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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第五章 荒廃した魔都を保護する為の奇策
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魔道具 と 術式

本日三話目の投稿になります。

ザザァァーー……。


海の小波が心地好く耳に響く。

俺は潮の香りを肺いっぱいに吸い込む。

ここ数日間は忙しく、折角海に来たと言うのに、碌に海を堪能出来なかった俺は、やっと落ち着いて海を眺めていた。


俺達は今、レヴィアタンの背に揺られていた。

向かう先は勿論魔都だ。


人魚国を出る際、セフィナが酷く落胆していたので、俺はセフィナを宥めた。

魔都の用が済んだら、また人魚国にも来るし、帝国の件が片付けば、ゆっくり時間を作るからと約束をして……。

セフィナは笑って、俺を見送ってくれた。


魔都は、海上にあるそこそこ大きな諸島だ。

そして、ベリアルの生まれ育った所でもある。

流石のベリアルも、故郷に帰れるとあって浮き足立ってると思いきや、


「特に何とも思わんが?」


と、いつも通りのクールビューティさに、俺は苦笑してしまう。


俺は、昨日のレヴィアタンとの会話を思い出す。


『私に術式を施した相手?』


俺は頷く。

何故俺がこんな事を聞いたのかと言うと、いくらタナロアが魔力を手に入れたと言っても、海王と呼ばれる程のレヴィアタンに、そう簡単に術式を組めるかが疑問だったからだ。

俺の一番の引っ掛かりはここにあった。

それに何よりも、何故術式だったのか……。

スキルを持っていなかったにしろ、術式と言うものは、一朝一夕で手に入れられる代物ではない。

術式とは、繊細かつ複雑な構造で出来ているのだ。

魔道具は、この術式が幾重にも組み込まれて作られるのだが、これは現在では魔族以外は作れないとされている。

何故なら、魔族は魔力の知識量と探求力が異常に高いのだ。

とは言っても、魔族の中でも魔道具の製作を行えれる者は限られている。

魔道具を作るのは危険を伴う事もあるので、魔都内で国家試験?みたいなのがあり、そこで合格した者だけが本格的に魔道具の製作に着手出来る。

思いの外、厳しい条件が課せられるのだった。


そして、【魔法】と【術式】の違いだが、魔法は勿論適正が無ければ使用は出来ない。

それに加え、術式ならそれを組み込まれた物を使えば、実は魔法に適正が無いものでも魔法が使用出来る。

ただし、そう言った魔道具は一回こっきりだったり、使用回数に制限があったり、何よりもそこそこの値段となっている。

そして、魔道具には【放出型】と【備蓄型】があり、魔法は前者に該当する。

備蓄型の例で言うなら、初日にステータスのデータを写す為に渡された【記録玉】がそれになる。


だからと言って、術式も万能ではない。

故に、レヴィアタンを眠らせられた事が疑問なのだった。

レヴィアタン程の力を持っていれば、生半可な術式なら簡単にレジスト出来た筈だ。

それが出来なかったとすれば、タナロアの他に、更に強大な力を持った者が居た可能性もある。


それに、これは俺の考え過ぎかもしれないが、まるで“態と”術式に拘ったように感じたのだ。

そう……俺が【遡行魔法】を持っているのを知り、尚且つそれでレヴィアタンを救出出来るように仕向けられたような……。


そう思い、俺はレヴィアタンに聞いてみたのだが…………レヴィアタンの答えは何とも曖昧だった。


『う~ん……悪いけど、その時の事はあまり良く覚えてないのよね~?』

「……覚えてない?」

『ええ。途中まではタナロアと普通に会話してたと思うのよ。確かにちょっとタナロアの雰囲気がおかしかったから、気になって探ろうとしてたのよね。そしたら、急に眠気が襲ってきたの』

「タナロアが何かしらの行動をしたとかは?」

『それは無いと思うわ。ただ……』

「ただ?」


レヴィアタンが珍しく言い淀む。

俺が続きを促すと、少し躊躇いながらも口を開いた。


『どこか懐かしいような…………そう、まるで昔に感じた事のあるような気配が一瞬したのよ』

「……そうか」


それ以上の情報は、残念ながら聞き出せなかった。

レヴィアタン自身も、タナロアの事は心を痛めていた。

自分が眠りにつかなければ、もしかしたらタナロアを救えたかもしれないと……。

だから俺も、それ以上の事は聞く気もなかったのだ。


二度目の召喚は分からない事だらけだ。


もう一つ俺が気にかかっている事がある。

それが、この旅のルートだった。

王都から始まり、エルフ国→ドワーフ国→人魚国…………これは一度目の召喚の時の、魔王討伐の旅のルートだったのだ。

そして、実は人魚国の後、一度魔都にも行っていた。

上陸はしなかったが、一度は魔都をこの目で見てみたかったから……。

そして人魚国へ戻った俺は、獣人国へ行ってから、天空城に行く事となった。

今回の旅は、図らずも一度目の召喚の時と一緒なのだ。

これをただの偶然と割り切って良いものか、俺は思案する。


この道程を知っている者は限られている。

そしてその中には、勿論エーデルも含まれていた。

だが、前回も疑問に思ったが、エーデルにそれだけの力があるとは、やはり到底思えなかった。

仮に、エーデルがこの件に関与していたとしても、主犯格は別に居るのでは無いかと思わずにいられない。

あの優しくて純粋なエーデルが、こんな大胆な事を仕出かすとは、どうしても俺には思えない

これは、俺の希望的観測にしか過ぎないかもしれないが…………。


兎にも角にも、まずは魔都での仕事を片付けよう。

俺はそう思い、無理矢理頭を切り替える。


何はともあれ、これが意図的に仕組まれた事だとしても、俺のやるべき事は変わらないのだから_______________。

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