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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第三章 新メンバーとドワーフ国で魔女との再会
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血の匂い と SOS

短いので、二話連続投稿します。

エルフ国が自然豊かな森とするならば、ドワーフ国はゴツゴツした岩ばかりの山だ。


と言うわけで、俺達は今岩山を走行中である。


右側は切りだった崖になっており、馬車がギリギリ通れる道を、ガタゴト揺らしながら進んでいた。

ミシディアが時折、崖の方をチラリと見ては「ひっ!」と小さく悲鳴をあげている。


そんなに怖いなら見なきゃいいのに……。


そんな時、アヤメが鼻を引くつかせて眉間に皺を寄せる。


「ん?どうした?」

「…………血の匂いがします」

「……そうか」


俺はそれだけを答えた。


魔物か盗賊かは知らないが、近くで人が殺されているのかもしれない。


俺は聖人ではない。


目の前でそう言う事が行われたなら助けに入るかもしれないが、どこかも分からない場所で、態々自分から首を突っ込むつもりはない。


アヤメは狼の血が濃い故に、鼻が良く利く為気付いたに過ぎない。


ミシディアがチラチラと俺を見てきているのには気付いてる。


先日勝手な行動をして、魔物を多く引き連れて来た事があった。

その時にアヤメに酷く怒られてしまい、アヤメに言われたのだ。


「ここでは、セツナ様の言葉は絶対です。セツナ様の言う事は必ず守って下さい」


俺としてはそれもどうなんだ?と思う所であるが……。


そんな事があったので、ミシディアは仮に助けに行きたいと思っていても、俺の指示が出るまでは動くつもりはないのだろう。


さて、どうしたものか……。


俺が寝転びながらそんな事を考えていると、不意に“何か”が耳に届く。


〝た…………け………………て……〟


「ん?」

「これは……?」

「?どうかしましたか?」


俺達の反応を不審に思ったアヤメが聞いてくる。


〝た……す…………て………………〟


おそらく、俺とミシディアとアルテミス以外は聞こえていないのだろう。


何故ならこれは……。


『ふむ。これは妖精だな。無差別に【念話】を送っておるのだろう』


やはりそうか…………。


精霊や妖精の声を聞き、見る事が出来るのは【精霊力】の適正があるものだけだ。


精霊なら、意図的に適正の無いものにも見せる事や会話をする事は可能だが、基本精霊や妖精を普通の者が見る事はない。


「アヤメ。血の匂いがどこからするか分かるか?」

「……あちらの方角です」


俺はアヤメが指差した方を見遣る。

ちょうどその時、前方の崖の下にある林の方角から、狼煙のようなものが上がっているのを目に止める。


「しゃーない。行ってみますか」


俺はそう言うが早いか、馬車から飛び降りて〈風魔法〉を体の回りに纏わせて宙に浮く。


「お前達はのんびり来ればいいよ」

「……え?」


ミシディアだけは驚いた声を出す。


俺はそのまま、狼煙のある方角へと飛び去って行った。

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