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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第三章 新メンバーとドワーフ国で魔女との再会
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伝承 と 教訓

「……を!ガルダの旦那を助けて下さいっ!!」

「ッ?!」


その叫びを聞いた俺は、レイバルトを押し退けて男に迫った。


「おい!どう言う事だ?!」

「あ、あんたは……?」

「俺の事は今はどうだっていい!ガルダに何かあったのか?!」


男は一瞬俺の剣幕にたじろぐが、レイバルトをチラリと見て、レイバルトが頷くのを確認してから、男がポツポツと経緯を話し始めた。


男が言うには、先日の地震で坑道のあちこちで落盤があったそうだ。

幸いな事に、それで大怪我を負った者は一人も居なかった。


だが、ある一本の坑道……今俺達の目の前の坑道に、突如新しい坑道を発見する。

見た所、随分古い坑道だったらしく、今迄は岩壁で隠されていて誰も気付かなかったらしい。


そこで、好奇心の強い若者達が、その坑道を探索しようと話し合っていた所を、偶々近くを通りかかったガルダが止めに入った。

けれど、若者達の探究心はその程度で収まらず、仕方無しにガルダもそれに同行する事となる。


そして、入り組んだ道を進みながら、三叉に別れた分岐点で三手に別れ、ガルダとこの男が共に奥に進む事となった。

難無く奥まで進む事ができ、その先の開けた場所に出ると…………。


「竜が……巨大な竜が…………」


男はその時の事を鮮明に思い出しているのか、更に体を震わせた。


「オイラ達が悪いんだ!!オイラ達がガルダの旦那の忠告を無視したから!!ガルダの旦那はオイラを逃がす為に一人で…………っ!!」


男はそこまで喚くと、ボロボロと泣き崩れる。


「私も先程報告を受けたばかりです。ガルダは念の為、他の者に伝令を頼んでいたようで、その話しを聞いてすぐ様こちらに駆け付けたのですが……」


レイバルトは苦渋に顔を歪ませる。


俺はそこまで話しを聞くと、即座に行動に移した。


「アルテミスとベリアルは俺と共に来い。アヤメ、ミシディア、カルミアはここで待機だ」

「?!」

「……え?」

「なっ!!」


ベリアルとアルテミスは頷いて了承するが、女性陣は納得行かないと言った感じだった。

ミシディアがすぐに食ってかかる。


「何故ですか?!」

「……恐らくは相手はSランク以上だからだ」

「「「ッ?!」」」


三人が驚愕に目を見開く。


俺はこの話を聞いた時に、昔聞かされたドワーフ国の伝承をすぐ様思い出していた。



昔々、腕の立つ若い青年がいました。

けれどその青年はとても強欲でした。

ある日青年は、とある鉱山で鉱石を見つけました。

それはとても美しく、青年が今迄見た事の無い輝きを放っていました。

青年は一目でその鉱石の虜になりました。

青年はその鉱石を、自分一人だけの物にしようとしました。

その鉱石を狙って来た者達を次々殺して…………

青年はいつしか、その醜く歪んだ心で竜へと変貌していきました。

それでもその青年竜は、尚も鉱石を守り続けました。

その存在を恐れたドワーフ達は、その青年竜を結界門で封じ込めました。

そして青年竜は長い長い眠りについたのでした。



その話をし終わると、辺りに沈黙が流れる。


この話は、ドワーフの者なら誰でも知っている事だった。

この無鉄砲な青年も、勿論知っている筈であったが、それでもたかが伝承と思い、全く信じて居なかったのであろう。


元々、身に余る欲は自らをも滅ぼす、と言う教訓の意味合いもあるので、気持ちは分からなくはない。


「で、ですけど!それでも私達を置いて行かれるのは納得出来ません!!私も行きます!!」


それでも尚も、自身の主張を繰り返すミシディア。

アヤメとカルミアも、文句こそ言わないが、ミシディアと同じ気持ちだと言うのが伝わってくる。


「駄目だ」


俺はそんな三人に、にべも無く言い放つ。


正直な話、冒険者ランクで言えば、俺が【SSS】、ベリアルとアルテミスは【SS】、アヤメが【A】、ミシディアとカルミアが【B】と言った感じだ。


けれども、魔物のランクと冒険者のランクが、必ずしも比例するものではない。


前回のニーズヘッグの件にしても、あれは、俺は運が良かっただけだと思ってる。

皆の力があったからこそ勝てたようなものだ。


今回も敵の能力が未知数な以上、あまり皆を危険な目に合わせたくないと思うのが本音だった。


俺達がそんなやり取りをしていると、この場には相応しくない程のんびりとした声が聞こえた。


「あら~。あまり過保護過ぎるのもどうかしら~?」

「女王?!」


サヴリナは、いつも通りの調子で笑みを浮かべていた。


「そんなんやり方じゃ~伸びしろを潰すだけよ~」

「サヴリナ……」

「学ぶには~見る事も必要よ~」


サヴリナは一度「うふふ」と笑った後、スっと真面目な顔になり、真剣な瞳を俺に向けて言った。


「この子達は~私が守るわ~」

「「「っ?!」」」


三人が一斉に、サヴリナに期待の眼差しを向ける。


本来ドワーフと言うものは、魔力や精霊力は持ち合わせてはいない。

代わりに、鍛冶に適した手先の器用さと、強固な体や体力が備わっている。


けれど、サヴリナには何故か魔力があり、当然魔法も使える。


しかも、冒険者ランクで言う所の【S】程には…………。


そのサヴリナが「守る」と言ったのだ。

なら俺はそれを信じよう……。


「はぁ~……分かったよ。それじゃ、皆で行こうか」


俺は苦笑しながらもそう決断した。

俺の言葉を聞いて、皆の顔にも漸く笑顔が戻る。


「おい!お前」

「え?」


俺は未だに地面に座り込んでいる男に声を掛けた。


「道案内をしてもらうぞ?後は…………俺達が何とかする」


そうして俺達は、全員で坑道に足を踏み入れたのだった。


ガルダ…………無事でいろよ…………。

主人公はこう言ってますが、ニーズヘッグの時も主人公多分勝てますよ?

なんせ無双ですから!!

無双………………………………なんて良い響きだろうか 笑


ただ、ニーズヘッグは新生種だけあって、情報があまりに少なかった為、必要以上に力を出し切ってしまっただけです。

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