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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第四章 王都と人魚姫をストーカーから守り抜け!!
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違和感 と 急行

俺は着々と、ドワーフ国の転移魔方陣を完成しつつあった。

この日も、いつも通り小休止として応接室のソファーで寛いでいたのだが、そんな時、珍しく深刻な顔をしたサヴリナが部屋に入ってくる。


「……サヴリナ?」


俺はその徒ならぬ様子に、眉間に皺を寄せる。

サヴリナは何かを考え込むように、初めは口を噤んでいたが、一つ大きく息を吐き出すと、意を決したように口を開いた。


「……【腐死の森】から魔物が進軍中よ~目的地は~エルフ国と~このドワーフ国…………それから王都ね~」

「なっ?!」


俺はその情報に驚愕し、勢い良くソファーから立ち上がる。

けれど、すぐに一度心を落ち着かせる為に、目を瞑って深呼吸をする。

そして、改めてサヴリナに問う。


「……それで?数と到着日時は分かるか?」

「エルフ国と~ここには~凡そ三千……王都には凡そ五千くらいね~日時は~…………大体三日って所かしら~?ほぼ同時刻に~多分着くんじゃないかな~?」

「同時刻……?」


この情報に俺は違和感が拭えなかった。

まず第一に、その三カ国は俺が回った国である事ーー。

つまりは転移魔方陣が使用可能と言う事だ。

このドワーフ国も、後数日もすれば完成となる。


第二は同時刻と言う事ーー。

当たり前の事だが、【腐死の森】から三カ国までの距離はそれぞれが違う。

これは狙ってやってるとしか考えられなかった。


俺達の戦力を分断させる為?

それにしてもあまりにお粗末に感じる。


第三に気になったのは魔物の数だ。

まるでこちらの戦力を見越して“態と”その数にしているとしか思えなかった。

もしかしたら、戦況に応じて魔物の増員も考えられるが、本気でそれぞれの国を滅ぼすつもりなら、最初から一気に魔物をけしかければ話は早いのだから……。


確かに【腐死の森】の魔物は強いが、エルフやドワーフや王都の皆の力を侮っているとしか思えない。

特に俺達が間に合えば、戦況は確実にこちらに傾くだろう。


待ってるのか?

何を?

俺達を?

だとしたら目的は?

これも帝王の仕業と言うなら、その意図はどこにある?


俺は暫く一人熟考する。

そんな俺に、皆は黙って見守ってくれていた。

そこで俺は、頭を切り替える事にした。

今は分からない事をあれこれ模索していてもしょうがない。


「三日か……よし!二日で魔方陣を完成させるぞ!」


本来なら最低でも後五日はかかると予想していたが、今は悠長に構えているべきでないと判断する。

寝る間を惜しめば可能だろう。


「ベリアル、お前にも手伝ってもらう」

「分かった」

「ミシディア、すぐに精霊を就かせれるように準備していてくれ」

「は、はい!!」


俺達はそれから慌ただしくも、転移魔方陣の完成を急がせた。






それから三日目の昼頃ーーー。


実は、魔方陣自体は宣言通りに二日で完成をさせていた。

けれども、すぐに俺達が旅立とうとするのを、サヴリナが強い口調で制止したのだ。

俺達の体を気遣っての事であると分かってはいたが、俺はそれに反発しようと口を開きかけて……止めた。


サヴリナが今にも泣き出しそうな顔に見えたからだ。


なので、俺はサヴリナの忠告を素直に聞き、一日ゆっくり休んで体力回復に励んだ。

お陰で今は頭も体もスッキリしている。


俺は皆を見渡す。


「ミシディア、カルミアはエルフ国へ。気を付けて行ってこいよ?」

「はい!」

「……うん」


これは昨日話し合って決めた事だった。

ミシディアとカルミアをエルフ国に選んだ理由は簡単だ。

エルフ国なら、二人の力を存分に出せると判断したからである。


「……カルミア、すまない。本当は君に戦わせたくないんだが……」


俺はカルミアの目線に合わせるように屈み、申し訳ない気持ちで一杯だった。

けれども、カルミアはそんな俺に軽く頭を振る。


「……戦うのは、本当は好きじゃない」

「………………」

「けど……初めてこの力が、誰かの助けになるなら…………嬉しいから」


そう言って、少しだけ微笑んだように見えた。

俺はそんなカルミアに、軽く頭を撫でてから、もう一度ミシディアを見る。


「ミシディア、エルフ国と…………カルミアを頼んだぞ」

「っ!!はい!!」


ミシディアは、力強く俺の願いに返事をする。

そして、ミシディアとカルミアは、一足先にエルフ国へと旅立って行った。


それから、ベリアルとアヤメとサヴリナの方に向き直る。


「三人とも、ここは任せたよ?」

「誰に言ってる?」

「大丈夫です!任せて下さい!!」

「安心して行ってらっしゃい~今度貴方が帰ってきたら~一杯甘やかしてあげるわ~」


ベリアルは不敵に笑い、アヤメは笑顔で頷く。

サヴリナに至っては、相変わらず妖艶に笑いながら人をからかってくる始末であった。


俺はそんなサヴリナに苦笑しつつも、彼女を胸に抱く。


「今度はすぐに会いに行くよ」

「……え~待ってるわ~」


俺は、王都の件が片付けば、次は魔都に行くつもりであった。

だから、また暫くはサヴリナとは逢えない。

それでも、今回はこれが最後の別れではないのだ。


俺はもう一度、サヴリナをキツく抱きしめてから、ゆっくりと体を離して軽く口付けをする。

そして、アルテミスと共に転移魔方陣の上に乗る。


「んじゃ、行ってくるわ」


俺は満面の笑顔で三人に手を振った。


魔方陣が眩く発光する。

笑顔とは裏腹に、俺は生徒達の安否を……善文達の無事を心から願わずにはいられなかった。


そうして、俺達はそれぞれの国で、それぞれの想いを胸に、戦いに赴くのであった。

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