撤去 と お馬鹿な子
俺達はあれからベリトとラマシュトゥにも協力を仰ぎ、何とか全ての木札を撤去する事に成功する。
「良くもまあ、これだけの物を作ったものだよな」
俺はある意味感心してしまった。
今俺達の目の前の机には、二十三枚の木札が山となって置かれていた。
「これ一つ作るのだけで、相当な根気が必要になると思うんだが?」
「だね。しかも、ボクでもこの技術は真似出来そうもないよ」
俺が呆れながらそう言うと、セーレが悔しそうに言った。
「……でもまあ、これで更にスムーズに浄化が捗るだろ?邪魔する物はもう何も無いんだから。それだけでも儲けもんだと思う事にしようぜ?」
俺は今は前向きに捉えるべきと判断して、皆に笑顔を向けて言った。
皆もそれに頷いてくれた。
そんな時、控えめなノックが聞こえる。
「はい」
俺が返事をすると、一人のエルフが顔を覗かせる。
「……すみません。お忙しい所を…………あの~……」
エルフがとても言いづらそうに、肩にある“者”をチラリと見遣る。
俺は溜め息を吐いて頭を抱えた。
そこには、担がれたミシディアの姿があった。
「…………態々悪かったね。後はこっちでやるからいいよ。君も少し顔色が悪そうだから一回休んでくれる?」
「あ、はい!」
エルフは俺にミシディアを預けてから、一礼して部屋を退室していった。
俺はソファーにミシディアを横たえる。
さて…………どう言ったお説教がいいかな?
俺がそんな事を考えてると、程なくしてミシディアの瞼が僅かに揺れる。
「う……ん……」
そして、ミシディアの瞼がゆっくりと持ち上げられ、ミシディアは目を覚ます。
「あ、れ……?ここは……」
「やあ……おはよう。ミシディア」
俺はニッコリと笑ってミシディアに挨拶をした。
「ひっ?!」
ミシディアは俺のその様子を見て、何とも情けない悲鳴を上げる。
俺は笑っているようで…………笑っていなかった。
「あ、あの……セ、セツナ様……?」
「…………ん?何かな?ミシディア」
俺が聞き返すと、ミシディアが涙目になりながら、ソファーの上に正座をしたかと思うと、勢い良く頭を下げた。
「すみませんでしたー!!」
「はぁ~……何故俺が怒ってるか分かる?」
「うっ……そ、それは、倒れたから…………ですか?」
ミシディアが上目遣いで聞いてきた。
「そう。俺言ったよね?無理は禁物だって……倒れそうになったら必ず言う事。それなのに、何で倒れるまで無茶してるんだ?」
「そ、それは…………」
ミシディアが言い淀む。
俺はジッとミシディアを見詰め、ミシディアが話すまで待った。
「………………………………役たたずに思われたく無かったから」
ミシディアがボソリと呟く。
「……は?」
「役たたずに思われたくなかったんです!!力の無い子だと思われたくなかった!!だから……っ!!」
ミシディアがヤケにって、半狂乱で喚き散らす。
「……それで倒れたら世話無いよな?」
俺の声に棘が混じる。
「っ?!」
ミシディアが言葉に詰まる。
俺は長い溜め息を吐くと、ミシディアの目を見詰めて言った。
「役たたずの人間、ね。早死にする奴がどんな奴か知ってるか?」
「…………え?」
「まあ、色々あるが……例えば己の力量を知らない奴。限界を知らない奴。引き際を見極めれない慧眼を持たない奴。それから…………周りを顧みない奴」
「あ…………」
ミシディアが小さく声を上げる。
「仲間って言うのはな、ある程度の我侭なら目を瞑ってくれる。自分の不始末をフォローしてくれる。けど、倒れては意味が無いんだよ。倒れれば、それだけでお荷物になる。戦いから逃げたくても、自分のせいで仲間を死なせてしまう事もある。少なくとも自分が倒れず、自分の足で逃げる事が出来れば助かった命だったかもしれないに、だ。そう言う奴が役たたずになるのだと俺は思う」
「………………」
ミシディアは無言だった。
「仲間に寄り掛かる事は別に悪い事じゃない。自分が出来ない事は仲間がしてくれるし、逆に仲間が出来ない事は自分がしてやればいい。仲間を頼る事が出来ないのは…………それは即ち、仲間を信頼していないと言う事……仲間への侮辱に他ならない」
「……っ?!」
ミシディアの瞳から、大粒の涙が溢れ出す。
「…………で?他に言う事は?」
俺が努めて優しく聞くと、ミシディアは涙を拭いながら言った。
「……す、みませ……し、た。これか、らは、気をつけ、ま、す……ヒック」
しゃくり上げながらも、懸命にそれだけを口にする。
俺はそんなミシディアの頭を、労るように撫でるのだった。
あっという間にお盆休みも終わりです。
短い…………もう仕事無くていいよ 涙
まあ、仕事あるだけ有難いと思わなきゃね!笑




