逆ドッキリ? と 可愛い恋人達
本日は2話投稿です。
「そ、そう言えばさ……セツナ……一つ聞きたいんだが……」
王城に戻る道すがら、善文が何やら言いずらそうにそんな事を言ってきた。
「ん?何?」
「え、え~とだな……お前の事……その、後一人に話しても問題ないか……?」
善文は頭を掻きながら、俺とは反対の方向を見ながら話している。
俺はその善文の挙動不審にピンと来て、意地悪くニヤリと笑って聞いてみた。
「……女か?」
「んな?!」
善文がわかり易くもわたわたと狼狽している。
「ち、ちが……!!」
「そうか……違うのか。なら話すなよ」
「違くないっ!!……あ」
俺は更に笑みを深めた。
墓穴を掘った事に漸く気付いた善文は頭を抱え、けれど、次に反撃に出てきた。
「……お前、自分の事には鈍感なくせに、何で他人の事にはそんな鋭いんだ?」
「うぐっ」
半眼で俺を非難するように見てきた善文の言葉に、俺は変な声を出してしまった。
それに反応したのは他三人もだった。
「そうよね~。私があれだけアプローチ掛けてたのに全く気づかなかったし」
「わ、私はただ見つめてただけなので、気付かれなくてもおかしくはないかと……」
「俺でも、流石に雛形先輩の気持ちは気づいてたくらいだしな」
ぐさっー。
ぐさっーー。
ぐさっーーー。
俺はトリプルカウンターを意外な所から食らってしまい、一気にライフポイントはゼロまで下がってしまった。
そんな俺を見て、善文はニヤニヤ笑っている。
俺は善文を睨みながら、けれど、全て事実なので文句も言えず押し黙る。
「はぁ~」
俺は溜め息を吐くしかなかった。
ガサガサーー。
「「「「ッ?!」」」」
俺達がそんなやり取りをしていると、近くの繁みが揺れた。
皆は一斉に身構える。
繁みの方をみると、幾つもの光る眼光が、俺達を睥睨していた。
「あー……ナイトウルフか」
俺はそれだけ言うと、軽く片手を振って踵を返した。
「ん?何やってんの?皆行くよ?」
「「「「え?」」」」
皆は状況が理解出来ないのか、キョトンとしている。
もうその繁みには、光る眼光は一つも存在していなかった。
皆はただただ呆れるばかりである。
俺は皆を無事に王城まで送り届けてから、屋敷に戻って来た。
日付けはとっくに過ぎていたので、アヤメもベリアルももう寝ていると思っていたが、一人はそうではなかったようだ。
「お帰りなさいませ。セツナ様」
「ん。ただ今、アヤメ」
アヤメだけは、俺が帰ってくるまで起きててくれたみたいで、俺を笑顔で出迎えてくれた。
「寝ててくれても良かったのに」
俺は苦笑しながらアヤメに言ったが、頑固として首を振られてしまう。
「そう言うわけには参りません。お風呂に入られますか?」
「んー……そうだな。少し外行ってたから、風呂でも入るかな」
俺はそう言うが早いか、風呂場に直行する事にした。
「ふぅ~」
やはり、一日の疲れを癒すのは風呂である。
これは日本人の性と言うものだろう。
俺は肩まで湯船に浸かりながらまったりしていた。
すると、ふと脱衣所の方に誰かの気配がした。
誰か……と言うか、この場合一人しか居ないんだが……。
そう思っていると、案の定アヤメの声が扉の方から聞こえた。
「し、失礼します」
少し緊張しながらも、アヤメが扉を開ける。
バスタオルなどは…………一切巻いていない。
真っ新な生まれたままの格好である。
「………………」
俺は、間抜けにもポカンと口を開けたまま、アヤメを凝視していた。
アヤメとこう言う関係になってから、流石に一度も一緒に風呂に入った事はないのだ。
アヤメの突然の行動に戸惑ってしまうのは仕方ない。
アヤメは俺の視線に、恥ずかしそうに俯くが、そのまま風呂場に入って来て、かけ湯をかけてから、俺の隣の湯船に入ってきた。
「……え~と?アヤメさん?」
俺はそこで漸く我に帰り、アヤメに声を掛ける。
少し恥ずかしがりながらも、アヤメは俺を上目遣いで見て口を開いた。
ごくりっーー。
「そ、その……エルフ国では、セツナ様はずっとベルナデッタ様とご一緒でしたし…………」
あぁ……そう言う事か…………。
俺は、アヤメのこの突然な行動に納得したが、それと同時に、ムクムクと悪戯心が湧いてきた。
「でもな~……先日触れようとしたら、アヤメに凄い勢いで怒られたし」
「そ、それは……!!」
アヤメは弁明しようと口を開けたが、すぐに閉ざしてシュンとしてしまう。
狼耳は垂れ下がり、瞳は涙で潤んでいた。
本当にカワイイな……。
俺は、そろそろ苛めるのは止めにして、アヤメの狼耳に口を近付けて囁いた。
「……勿論、サービスしてくれるんだよね?」
「ッ?!」
一度肩をビクッと震わせてから、アヤメは艶のある声で答えた。
「はい……セツナ様が望むならどんな事でも……」
翌日、俺達は再び【転移の間】に来ていた。
「たった一日だったけど、結構充実してたな」
俺は感慨に耽る。
とは言うものの、まだまだやる事は山のようにある。
「お気を付けて行ってきてくださいね。皆さん」
アリアが俺達に見送りの言葉を掛けてくれる。
「ん。またすぐに帰ってくるよ」
「はい。お待ちしております」
そうして、俺達は【転移魔方陣】の上に立つ。
「それじゃ、行ってきます」
魔方陣が光だし、俺達は王城を後にするのだった。
エルフ国に戻った俺達の前にはベルナデッタが居た。
「え?何でいるんだ……?」
まるで、恰もこの時間に戻ってくるのが分かってたように、ベルナデッタは俺達を出迎えたのだった。
『え、えっと……それは……』
「そんなの決まってるじゃないですか。セツナ様」
それに答えたのはアヤメだった。
「セツナ様がお帰りになられるのを、ずっと待ってたんですよね?ベルナデッタ様?」
それが当然と言わんばかりに、アヤメが堂々と胸を張って言う。
アヤメの言葉に、俺がベルナデッタの方を見ると、顔を耳まで真っ赤にして俯いていた。
どうやら、アヤメの言った事は的を得ていたらしい。
俺は苦笑しながらも、ベルナデッタに向かって言った。
「ただ今。ベルナデッタ」
俺達は明日エルフ国を発つ。
今日の予定は、カーゼノスとドリュアスと、お茶でもしながらゆっくりと話しをする事。
それから………………一杯ベルナデッタを甘やかす事に決まった。
次話は、アヤメの過去編となります。




