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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第四章 王都と人魚姫をストーカーから守り抜け!!
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王都襲撃⑥

昨日は仕事で疲れてしまい、そのまま寝てしまったので投稿出来ませんでした。すみません。

なので、二本投稿させていただきます。

正門から少し離れて、先駆けをしている隊が居た。

陣頭指揮を執っているのはアリアだ。


「なるべく強い魔物はここで討ちます!S以上の魔物は最低10人で!無理と判断した場合は後ろに下がって別の者と交代!決して無理をしないように!!」


大分魔物の数は減ってきたように思われる。

けれども、傷の回復は出来ても体力の回復は難しい。

何とかポーションなどで無理矢理回復させているが、それがどこまで持つか分からない。


体力と言っても精神的なものの事だ。

ステータスにあるHP・MPはただの数値であり、表面上のものでしかない。

実際にHPが回復したからと言って、疲労まで回復するものではない。

そんなにご都合良くは出来ていないのだ。


皆がそれぞれ疲弊しきっていた。

このままではジリ貧となるのは目に見えている。

それでもまだ強い魔物は居る。

ここで出来る限り数を減らさなければ、今後の戦局にも大きく関わってくる。

故に皆が歯を食いしばり、気力だけで敵に挑んでいた。


アリアは、ざっと周囲を見渡し現状を把握する。


聖騎士四天王のアルフォートとシルバール、数名のSランクのギルメンがワイバーンと対峙していたが、問題は無さそうだ。


ケイトとジークフリートの二人と、騎士団員と魔導師兵団五名がマンティコアを相手にしていたが、ジークフリートが居るならば、こちらも特に心配する必要は無いだろうと判断する。


態々王都に残り、王都の為に戦ってくれている魔族十名とエルフ五名がギガサイクロプスと相対していた。

けれどその時、ギガサイクロプスの瞳が妖しく光る。


「あぶねぇー!!」


魔族の一人が叫び、エルフの女性を押し退ける。


カッーー。


瞬間、ギガサイクロプスの瞳から、高密度の光線が放たれる。


「ぐっ……」

「ッ?!」


魔族は苦痛に顔を歪めた。

右腕をギガサイクロプスの光線で焼き払われたのだ。


「大丈夫?!すまない!!あたしの不注意だ!!」


エルフの女性はすぐ様魔族に駆け寄り、泣きそうな顔で謝罪をした。


「だ、いじょうぶだ……俺は再生能力があるから心配すんじゃねぇーよ」

「で、でも!!」

「うっせーなっ!!」

「っ?!」

「あー……そのなんだ……仲間を守る為の名誉ある負傷ってやつだ。だから気にすんな」


思いの外、大声で怒鳴ってしまった事に、魔族の男はバツが悪そうに頭を掻く。

エルフの女性はそれ以上は何も言わずに、ただ一言「ありがとう」と呟いた。


アリアは、半人半蛇の女怪のラミアと剣を交えながらも、その光景を見ていた。


まだ皆お互いに(わだかま)りは残っているだろう。

それは、アリア達人族に対しては特に…………。


それでも、これは良い傾向なのでは?とアリアは思う。

皆がそれぞれの思いを抱えながらも、手を取り合い、同じ敵を討たんとしている。

これがもしかしたら、本当の意味での第一歩になるのではないかとアリアは思うのだった。


(願わくば、この先のより良い未来の足掛かりとなりますように……)


そんな事をアリアが考えていると、一人のギルメンが悲鳴のような叫びを上げた。


「ッ?!新手だっ!!!!」


その声に、全員が【腐死の森】の方角を見ると、更なる魔物達がこちらに進軍してくるのが目に止まった。


ざっと見ただけでも、二千以上の魔物がいる。

しかも、前列にはSランクの魔物が十数体と、SSランクの魔物が数体…………。

皆がその光景に戦慄する。


「……流石にこれは少し厳しいかもしれませんね」


アリアが呟く。

皆が既に限界であり、これ以上の戦闘は火を見るより明らかであった。

全員良く頑張ってくれたと思う。

だからアリアは、この場は一時撤退するべきか苦悩する。

【結界城壁】がいつまで持つかは分からないが、それでも多少は魔物達を食い止めてくれるのではと……。


【結界城壁】も万能ではないのだ。

あれだけの数の魔物に一斉に攻撃されれば、容易に破壊されるのは間違いなかった。

それでも、体勢を立て直すにはもうそれしか方法は無い。

それは決して最善策とは言えず、最悪民に被害が及ぶ危険性もある。


アリアは知恵を絞る。

けれども、何も良い策が思い浮かばず、苦渋の決断を下す為、アリアが撤退の二文字を口にしようとした瞬間…………。


「轟け〈雷帝〉」


その声は静かに……けれども、この戦場に響き渡る【希望】の声だった。


アリアは咄嗟に天を仰ぎ目を見開く。


「あ……ああ…………」


口を手で覆い、自然と涙が溢れてくる。

けれど、アリアはその涙を拭うつもりはなかった。


その視線の先には、長い角と大きな翼を広げた白馬に跨った、黒髪の少年の姿があった。


それは、皆が恋焦がれ待ちに待った、【救世主】その人の姿_______________。

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