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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第四章 王都と人魚姫をストーカーから守り抜け!!
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人魚 と 魚人

少し前話が短い気がしたので、二話目も続けて投稿しました。

その日の夜に、少し回復したセフィナが再び目を覚ます。

そこで、改めて今回の経緯を聞いてみたが、大体は宿屋で聞いた話通りであった。


「だけど、あたしは今でも彼がこんな事をするとは思えないんだよ」

「ん?もしかして、海の大王ってのと知り合いなのか?」

「うん……と言っても、数回話しただけだけど。彼は魚人族の【タナロア】って言って、良く人魚国に遊びに来てくれたんだ。とても大人しい子だったんだけど……」


そう言うと、セフィナは少し視線を落とす。


人魚と魚人は違う。

人魚は下半身が魚で上半身が人間だが、魚人はほぼ魚だ。

二足歩行するし人語も喋るが、見た目は魚である。

そして魚人は、特定の場所に長くは留まらない。

海を放浪してはフラリと帰ってくる……その繰り返しだ。

それは独身の男魚人に顕著に見られ、家庭を持ったりすれば、人魚国に永住したりもする。


「そいつは、魔物を操ったり、レヴィアタンを捕らえたりするだけの魔力があったりするのか?」

「どうだろう?多分他の子達と同じだったと思うよ?」

「……そうか」


人魚や魚人には魔力も精霊力も無い。

海に生きる彼女達には、生まれた時から海の恩恵があり、水を操る事が出来るが、それは魔力とかとはまた別物なのだ。


「取り敢えず、そのタナロアとか言う奴に会ってみないと何とも言えないな」

「…………うん」

「最初に言っておく……話し合いに応じなければ……」

「それは分かってる。大丈夫だよ」


セフィナは、迷いなく真っ直ぐに俺の目を見る。

そんなセフィナが眩しくて、俺は目を細めた。


「……本当に強くなったな」


俺が頭を撫でると、セフィナがはにかんで僅かに頬を染めた。

すると、今度は少し上目遣いで俺を見てきた。


「あ、あのね!こんな時にこんな事言うのもアレなんだけど……」

「ん?何?」

「そ、その……あの…………」


何か言いにくい事なのか、指をもじもじさせながら言い淀むセフィナ。

俺が訝しんでいると、漸く決心が付いたかのように躊躇いながら口を開く。


「………………キ、キス」

「……は?」

「だ、だから!キスして……その……久しぶりだから…………」


顔を真っ赤にしながら、それだけを言うとセフィナは俯く。


「え~……あー…………」


今度は俺が言い淀む番だった。

別に嫌とかではなく、実は寝てる間に口付けしちゃいましたなんて、何か後ろめたくて言いづらい。

俺が逡巡していると、セフィナが何を勘違いしたのか、慌てて取り繕うように言った。


「あ!いや!やっぱりいい!!こんな時に言う事じゃなかったよね?!ゴメン忘れて!!」


そう言うと、横髪で顔を隠そうとする。

俺はそんなセフィナの行動に苦笑する。


こう言う所は変わらないよな。


これはセフィナの癖だ。

都合が悪くなったり誤魔化したりする時は、いつもこうやって長い髪で顔を隠そうとするのだ。

俺はそんなセフィナが可愛くて仕方がなかった。


「……セフィナ」

「え……?」


セフィナが顔を上げる。


ちゅーー。


俺はセフィナの横髪を掻き分けて口付けをした。


「本当は、セフィナが寝てる間にしたから二回目なんだけどね」


俺は、舌を出して悪戯っぽく見せながら、素直に白状する。

変な誤解でセフィナを傷つけたくなかったからだ。

それを聞いたセフィナは、嬉しいやら恥ずかしいやらで、微妙な顔をする。


「そ、そうだったんだ……」


そして、俺達はお互いの顔を見て笑って、どちらからともなく再び唇を重ねるのだった。


そんな事をしていると、不意に扉がノックされベリアルが顔を出す。


「敵襲だ」

「ッ?!」


静かにたった一言を告げる。

それを聞いたセフィナがベッドから出ようとするのを、俺が手で制した。


「セフィナはもう少し休んでるといいよ。後は俺達が何とかするから」

「で、でも……」


セフィナが申し訳なさそうな顔をしていると、ベリアルがもう一つの情報を齎す。


「因みに、海の大王と名乗る者が来ている」

「ッ?!やっぱりあたしも行く!!」


それを聞いたセフィナが、鬼気迫る勢いで即決する。


余計な事を…………。


俺がベリアルを睨むと、当の元凶は素知らぬ顔をしている。

セフィナが懇願するように俺を見てきていた。

俺は頭を抱えて苦笑するしかなかった。


「はぁ~……仕方ないな。ただし、セフィナは大人しくしてる事!分かった?」


俺は少し強めに言った。

その言葉を聞いて、セフィナも力強く頷く。

そうして俺達は全員で、海の大王ことタナロアに対顔する事となったのだった。

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