療環境向上に協力することになる。
アイリスは隠れ猫好きなのだが、オディリア共和国では犬猫などのペットは贅沢品で、種の保存を目的とした動物園などでしか触れ合うことができない。
そのため、ハナのような猫人族の住むトイフェルラントは、アイリスにとって夢のような場所であった。ハリエットの命を救った恭一郎からの協力要請を快諾した背景には、猫人族を始めとしたネコ科の亜人とお近付きになりたいという下心も含まれているようだ。
・《ティファニア》
オディリア統合軍少佐 広報課課長
箱舟級大都市艦肆番艦スターリリー出身
軍の広報課に配属されて以降、堅実に仕事をこなしていたのだが、知り合いのハリエットから推挙されて恭一郎達と関わることになってしまったことで、輝かしい実績と共に健康を損なってしまった不遇な女性。
実務能力は非常に高く、周りからの期待にも十分に応えてきたのだが、それはあくまでも通常業務の範囲内での話である。
恭一郎達のために機材を大量に揃えたり、報道関係者を取り纏めて問題が起こらないように采配したり、特ダネの火消しに走り回ったり、大変な苦労を重ねている。その後、スキャンダルのネタを部下が独占的に掴んできてしまい、激務の中でとうとう仕事中に倒れてしまう。
恭一郎の好意でトイフェルラントでの静養を行い、部下達をトイフェルラントで行われた結婚式の撮影に派遣させるまでに体調が回復している。
ティファニアとしては、このままトイフェルラントに残って仕事がしたいため、魔王のリオに報道機関の設置を提案している。
・《ギルバート》
オディリア統合軍大尉 北部方面第七軍第一師団第七七七特務連隊所属 工兵部隊隊長
箱舟級大都市艦漆番艦ピエニー出身
施設の設営から敵への破壊活動までこなす、工兵部隊の頼れる兄貴である。
部下達の多くを生還させてくれた恭一郎に対して、言葉にはしないが行動で感謝を示す寡黙な人物で、補充兵と共に空港建設に当たった際に、ハナと仲良くなっていた。
不器用なりに頑張る可愛い上司と恩人の頼みを受け、一〇〇棟もの多様な建築モジュールをトイフェルラントに建設した、真の功労者の一人である。
現在はトイフェルラントを離れているが、残してきた部下達と恭一郎達が仲良くしていることに感謝をしている。
ノイエ・トイフェリンとエアステンブルクに贈られた門のデザインは、ギルバートの妻が書いたモノが元になっていることに、まだ誰にも気付かれていない。
・《ドートレス》
オディリア統合軍特佐
箱舟級大都市艦陸番艦カメリア出身
若い頃からメサイアへの適性に恵まれ、幾つもの戦場を経験してきた歴戦の兵である。
若い頃に数回の墜落経験を持ち、その原因が戦況把握の失敗であったことから、武装を一つ潰して高性能レーダーによる戦況把握に努めるようになる。この頃から、被弾はあれど墜落はすることがなくなっている。
死が間近にある日常に身を置くためか、本能的に種の保存に積極的で、数々の異性と浮名を流す爛れた私生活となっていた。
結婚と離婚を繰り返し、一〇人いる子供は元嫁達に連れて行かれてしまってるが、特に娘達が集団で遊びに来るほど慕われている良き父親ではある。
・《アリッサ・ショット / ミヒャエル・ショット / バーソロミュー・ショット》
オディリア統合軍上級特尉 / オディリア共和国中央政府外務次官補兼駐トイフェルラント大使 / 民間人
箱舟級大都市艦参番艦ベルフラワー出身
アリッサとミヒャエルは小さい頃からの馴染で、二人共おっとりしている性格から常に一緒に行動する仲だった。後にメサイアへの適性を示したアリッサが軍へと入隊したことで、しばらくの間疎遠となる。
アリッサはメサイアに乗って戦うため、軍務中は本来の性格を封印して行動的な振る舞いを心掛けるようになる。また、ミヒャエルと離れたことで恋心が育ち、確実に生き残るために高価な成形炸薬弾を好んで使うようになった。
後にその恋が実を結び、ミヒャエルとの再会を機に結婚。翌年には息子のバーソロミューが誕生している。
ミヒャエルは性格的な理由から公務員への道を進み、トイフェルラントとの接触で新設された外務部に栄転していた。その人事はシズマが恭一郎の性格を見越しての差配であったのだが、ミヒャエルには真意が伝わっていなかったようだ。
バーソロミューは両親に似ず元気溌剌な男の子で、結構な頻度でエアステンブルクへと遊びに行っている。どうやら気になる子が、エアステンブルクに住んでいるようだ。
・《イスカ・ルー / アスカ・ルー / シン・ルー / カレン・ルー / カリム・ルー》
元オディリア急進派頭目 / 民間人 / オディリア統合軍上級特尉 / オディリア統合軍特尉 / オディリア統合軍特尉
箱舟級大都市艦壱番艦チェリー出身
イスカはメサイアの操者時代から、その過激で激烈な戦い方から、凶人と揶揄される女傑であった。しかしそれは、イスカ流の愛情表現の一端であり、それを認めてくれた性格が正反対の夫の下に帰るための想いの裏返しであった。
先の決戦で夫を失い、自身も再起不能の怪我を負ってからは、障害のあった長女のアスカに自身の身体の一部を移植して、健康な身体を支える一心同体の生活を行なっている。
愛する家族をオメガに殺された者達が集って結成された急進的な派閥を取り纏める立場に立っており、彼等の無軌道な暴発を抑え込むブレーキ役を務めてきた。
それでもオメガへの怨念に突き動かされ、恭一郎を戦場に引っ張り出し、保有する技術を強制的に徴発して本懐を遂げようと、自身の命も担保にした凶行に走るが、恭一郎達の能力評価をしくじったため、あえなく返り討ちにあって全てがご破算になった。
アスカは不自由な身体で生まれてしまい、長い間ベッドの上で過ごしてきた女性だ。その存在は家族以外にはあまり知られておらず、世間に認識されるようになったのは、母のイスカから身体の一部を移植されてからとなる。
母とは違う物腰の柔らかな性格をしているが、愛情の表現方法は母譲りで、その行動にかなり強引なところがある。家族に対しては親代わりの良き姉であり、特に末の双子からは全幅の信頼を寄せられている。
長い不自由な暮らしで夢見がちな思考をしており、行動の端々に理想主義的な一面が顔を覗かせている。その思想を胸に食料プラントに就職を果たしていたが、同僚達の脳筋率が非常に高くてなかなか親しくなれないでいた。
そんな時に理想的な存在である恭一郎が現れたことで、母の後押しを受けて接触を図ったものの、アスカを本能的に天敵認定したリオの鉄壁の防御の前に轟沈した。
シンは父譲りの騎士精神に溢れた好青年で、我を押し通す母や姉を苦手としていた。それでも家族愛の根は繋がっていて、末の双子に対しては相当に甘い行動を取っている。もっとも、それが双子にとっては不評であるのは皮肉なことだ。
美男美女揃いのルー家においてもトップクラスの美形であり、オディリア共和国内でもハリエットと並ぶ有名なメサイア操者であった。そんなシンには言い寄る異性が後を絶えず、ファンが一方的に押し掛けて来ることも珍しくない。そうなるとアンチの勢いも相当なものになり、周囲はかなり殺伐とした状況となってしまっていた。
そんな中で、周囲を気にせずシンに好意を寄せてきた女性パイロットに心奪われ、以降は彼女の家に転がり込む形で同棲を始めていた。その女性の性格が母や姉に通じるところがあったのは、血は争えない証拠なのかもしれない。
カレンとカリムは双子の姉弟として生まれ育ち、共にメサイアの操者に選ばれた新米兵士である。
並みの双子を上回る思考の同調律を持っており、二人の連携は格上の相手を斃すほどのジャイアントキリングを何度も生み出している。
姉のカレンはシンをも上回る美形で、ハリエットとは方向性の異なる可愛い系の美少女である。性格は強気ではあるが常識の範囲内に収まっていて、礼節を弁えた淑女を目指して自己鍛錬を続けている。
弟のカリムはシンに憧れる戦士で、その性格は兄以上に父に近い。双子の姉のカレンと一緒でなければ十分な力を発揮できないことを自覚しており、将来の成長が待ち遠しいと前評判が非常に高い若手のホープとなっている。
・《シリウス》
オディリア統合軍上級特尉
箱舟級大都市艦陸番館カメリア出身
大統領の移動の際に警護を任せられるほどの実力を持つ、孤高のスナイパー。沈着冷静で口数も少なく、その素性は謎の部分が多い本名・性別不詳の人物。
最強の天才操者と呼ばれるアンタレスの愛弟子で、活動時間に制限のある師に代わって、日々の雑務をこなしているらしい。
本人の目撃例が極端に少なく、シズマも素顔を知らないという謎だらけの存在。
・《アレス・バストロール》
オディリアの汚物
全女性の敵
早く死刑になればいいのに!
◇◆◇◆
「以上となります。追加や変更点が認められましたら、改めて報告いたします」




