セフィナ と 目覚め
それからは、疲労もあっただろうが、セフィナは泣くだけ泣くと、そのまま俺の腕の中で泣き疲れて眠ってしまった。
そんなセフィナを衛兵に預けて、俺は残りの魔物共の討伐にあたった。
とは言っても、仲間達のお陰で殆ど魔物は残ってはいなかったが、適当に掃討する事となる。
そして翌日ーーー。
「う……ん……」
ゆっくりとセフィナの瞼が開けられる。
俺は、セフィナの顔を覗き込むように、優しく笑いかけた。
「お早う。気分はどう?セフィナ」
最初はまだ完全に覚醒していなかったのか、ボンヤリと俺を眺めていたセフィナだったが、突然目を大きく見開いてガバリと起き上がる。
「セツ……っ?!」
セフィナが頭を抱えて苦痛に顔を歪ませた。
「こら、駄目だろ?急に起きたら。俺はここに居るから、もう少しゆっくり休むといいよ」
「……うん」
俺が心配してそう諭すように言うと、セフィナは大人しく俺の指示に従って横になる。
俺のズボンの端を、ギュッと握り締めたままで…………。
俺は苦笑する。
その左薬指には、【サファイア】の指輪が嵌められていた。
俺はそっとセフィナの左手を労わるように優しく包み込む。
「あ……」
「もう少し眠りな。起きるまでここに居るから」
「……うん」
そう言うと、セフィナは安心したように、再度眠りについた。
暫くして、控えめに扉がノックされる。
遠慮がちに顔を覗かせたのはアヤメだ。
「……セフィナ様はどうですか?」
声をひそめて、セフィナの容態を確認する。
「うん。さっき一回目を覚ました所。まだ本調子じゃなかったから、もう少し寝かせる事にした」
「そうですか……」
アヤメが心底安堵したように、胸を撫で下ろす。
「で?何か分かった?」
「はい。どうやらレヴィアタン様は敵の手中にあるようです」
「……そうか」
俺は眉を顰める。
あれだけの魔物達を従わせ、尚且つ、あのレヴィアタンまでも捕らえる事が出来る相手か……。
いったいどんなやつなんだか……。
「まあ、相手が誰であろうと関係ないな。俺達のやるべき事は変わらない」
「はい!」
俺が不敵に呟くと、アヤメも力強く頷いてくれた。
「取り敢えずは、セフィナの回復が最優先だ。その間、敵がまた攻めてくるとも限らないから……」
「その点なら問題ありません。既にベリアル様とアルテミス様が陣頭指揮をお取りになって、兵の再編に当たられております」
「……は!流石だな。それじゃ、後はベリアルとアルテミスに任せるよ」
それを聞くと、アヤメは軽く一礼してから部屋を退出していった。
俺はもう一度、セフィナの顔を覗き込む。
だいぶ顔色も良くなったように見受けられた。
俺は、顔にかかった横髪をそっと分ける。
大臣達から、今回如何にセフィナが頑張っていたかを聞かされていた。
以前のセフィナは、引っ込み思案で人と話すのも苦手で、何で自分が姫に選ばれたのか分からず、その重責に耐えられず苦しんでいた。
そんなセフィナが、戦ってる最中もずっと俺との約束を守ってくれていたらしい。
そんな健気な彼女を誇らしく思い…………そして愛おしく思う。
俺は、ゆっくりとセフィナの顔に顔を近付けた。
ギシッーー。
ベッドが静かに軋む。
彼女を起こさないように、軽くセフィナの唇に口付けを落とす。
ちゅーー。
「……良く頑張ったな。後は俺達に任せて、ゆっくりと休むといいよ」
俺は、そっとセフィナの頭を撫でるのだった。




