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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第三章 新メンバーとドワーフ国で魔女との再会
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ガルダ と 強欲の竜

俺達はひたすら坑道を歩き続ける。

ガルダの身が心配だったので、俺は黙々と先に進んだ。

皆も特には何も言わずに着いてきてくれた。


程なくして、坑道の先が何やらキラキラと輝く。


「こ、ここです……」


道案内をしてくれた男が恐々としながらも、その先を指差し目的地だと伝える。


「これは……」


俺達の目の前には広い空間があった。

中央には、あの竜が鎮座していたが、今は瞑目し鳴りを潜めている。

俺達が、洞穴の入り口付近に近付いてるのには気付いている筈だ。

それでもその竜は微動だにしなかった。

おそらくは、ダンジョンボスと同じように、部屋の中に入らなければ攻撃してくる事はないのだろう。


その竜の大きさは、この広大な敷地の三分の二を占めてはいたが、それでも予想してたよりは少し小さめに見えた。

肌は土色で、岩肌のようにゴツゴツした体躯に、何やらハリネズミのような岩の棘があちこちから飛び出している。


その竜の後方の岩壁には、先程目にした煌めく物の正体らしき物が埋まっているが、もしかしたらあれが例の鉱石かもしれない。


そして、少し竜から視線を外した……端の方に目をやると…………。


「チッ……」


俺は無意識に舌打ちをしていた。


その視線の先には、ガルダがうつ伏せの状態で倒れ伏していた。

岩壁を見ると亀裂があり、おそらくは壁に叩き付けられたのだろう事は、容易に想像が出来る。

ガルダはうつ伏せのままピクリとも動かない。

ここからでは、生死を確認する事も不可能だ。


俺は一通り現状を視認してから、改めて竜に視線を戻し【鑑定眼】を発動した。


~~~~~~~~~~~~~~~

【ファーブニル】

ランクSS


財宝の守護竜。

または、強欲の竜とも呼ばれる。

自分の財宝を狙う者には、誰であ

ろうと容赦はしない。

皮膚はダイヤモンド並に強固。

岩の棘には石化の作用がある。


属性は〈土〉


~~~~~~~~~~~~~~~


「……やはりSSランクか」

「「「ッ?!」」」


俺がそう呟くと、後方に居た女性陣三人が息を呑む。


「この洞穴内部に入らなければ問題は無いと思うが、それでも油断せずに皆の事は頼んだよ?サヴリナ」

「え~。勿論よ~」


俺はサヴリナの言葉に頷き、すかさず皆に指示を出す。


「俺とベリアルがあの竜の注意を引きつける。その隙にアルテミスがガルダの回収を、アヤメとミシディアはガルダの回復を頼む」

「了解した」

「うむ。心得た」

「はい!」

「わ、分かりました!!」


それぞれが、俺の指示に答える。

アルテミスは既に〈人化〉をしていた。


「どうやらあの棘には【石化能力】があるみたいだが……まあ、それは問題無いだろう」


俺もベリアルもアルテミスも、状態異常は大して効かない。


「問題は硬度かな……?ダイヤモンド並の硬さらしいし……」


俺はそう言って、亜空間から雷切を取り出す。

雷切を鞘から抜刀してから、皆を一度見渡し…………


「……行くぞ」


その一言だけ呟くと、洞穴に一歩足を踏み入れる。


すると、先程まで静かに瞑目していたファーブニルの瞼がカッ!と開かれ…………瞬間、その瞳が妖しく光るのを俺は見逃さなかった。


「飛べっ!!」


俺の言葉に、二人は寸分違わぬ反応速度で跳躍する。


その直後、先程まで俺達が居た足元の地面から、鋭い針のようなものが突出する。

あのままあそこに居れば串刺しにされていた事は間違いない。


そして、俺は“視えて”いた…………俺達が着地する地点にも、魔力が集中していた事に…………。


俺はすぐ様〈風魔法〉で体を纏い、空中で停止する。

ベリアルもアルテミスもそれに気付き、俺同様に空中に浮いた。


アルテミスは足に風を纏わせ“立ち”、ベリアルは〈部分変身〉で背中に大きな蝙蝠のような羽根を作り上げて飛翔する。


俺は火炎放射のように〈火魔法〉をファーブニルの眼前目掛け放ち、ベリアルは脚に魔力を纏いファーブニルの顔面に一撃を食らわせ、顔の位置をズラせる。

その隙に、すかさずアルテミスがガルダの元に降りてガルダを抱えると、一時戦線を離脱して、アヤメ達の元にガルダを運んだ。


俺は横目でそれを確認すると、再びファーブニルに視線を戻す。

ファーブニルは全くの無傷だった。


だがこれで何の気兼ねもなく戦える。


「ガルダさんは無事です!!」


アヤメの叫び声を聞いて、俺は胸を撫で下ろす。


ファーブニルは、体中にある岩の棘を噴出して、俺達に狙いを定めるように一度空中で停止させ……一斉に放ってくる。

それを、アルテミスが風の膜を岩の棘の周囲に張り巡らし、棘を一箇所に留め覆う。


続いてベリアルが、〈闇魔法〉で形作った【闇の剣】を携えて、ファーブニルの後ろ左足に切り掛る。


「くっ……」


ベリアルが苦痛に声を発する。


ベリアルの【闇の剣】は、ファーブニルの足の中頃で止まってしまったのだ。


だが、次の瞬間俺達は目を瞠る事となる。


「おいおい……マジかよ……」


地面から次々と岩が剥がれ、ファーブニルの傷口を塞ぐ。


「再生能力があるなんて聞いてないんだが?」


〈土属性〉であるファーブニルにとって、ここはまさに打って付けの場所なのだろう。


グルァァァァァァ!!


ファーブニルが一声咆哮を上げると、先程体から放たれた棘の箇所から、再び岩の棘が突出する。


「これは一発で仕留めないと、堂々巡りになりそうだな」


そう言いながら、俺は雷切に〈風〉を纏わせる。

ベリアルも闇の剣に風を、アルテミスは風で十本の【細剣】を形作る。


〈土属性〉には〈風属性〉が最も有効的だ。


アルテミスが、十本の風の細剣でファーブニルの体を貫き、ベリアルが風と闇の剣で、今度こそファーブニルの両足を切り落とし、俺が頭と胴体を両断する。


そこからは目にも止まらぬ速さで、ファーブニルに再生する隙も与えず、ただひたすらに切り刻んで行く。


そうして、ファーブニルの【核】を目の端で捉えた俺は、迷う事無く【核】を風の雷切で一閃し破壊した。


ファーブニルは二度と再生する事無く、後には、辺りに岩の肉塊がゴロゴロと転がっているだけであった。


再生能力のある魔物などは、心臓部分である【核】がある限り何度でも復活してしまう。


欲深い者は、魔石に目が眩み手に入れようとする。

ランク【SS】の魔石なら高額な値段で売却出来るし、何より、最高の武具を作れる事は間違いない。


だが、そんな事は愚か者のする事だ。

必ず痛いしっぺ返しが来る事は目に見えている。

死んでは元も子も無いのだから……。


俺は地に足を着けると、即座にガルダの元に駆け寄る。

アヤメが無事だと言っていたが、心配なものは心配だ。


俺はガルダの傍で膝を折ると、首の横の頸動脈に二本の指を添えて脈を確認し、ガルダの口元に耳を近付けて呼吸音を確認する。

微弱ではあるが、脈拍も呼吸も正常に機能していた。


俺はそれに安堵し、漸くそこで肩の力を抜くのだった。


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