変人 と 武器職人
本日は四本を一気に投稿しちゃいます。
その後は、かなり上機嫌となったサヴリナに、魔方陣の部屋まで案内されて、俺は仕事に取り掛かった。
ベリアルとアルテミスが呆れた目で見てきて、アヤメは苦笑していたが、見て見ぬ振りをする。
ミシディアとカルミアは言わずもがな。
その後は、何故か近衛隊隊長の【レイバルト】に感謝された。
理由を聞いてみると、ここ最近……と言うか、十年程前から、サヴリナはよく物思いに耽ったり、仕事も碌に手が付かなくなったりして困っていたそうだ。
それはつまり、俺が帰還してからと言う事で………………。
嬉しいと言うか何と言うか…………何とも複雑である。
それからは、夜には約束通りサヴリナと一夜を明かした。
サヴリナが幸せそうに笑うのを見て、俺の心に温かなものが広がるのを感じた。
そして翌日に、俺達はある人物に挨拶をする為に、そいつの住居兼工房に来ていた。
「ガルダー?いるかー?」
だが返事はない。
「お留守でしょうか?」
「んー……」
俺は少し考えてからお邪魔する事にした。
勝手知ったる仲なので、ガルダも文句は言うまい。
ドワーフには朝も夜も関係ない。
起きたら貴金属を打ち、眠くなったら寝る…………寝ても覚めても、頭の中は常に自分の作品の事ばかりである。
一概にそうとは言えないが、ここの住人のガルダと言う男は、少なくとも職人気質なのだ。
少々偏屈で変わり者ではあるが、自分の作品には、並々ならぬ拘りを持っている。
俺は、二階のガルダの自室へと足を向ける。
もしかしたら寝てるかと思ったのだが……。
「いない、か……」
どうやら、本当に留守のようである。
鉱石を採掘しに鉱山にでも行ったのだろうか?
俺はそう思い、取り敢えずは皆の元へと戻る事にした。
「ガルダさんと言うのは、セツナ様のご友人なんですよね?」
王城への道すがら、ミシディアがそんな事を聞いてきた。
「ん?そうだよ?」
「どんな方なんですか?」
「んー……そうだな~、一言で言うなら変人?」
「へ?」
本人が聞いたら確実に怒鳴られそうな事を、俺は平気で口にする。
「良い奴ではあるし、腕も確かなんだけどな…………人に対しての好き嫌いが激しすぎるんだよ。自分の作品には異常な執念に近いものがあって、気に入らない相手には武器は売らないし、作らないんだよな~」
「へー、そうなんですか。難しい方なんですね」
「うん。まあでも、一度でも懐に入れた奴には、とことん情をかける良い奴だよ?それに意外と面倒見はいいしな」
「なるほど」
俺達がそんな会話をしながら歩いていると、一本の坑道の入り口付近に人だかりが出来ているのに気付く。
「?何かあったのか?」
何の気なしに、俺はその人だかりに近付く。
人だかりの中央に見知った顔があり、俺はそいつに声を掛けた。
「レイバルト」
「あ……セツナ様」
振り向いたレイバルトの顔色は優れない。
やはり何かあったようだ。
すると、レイバルトの影に隠れるように蹲っていた一人のドワーフが、震える体を抱きながら、真っ青な顔で叫んだ。
「……を!ガルダの旦那を助けて下さいっ!!」
「ッ?!」




