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かごの中の白  作者: 橋本まよい
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かごの中の白 6

俺は、貯金を切り崩し生活していた。だから、会社へ行くという事はなかったので常に、マチコの側にいてあげる事ができた。

人間の慣れというか対応する力は素晴らしいと思った。子供用の食事作りやオムツ交換など、今まで全く経験した事のない作業が、上達していくのが自分でわかる。わかるどころか、更に極めようとしている自分もいるのだ。

だが、俺の成長以上に子供の成長は凄すぎる。頭から爪先までの全細胞がフル稼働し、目に写る物・耳から入ってくる音・肌で感じる感覚など全てを吸収しているのだろう。


元々、我が家にはテレビや冷蔵庫、テーブルなど必要最低限の物しかなかった。だが最近では、部屋のあちこちにカラフルなぬいぐるみが待機している。更に、好きなアーティストのミュージックビデオなどが流れていたはずのテレビに、今では顔がパンでできたヒーロー達が写し出されている。


(我が家はトイ・ストーリーかっつうの…)


俺には相談できる友達がいなかったので、近所の本屋へ行き育児や子育ての専門誌を立ち読みしながら、自分なりに勉強してみた。

それから大変なのが、マチコの洋服だ。デザインや色など、そこが俺の中で問題ではなくそもそも、40過ぎのオヤジが1人デパートの子供服売り場にいる事自体が大問題なのだ。ましてや、戸惑いながら子供服を選んでいる姿は、覚醒剤ではなく変質者的な別の意味で、警察へ通報でもされてしまいそうだ。


少し前の話だが、以前付き合っていた女性にこんな事を言われた事がある。


(あなたは、自己愛パーソナリティー症候群だ)


と。名前の通り、自分自身の事が一番可愛く、自分を守る為に罪のない周囲の人々を否定したり、傷つけてしまう傾向があるらしい。

俺は言われた事がきっかけで、精神科の病院に行ってみた。幸い結果は、この病気ではないと言われたが、ケガの様に目に見えるものとは異なる為、診断結果にスッキリしなかったのを覚えている。その後パソコンなどで調べているうちに、どのサイトにも多く書かれている興味深い事があった。自己愛パーソナリティー症候群とは、生まれてから3歳くらいまでの自身でも記憶のない数年間の生活環境に、原因・問題があることが多いと言うのだ。


何故、こんな話を思い出したのだろう…


ただ、マチコを見ていて人間の土台を作る大切な時期に、どんな理由があろうと娘を手放したマチコの親への疑問や怒りがわいてくる。と同時に無力な自分だが、少しでも彼女の力になりたいと思う様になっていた。


でも…覚醒剤をやめる事はできず、自分自身とは向き合っていなかった。

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