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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第三章 新メンバーとドワーフ国で魔女との再会
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隷属魔法 と 名前

「さて、と……」


今の目の前には元奴隷の少女がいる。


この少女は……………………人間だ。


奴隷で厄介なのが、誰にでも……人間にもそれが適用されてしまうと言う事である。

今迄は魔族や獣人が主立って目立っていた為、あまり知られては居ないが……。


そして、現在奴隷制度廃止とはなっているが、それは所詮表面上の問題だ。


【隷属魔法】と言うのは、一般的には【特殊スキル】となる為、努力次第で手に入れる事も可能なのである。

或いは、元々の奴隷を他人から譲り受け、その相手に自分を契約者にするように書き換える事も……。


あの馬鹿がどちらであったにしろ、そう言った理由で奴隷を所有しててもおかしくはない。


俺はなるべく、少女に警戒心を抱かせないように優しく話しかけた。


「改めて、俺の名前はセツナ。君は、名前は……ある?」


少女は軽く首を降る。


「隣の子は君の友達?」


少女が頷く。


「そか。これからどうしたいか……何か希望はあるかな?」


少女は少し目を見開き、考えた素振りをしてから首を降った。


「俺達はね、ちょっと用があって、今からドワーフ国に行かなきゃならないんだ。もし良かったら一緒に来る?」

「な……んで…………」

「ん?」


少女はそこで初めて口を開いた。


「なん、で……そんな事聞く……んですか…………?」


少女は本当に分からないのか、ジッと俺を見てきた。

元とは言え、奴隷の自分に何故そんな事を聞くのか…………と。


「……それは、君が一人の……普通の女の子だから」

「ッ?!」


少女の大きな瞳が更に見開かれる。


「さっきも言ったけど、俺達はその子に呼ばれてきた」


俺はそう言って、少女の隣の妖精を指差す。

少女も妖精も驚いた顔をした。


「本来、その子の力では【念話】どころか、普通に言葉を発する事も出来ない筈。それでもその子は、必死に助けを求めてきた。それは単に…………君を助けたい一心でだよ?」

「!!」


少女が勢い良く妖精を振り向く。


「その子がそこまでするのは、君の事が大好きだからだ。妖精は、人を見る目が誰よりも越えてるからね。それだけで、君の心が……魂が……とても澄んでるのだと言う事が良くわかる」


俺は一言一言、少女の心に語りかけるように話す。


【精霊力】を持ち合わせている者は、精霊や妖精に好意を持たれる。


けれど、精霊達曰く、その力には【色】のようなものがあり、それは千差万別だそうだ。

その色は、精霊達にもよってそれぞれ輝きが違って見えるらしい。

精霊達の、人によって【相性】が決まるのは、まさにそこにある。


自分達の好みの色であるなら力を貸すし、そうでないなら力を貸さない……ただそれだけである。

故に、この妖精にとって、少女の【色の輝き】は、それこそ自分好みなのだろう。


精霊達は、とても純粋で一途だ。

一度好意を持った相手には、とことん尽くす。


例えそれが人道を外れた行為であったとしても…………。


少女は、ただ黙って俺の言葉に耳を傾けていた。

だから俺は、少女に手を差し伸べる。


「一緒に行こう。君のやりたい事が見つかるまで俺が傍に居るよ」


少女は躊躇いながらも、おずおずと俺の差し伸べた手を取るのだった。






「う~ん…………」


俺は悩んでいた。

これでもかってくらい悩んでいた。


「はぁ~……いつまで考えてるつもりだ?」


ベリアルが呆れたように言ってくる。


「そんな事言ってもな……名前って意外と大事なものなんだぞ?」


そう、俺は名前を悩んでいるのだ。


アヤメが少女に、自分の名前は俺に付けてもらったのだと嬉しそうに話した所、躊躇いながらも、少女が初めて俺にお願いをしてきたのだ。

そんなお願いをされて断れる筈もない。


「ふふふ。私の時も、必死に考えて下さいましたものね」


そう言って笑うアヤメを、俺はジッと見た。


「えっと……何でしょう?」


アヤメが少し頬を赤らめる。

そんなアヤメを見て、俺はポンと手を合わせて言った。


「…………よし!決めた!君の名は【カルミア】だ!!」

「カル……ミア?」

「そう。意味は、俺の世界の花言葉で【大きな希望】、アヤメの名前が【希望】って意味だから、その妹っつー事で!!」

「い……もうと?私がアヤメお姉ちゃんの……?」

「まあ!素敵です!!流石はセツナ様です!!これから宜しくお願いしますね?カルミア」


カルミアは、何度も自分の名前を口にして、無表情ではあったがどこか嬉しそうに見えた。


これで少女の名前も決まって、俺もやっと肩の荷がおりたと言うものだ。

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