洗濯講習会
「きたな…」
真昼の部屋を開けて一ノ瀬が発した最初の言葉。
おいおい、感情がそのまま出てるぞー!
「意外と宮下さんって掃除とか苦手なんだね?」
いや違う一ノ瀬。
あくまで俺の推測だが、こいつは何もかもできないのだと思う。
俺の知る限り、洗濯もできないし、おそらく家事全般ができないのだろう。
「ま、まぁね…、は、ははははは…」
真昼は苦笑いで答える。
このままじゃ進まないな。
「よし、それじゃあ始めるぞ一ノ瀬!」
「えっ?私は?」
「そうだな…んー、そうだな、これからのことも考えて、洗濯のやり方でも教えるか。それじゃあこっちきて」
「なんか邪魔モノ扱い…。ってか、洗濯ぐらいやり方わかるもん!」
「それじゃあやってみて」
「任せてよね!」
なんか嫌な予感しかしない。
こうして、俺と真昼は洗濯機のある洗面所へと向かう。
さあ、見せてもらおうかね。そこまで自信があるのなら。
「それじゃあ」
そう言って真昼は何をするのかと思えば、真昼はいきなり洗濯物を洗濯槽に入れ出した。
そして入れただけなのにこちらにドヤ顔をする。
「ほらね?できるでしょ?」
「お前、洗濯したことあるのか?」
「えっ?!」
「お前今入れたやつの中に下着とか入ってるだろ?下着とかは洗濯ネットに入れるんだよ!」
「せ、洗濯…ネット?」
「まじか…まさかここまでとは…」
「そんな、捨てられた子犬を見るかのように見ないで!で、でも私…洗濯ネット?なんて持ってないんだけど?」
「はぁ…、このあまり家事ができない俺にため息つかれるって相当だぞ…。まぁ今日は俺のを貸すから。少し待ってろ」
だんだん俺の真昼への対応が変わっていく。
俺は一旦自分の部屋に戻り、洗濯ネットを取り、再び、汚物ハウスへ。
「ひとまず…洗濯ネットに下着を入れろ。それと…、洗濯物を入れる前に洗濯機のホースを蛇口に繋げる。お前のやつ外れてるぞ?」
「あ、そうだったー。今からはめようと…。はい!これでオッケー…でしょ?!」
真昼は自身の下着をネットに詰め、洗濯物を入れる。
そしてなぜか真昼はドヤ顔。
バカだ。
「はぁ…、お前、自分信じすぎなんだよ。少しはまだやることはないか疑え!」
「えっ?でも今言われたことはいけたでしょ?だからこれから洗剤を…」
「じゃ!ぐ!ち!ゆるめたのか?水出ねーぞ?」
「いや、それはこれから…、すみません…」
真昼は泣きそうになりながら蛇口を緩める。
「できないなら、できないって言えよ。怒ってるわけじゃないんだから。無駄に適当にやられる方がこっちもイライラするんだよ」
「わかりません…。それと、怒らないで…ください…」
「うむ。はじめっから素直になれよ…。まぁ、これからは洗剤と柔軟剤入れてボタン押すなんだけどな」
「それならできると思う!」
そうして真昼は洗剤を手に取った。
さすがにもう間違えることなんて…まじかー!
「わりーわりー、言うの忘れてたな?洗剤とかにはちゃんと入れるとこがあってな。ここ、ここ。柔軟剤はここな。よし、そこまでやってみようか?」
「うん…。なんか幼稚園児ぐらいを相手にしてるかのように話されると、本当に悲しいんだけど」
「いやいや、三歳児ぐらいのつもりだよ?」
俺は笑顔で答える。
真昼は泣きそうになりながら作業をする。
それを俺は見てあげる。
「よくできましたー!これをできるなんてすごいね?!それじゃあふたを閉めて、開始のボタンを押してみようか」
「逆ギレしたいけど、できないのが現実…。くっ」
そして、真昼はやっとの事で洗濯機をスタートさせることができた。
「終わったー!」
「まだ洗濯が!だけどな」
「あはははは……はぁ…。これからが本番かぁ…」
「まぁ頑張ろうぜ!」
「うん!」
「ふむふむ、なかなかいい感じじゃないですか?」




