かごの中の白 2
(まじかっ!)
俺は、買い物袋を手すりにぶつけまくりながら、階段を駆けあがった。
(お、お前!)
50㎝位だろうか、長方形で浅い深さの洗濯カゴがある。その中には白い厚手のタオルに包まれ、顔を半分だしながら大泣きしている赤ん坊がいるでわないか。
(ちょ、ちょっと!そんなに泣くなよ!)
意味がわからないし、こっちが泣きたいくらい頭は大パニック。呼吸を整え、何となく周囲を見渡してから、泣き声の主が入ったカゴを覗き込んだ。
すると主は急に泣き止み、無表情になったかと思いきや、今度は人の顔を見てケタケタと突然笑い出したのだ。
俺も、頭がおかしくなっていたのだろう。
笑われている俺も、今までにした事のないような、とびっきり最高のひきつり笑顔を作ってみせた。
買い物袋を玄関に置き、もう一度周りに人がいない事を確認した後、緊張した手つきで主の入ったカゴを、ゆっくりと持ち上げた。
(誘拐犯にでもなった気分だ…)
持ち上げたカゴを部屋へ入れ、キッチンテーブルの上へ慎重に置いた。
一瞬持ち上げられ、ジェットコースターにでも乗った気分になったのか、主は更にケタケタと笑い、包まれたタオルの中から手をだしうごめいている。
(まったく…抱っこしてくれのサインなのか?)