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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第一章 二度目の異世界は十年後?!
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城下町 と 自宅

朝食を食べ終わった後、俺はすぐ様城の玄関に向かっていた。

他の生徒達に気取られないように、少しずつ気配を消しながら……皆から静かに離れたつもりではあった。

けれども、約一名には、流石と言うべきか……気付かれていたらしい。


「……刹那くん。どこ行くの?」


玄関近くまで来て、その一名に声を掛けられた。

俺は驚きもせずに声の主に振り向く。

そこには案の定、七鈴菜さんがいた。


「ん~……ちょっと、ね」

「ちょっとって何……?」


明らかに不審な目でこちらを見てくる彼女に苦笑する。

正直な所、善文程ではないにしろ、彼女の事も俺はそれなりに信頼している。

なので彼女に説明するのに躊躇いはなかった。

説明と言っても、善文に伝えたように言葉を濁しながら、詳しくは言えないけどこれは重要な事なのだと、なるべく言い聞かせるように伝える。

すると、やはりと言うか何と言うか、二人と同じ事を言ってきた。


「なら私も行く!!」


七鈴菜さんは間髪入れずに手を挙げて宣言する。

アリアと言い善文と言い、心配してくれるのは有難いのだが、こればかりは俺の意思を貫き通させてもらう。

俺は善文にも言った事を、七鈴菜さんにも今一度伝える。

勝手な言い分だが、待っていてほしいーーと。

それでも、未だ納得出来ていない彼女に俺は苦笑しつつも、何度も彼女に自分の気持ちが伝わるように、根気強く話した。


「それに、七鈴菜さんの【観察眼】は確かに役に立つけど、それを上手く使いこなせてないし、もし出来る事なら、他の子達の為にその力を使ってほしいと思うんだよね」

「……え?何で私のスキル知ってるの?私まだ誰にも言ってないのに……」

「ごめん。それもまだ言えないんだ……けれど、俺はその力には凄く期待してるんだよね」


そう言うと、七鈴菜さんが何故か顔を輝かせたかと思うと、凄い勢いで俺に迫ってきた。

そのあまりの勢いに少したじろぎ、つい一歩後退してしまった情けない俺。


「ほ、本当に?私、刹那くんに期待されてる?」

「う、うん。凄く期待はしてるけど……」


俺がそう口にすると七鈴菜さんは、顔を少し赤らめながら「えへへ」と本当に嬉しそうな顔をして笑った。

俺はその顔を見て、ある可能性が脳裏を過ぎった。


あれ……?これってまさか…………?


だが、俺はその考えを一度頭を振って切り替える。

今は時間もないので、それを確認するのは幅かれると判断したからだ。

もしそうだったとしたなら、彼女の今までの言動にも納得が行くと言うもので……。

俺は自分の鈍感さに、内心舌打ちをしたい気持ちをグッと抑えた。


自分が『超』がつく程鈍いのは知っていたけどね……。


嘗ての仲間にも言われた事がある。


『お主は聡いくせに、自分の事になると極端に鈍くなるのは何故じゃ』


などと言われた事を思い出す。

彼女には申し訳ないと思いつつも、俺はまずはやるべき事をやってから、彼女とは今度ゆっくりと時間をかけて話すべきだと思った。


「七鈴菜さんには、他の皆の……善文の力になって欲しい。勿論七鈴菜さんが無理しない程度で構わないから」


そう言いながら、俺は彼女の頭を優しく撫でながらお願いをする。

すると彼女は、それこそ花の咲くような満面の笑顔で、力強く頷いてくれたのだった。

その笑顔に、一瞬ドキッとしたのは内緒だ。

話を終えた俺達は、これ以上ここに居れば他の生徒達にも感付かれると思い、お互いそそくさとその場を離れた。


俺は玄関から王城の門へ向かい、久し振りの城下町に足を踏み込んだ。

城門の衛兵に敬礼されてしまったが見なかった事にした。

俺は城下町の空気を胸いっぱいに吸ってから、スキル【隠蔽】を発動する。

この世界での【黒髪】と言うのはとても希少価値が高く、街中を見て見ても、俺以外の人は殆どが金髪や水色の髪、ピンクっぽい髪の人もいてとてもカラフルだ。

全くいない訳ではないのだが、それでもこの世界の黒髪が稀有な存在である事に変わりはない。

あまり悪目立ちしたくなかった俺は、髪と瞳の色を青系にする事にした。

それを確認してから、俺はとある場所に一直線に向かう。

本来ならじっくり王都見物をしたい所だが、今は時間が惜しい。

横目で城下の人達を見てみると、若干の憔悴は見られるが、こんな状況下においても絶望せず生き生きとしているように見受けられた。

俺はそんな様子に微笑ましく思うのだった。

そして俺が向かった先は、西の一角の外れ、住宅が所狭しと並んでいる所を、脇目も振らずにまっすぐ突き進む。

程なく歩くと、先程までなかった筈の家門が目に飛び込んできた。

ここは昔、俺がアレク王から貰い受けた家だった。

正直、殆ど各国を飛び回っていた俺には無用の長物ではあったが、アレク王自らの嘆願もあって、取り敢えず貰えるものは貰っておこうと思い、俺の家となったのだ。

この家の周りには特殊な【結界】が張っており、俺が【許可】した者以外は入る事はおろか、認知する事も出来ない仕様だ。

ここには、【空間魔法】と【隠蔽】の【複合魔法】で作られた魔道具が、四方に埋められている。

それは、昔の仲間と共同で作られた、一般的には売られてない代物なので、この魔道具の事を知っている者は、俺が許可した者に限るのだ。


そして、俺がここに来た一つ目の理由だが……。


俺は門の鍵穴に、俺の魔力を注ぎ込む。

それだけで、鍵穴は無抵抗にカチリと簡単に解錠された。


バンッーー。


門が開かれたとほぼ同時に、玄関の扉が勢いよく放たれる。

昨日アリアからこの事は伝えられていた。

それでも俺はまさか本当にいるとは思っていなかったので、その姿を見てつい苦笑してしまう。

そこには、銀髪に狼耳とフサフサの尻尾を携えたメイド服の……俺の可愛い【家族】の少し成長した姿があったーー。


「ただ今。アヤメ」

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