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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第五章 荒廃した魔都を保護する為の奇策
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ジーク と 手合わせ

流石に俺も、この数週間で疲労が溜まっていたので、二、三日を魔都でゆっくり休養する事にした。


「………………」


休養する筈だったのに…………何故こうなった?


今俺の目の前には、聖剣【バルムンク】を正眼に構えたジークが立っていた。


「よし!始めるぞ!セツナ」

「え~?マジでやんの?俺ゆっくり休みたいんだけど…………また今度にしない?」

「ダメだ。俺だってずっと我慢してたんだぞ?お前も忙しそうだし、生徒連中の面倒も見てるしで……けど、そろそろ我慢の限界だ」

「うっ……」


それを言われれば言葉も出ない。

ジークには、今回の件で大分世話になった。

ジークはほぼ出突っ張りで、浄化に当たってくれていたのだ。

珍しく俺に気を使ってなのか、あまり俺に絡んでこなかった。

そこまでしてもらっておいて、俺がジークの我侭を突っ撥ねるわけにもいかない。


「……分かったよ。久し振りにお前と手合わせするのも面白そうだ」


俺は苦笑しながらもそう言って、鉄刀を構える。

この刀は、ジークが用意してくれたものだった。


何とも用意周到な……。


ただの鉄刀と言っても、そんじょそこらの刀とは訳が違う。

確かに俺の愛刀達には劣るが、一目見ただけで、それなりの業物だと言うのは俺にも分かる。


俺の言葉を聞くと、ジークは喜色満面の顔になる。


「お前達もちゃんと見とけよ?見る事も大事な事なんだからな?それに、俺が態々こんな場面見せてやるなんてそうそうないぞ?」


ジークが少し離れて観覧している皆に声を掛ける。

そこには、アリア・アヤメ・ミシディア・カルミア・七鈴菜さん・愛華先輩・龍・疾風の八名が、座して俺達を見ていた。

ジークの言葉を聞いて、皆が真面目な顔つきで頷く。


「…………お前、最近気を遣いすぎて……キモい」

「おい!それはどう言う意味だよ?!」

「あはは。でも、皆にも配慮してくれて助かるよ。ありがとう」

「ぐっ……」


俺が素直に礼を言うと、ジークが言葉に詰まり、照れたように視線を逸らす。


「………………じゃ、始めるか」


俺がそう言うと、ジークの顔から一切の感情が消える。


「「「「「「「「っ?!」」」」」」」」


皆が息を飲むのが分かった。

それは、普段のジークからは想像も出来ない、ジークの本気モードの姿ーー。

そこには殺気が込められていた。


ここは空間内だ。

周囲への影響を配慮しての事だった。

皆にも、念の為に結界を張っていた。

何故なら、ジーク相手に周りに気を配る余裕が、俺にも無くなると判断したからだ。


そして、合図も何も無く、それは唐突に開始された。

ジークが音も無く地を蹴り、一瞬にして俺の懐に飛び込む。

そして、俺の胴体目掛けて、横からジークの聖剣が迫る。

俺はそれを横目で見ながら、鉄刀を下に向けて受け止める。

それだけで、周囲に衝撃波が走る。

俺はそのまま、ジークの聖剣をかち上げると、一度後方に地を蹴りジークと距離を取ろうとする。


いくら業物の刀とは言え、聖剣相手にまともに打ち合う事など出来ない。

なので、俺はこの刀に魔力を通して、強度を増しているのだ。


俺は後方に飛び退くと、着地と同時に、今度は俺が音も無くジークの懐に飛び込む。

そして、下段から刀を斬りあげる。

けれど、それをジークは上半身を逸らすだけで難なく回避する。

だが、俺はジークが躱す一瞬の内に、ジークの背後に回ると、更に刀を横振る。

けれど、ジークはそれすらも、後ろを見もせずに聖剣を背後手に回すと俺の刀を受け止め、そのまま片脚を軸にして俺の方へ向き直り、今度はジークが俺の刀をかち上げると、そのままの勢いで俺に聖剣を打ち込んでくる。

俺はそれを、体を半身ずらす事で回避し、数歩下がって再び距離を取る。


「「「「「「「「……………………」」」」」」」」


辺りを静寂が包む。

皆がポカンと口を開けていた。

ジークの顔に、いつもの軽薄な笑みが浮かんでいた。


「やっぱ、お前との打ち合いは楽しいな!」

「あー……はいはい。それは良かったよ」


俺は軽く(あしら)うように言う。

けれど、言葉とは裏腹に、俺の顔にも笑みが浮かんでいるのは仕方無い。

最近は、忙しさにかまけて、ベリアルやアルテミスとも碌に修行もしてなかった。

久し振りの本気試合に、俺の心も高揚してしまうと言うものだ。


「これじゃ、いつまで経っても埒が明かないから、時間制限にしないか?」

「…………む~、確かに……しょうが無いからそれでイイぞ?」


ジークは渋々ながらも、俺の意見に賛同してくれた。


それから俺達は、二時間と言う“短い”時間、みっちりと打ち合い続けたのだった。




外に出てみると、何故か俺達よりも皆が疲労困憊の顔をしていた。


「えっと…………大丈夫か?」


俺は心配になり、皆に声を掛けた。


「…………改めて、お前が化け物だって言うのが分かった」

「ひどっ?!」


龍の言葉に皆が頷く。

流石に俺も傷ついてしまう。

ジークは対照的に、とても上機嫌だった。


「いや~、楽しかったな?本音を言えば、もっとやり合っていたかったが」

「……………………勘弁して下さい。これ以上俺を人外にしないで……」

「は?そんなの今更だろ?」

「お前も酷いな?!」


ジークは真顔で、さも当然のようにそんな事を言う。


え?何?俺ってマジで人じゃ無くなってんのか?

んなアホな!!


俺は、人知れず頭を抱えるのだった。

活動報告もたまに書いてるので、暇な時見てみて下さい。

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