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和風魔界の反逆者  作者: 猫もしくは犬
一章 界武
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四十八話 少女の追憶 その一

私は生まれた頃から他の人とは違ってた。

髪とか肌とか白いのに、目だけが凄い赤かった。

出荷前に聞かされたんだけど、

最初は気味が悪いから処分される予定だったけど、

魔力がとても大きいからちゃんと育てる事にしたらしい。


多分、私はこの言葉の意味をまだしっかりと分かってない。

ただ一つ、他の人とは違うというのは凄い悪い事だ……

それだけは絶対にちゃんと分かってると思う。







私は、白いのが周りにうつっちゃいけないからと、

他の人間とは別々に育てられた。

うつる訳ないと何度も魔族の皆に言ってみたんだけど、

ちっとも相手にされなかった。

本当にうつらないかどうかなんて私は知らなかったけど、

それでも機会がある度に言ってみた。だって私はずっと部屋に一人きり。

寂しいのは大嫌いだった。


私の小さな部屋。三歩も大股で歩けばすぐ壁に手が届いちゃう。

固く閉じた扉には覗き窓があるけど、私の頭よりずっと上だ。

その覗き窓と天井にある小窓、それがこの部屋と外を繋ぐ全て。

どっちも、私の手が届く事なんて無かった。


時々、その天井の小窓から漏れてくる声があった。

笑い声、はしゃぎ声、偶に泣き声も……とにかく色々。

あの声はなにと魔族の人に聞いてみたら、

あれは人間の子供が友達と遊んでいる声だという。

友達。それは嬉しい時に一緒に笑い、悲しい時に一緒に泣き、

寂しい時は一緒に遊んでくれる人なんだって!


それを欲しいと何度も何度も魔族の大人にお願いした。

顔を見る度お願いした。だけど誰も真面目に聞いてくれなくて、

私はずっと部屋から出る事が出来なかったし、

偶に魔族の大人が見に来る以外に誰も来てくれなかった。







そんな私でも、偶には人間と会う機会があった。

年に一回か二回、牧場中の人間が一斉に大きな広間に集められ、

体と魔力の成長を確認する時だ。

でもその時も、人間の皆は私を遠くから眺めるばかりで、

誰も近寄ってくれなかった。不思議だった。

魔族と人間であんなに姿が違うのに誰も気にしていない。

だけど、人間同士で少し姿が違うと凄い気にされるんだ。とても変でしょ?


だから、五度目ぐらいの成長確認の時、

私の方から人間達に近づいて話しかけた。容姿は関係なく、

私を知ってさえくれれば友達になってくれると思ったからだ。

本当に、ただ友達になりたかっただけ。


何故だろう? 最後の方はあなた達はおかしいと大げんかしちゃった。

だって、誰も私の言う事を聞いてくれないんだ。

ちょっと姿が違うだけだって。同じ人間だから仲良くしたいって。

そう言ったのに、ただ気味が悪いって返された。

それで、流石の私も頭に来ちゃった。


それからは、二度と人間に会えてない。







次は魔族の皆に何度も伝えた。誰か私と仲良くしてほしいって。

一人は寂しいって。だけど私に友達が出来る事はなくて、

その代わりに背中の模様がどんどん大きくなっていった。

あれが大きくなると何にも考える気にならなくなって、

少しの間は寂しさも紛れるんだけど……すぐ、また寂しくなった。

だから、こんなの何度も大きくしないでいいから友達が欲しいって言った。


「あなたと友達になりたい子はいないよ。

 だってあなたは食べられる為に育てられてるんだ。

 そんな子と誰が仲良くなりたいと思うものか」


私があまりにうるさかったからか、

ある日私の世話をしていた大人がそんな事を言ってきた。

その時私は初めて知った。

私はお米と一緒で、誰かに食べられる為に生きているのだと。

その日はとてもつらくて一睡も出来なかった。


でも……それでも体が大きくなっていくと、私はどんどん寂しくなった。

いつか誰かに食べられるからこそ、その時までは誰かが一緒にいて欲しかった。

お米達があんなにくっついているのも、きっと寂しいからなんだ。

だから食べられるその時まで、皆と手を放そうとしないんだ。


七歳の時、私は大人達に心を込めて訴えた。

誰かに食べられてもいいです。でもその時までは、友達じゃなくてもいいから、

気味が悪いと言われてもいいから、怖くて寒い夜に

手を握ってくれる誰かがいて欲しいです、と。涙を流して何度も何度も訴えた。


その次の日、また背中の模様が大きくなった。

なぜかよく分からないけど、その時から私は一言だって喋る事が出来なくなった。


そこでようやく私は気付いた。

私が人間で、この髪が白くて、この目が紅いから、

私の手を握ってくれる人はいないんだって。

ずっと一粒のお米のままで、いつか誰かに食べられるんだって。







十一歳になった時、私は出荷される事になった。

私を食べてくれる人ができたんだ。何でもとても偉い人で、

その人に食べられるのはとても栄誉な事なんだって。

偉いのも栄誉なのも別にいいんだけど、優しくて、素敵な人ならいいなと思った。

だって食べられるっていうのは、食べた人の体の一部になるって事だから……

その後はずっと一緒にいられるって事だから。







初めて見る外の世界。何もかもが珍しく、素敵に見えた。

初めて見る馬。自分よりも大きな馬車を引く頑張り屋さん。

初めて見るおじいちゃん。優しそうだけど、でもちょっと怖い。


私は喋れないし、おじいちゃんも話さないから

私がどこに行くのかも分からない。そんな私が食べられる為の旅。

それでも最初は楽しかった。


道行く人や町中の人混み、見ているだけで楽しかった。

本当に色んな人がいて、色んな物があって、色んな景色が見れた。


だけど、人間は私一人だけ。友達になってくれる人だって誰もいなかった。


何日かすると、新しい人や新しい物を見ても何も感じなくなった。

ずっと待ち望んだ外の世界なのに、私はやっぱりこの荷台の上からは出られない。

誰とも話せないし、誰も話してくれない。

私が待ち望んだのって、こんなつまんないものだったんだと、気付いちゃった。







だからかもしれない。あの時も私は怖くなんてなくて、

ただ……ちょっと嫌だった。


街道を進んでる時に怖い人達に囲まれた。

おじいちゃんとその人達との話を聞くと、どうやら私を食べたいんだって。

その時私は、この人達に食べられるのかなぁとか、

もうちょっと優しい人に食べて欲しかったなぁとか、

でも私は食べ物だから仕方ないのかなぁとか、そんな事を考えながら、

多分諦め顔で笑っていたと思う。


そんな時、何故か分からない。だけど……兄弟の鬼が突然現れて、

私の事を助けてくれた。







弟鬼くんが私を助ける時に怪我をしちゃった。

だから私は昔使ってた痛くなくなるおまじないをしてあげた。

あの小さな部屋で戸を叩きすぎて手が腫れちゃった時に

こっそりしていたおまじない。

不思議だった。自分以外の誰にもしてあげた事なんて無いのに、

弟鬼くんには自然としてあげられた。そうしなきゃいけないとすら思った。


そうしたら、弟鬼くん……ありがとうって、言ってくれた。







あの時から私の旅……ううん、違う。私の世界が変わった。

鬼の兄弟は他の人達と全然違ってた。私を見る目も、私に掛ける言葉も、

全部に優しさがあった。


お兄さん鬼はちょっと怖そうなんだけど、私を助けてくれたし、

何より私を見る目が優しかった。

弟鬼くんはいつも怒ってるみたいだけど、私にご飯を分けてくれた。


途中でまた怖い人が来て、その時は凄い怖かったんだけど、

弟鬼くんとおじいちゃんが全員やっつけてくれた。

そしてその間、お兄さん鬼は私と一緒に笑いながらご飯を食べてくれた。

まるで……友達みたいに。


後は食べられるのを待つだけだと……それでいいと諦めてた。

でも……あの時私にもしたい事が出来たんだ。


もし私が食べてくれる人を選べるのなら、

この鬼の兄弟に食べて欲しいと思った。絶対に私を大事にしてくれるから。

だから彼等と一緒になれば、私はずっと寂しくないんだ。

それはとても素敵な事だって……そうなって欲しいなって思った。

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