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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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逆ドッキリ? と 可愛い恋人達

本日は2話投稿です。

「そ、そう言えばさ……セツナ……一つ聞きたいんだが……」


王城に戻る道すがら、善文が何やら言いずらそうにそんな事を言ってきた。


「ん?何?」

「え、え~とだな……お前の事……その、後一人に話しても問題ないか……?」


善文は頭を掻きながら、俺とは反対の方向を見ながら話している。

俺はその善文の挙動不審にピンと来て、意地悪くニヤリと笑って聞いてみた。


「……女か?」

「んな?!」


善文がわかり易くもわたわたと狼狽している。


「ち、ちが……!!」

「そうか……違うのか。なら話すなよ」

「違くないっ!!……あ」


俺は更に笑みを深めた。

墓穴を掘った事に漸く気付いた善文は頭を抱え、けれど、次に反撃に出てきた。


「……お前、自分の事には鈍感なくせに、何で他人の事にはそんな鋭いんだ?」

「うぐっ」


半眼で俺を非難するように見てきた善文の言葉に、俺は変な声を出してしまった。

それに反応したのは他三人もだった。


「そうよね~。私があれだけアプローチ掛けてたのに全く気づかなかったし」

「わ、私はただ見つめてただけなので、気付かれなくてもおかしくはないかと……」

「俺でも、流石に雛形先輩の気持ちは気づいてたくらいだしな」


ぐさっー。

ぐさっーー。

ぐさっーーー。


俺はトリプルカウンターを意外な所から食らってしまい、一気にライフポイントはゼロまで下がってしまった。

そんな俺を見て、善文はニヤニヤ笑っている。

俺は善文を睨みながら、けれど、全て事実なので文句も言えず押し黙る。


「はぁ~」


俺は溜め息を吐くしかなかった。


ガサガサーー。


「「「「ッ?!」」」」


俺達がそんなやり取りをしていると、近くの繁みが揺れた。


皆は一斉に身構える。


繁みの方をみると、幾つもの光る眼光が、俺達を睥睨していた。


「あー……ナイトウルフか」


俺はそれだけ言うと、軽く片手を振って踵を返した。


「ん?何やってんの?皆行くよ?」

「「「「え?」」」」


皆は状況が理解出来ないのか、キョトンとしている。


もうその繁みには、光る眼光は一つも存在していなかった。

皆はただただ呆れるばかりである。





俺は皆を無事に王城まで送り届けてから、屋敷に戻って来た。


日付けはとっくに過ぎていたので、アヤメもベリアルももう寝ていると思っていたが、一人はそうではなかったようだ。


「お帰りなさいませ。セツナ様」

「ん。ただ今、アヤメ」


アヤメだけは、俺が帰ってくるまで起きててくれたみたいで、俺を笑顔で出迎えてくれた。


「寝ててくれても良かったのに」


俺は苦笑しながらアヤメに言ったが、頑固として首を振られてしまう。


「そう言うわけには参りません。お風呂に入られますか?」

「んー……そうだな。少し外行ってたから、風呂でも入るかな」


俺はそう言うが早いか、風呂場に直行する事にした。


「ふぅ~」


やはり、一日の疲れを癒すのは風呂である。

これは日本人の(さが)と言うものだろう。


俺は肩まで湯船に浸かりながらまったりしていた。


すると、ふと脱衣所の方に誰かの気配がした。

誰か……と言うか、この場合一人しか居ないんだが……。


そう思っていると、案の定アヤメの声が扉の方から聞こえた。


「し、失礼します」


少し緊張しながらも、アヤメが扉を開ける。

バスタオルなどは…………一切巻いていない。

真っ新な生まれたままの格好である。


「………………」


俺は、間抜けにもポカンと口を開けたまま、アヤメを凝視していた。


アヤメとこう言う関係になってから、流石に一度も一緒に風呂に入った事はないのだ。

アヤメの突然の行動に戸惑ってしまうのは仕方ない。

アヤメは俺の視線に、恥ずかしそうに俯くが、そのまま風呂場に入って来て、かけ湯をかけてから、俺の隣の湯船に入ってきた。


「……え~と?アヤメさん?」


俺はそこで漸く我に帰り、アヤメに声を掛ける。

少し恥ずかしがりながらも、アヤメは俺を上目遣いで見て口を開いた。


ごくりっーー。


「そ、その……エルフ国では、セツナ様はずっとベルナデッタ様とご一緒でしたし…………」


あぁ……そう言う事か…………。


俺は、アヤメのこの突然な行動に納得したが、それと同時に、ムクムクと悪戯心が湧いてきた。


「でもな~……先日触れようとしたら、アヤメに凄い勢いで怒られたし」

「そ、それは……!!」


アヤメは弁明しようと口を開けたが、すぐに閉ざしてシュンとしてしまう。

狼耳は垂れ下がり、瞳は涙で潤んでいた。


本当にカワイイな……。


俺は、そろそろ苛めるのは止めにして、アヤメの狼耳に口を近付けて囁いた。


「……勿論、サービスしてくれるんだよね?」

「ッ?!」


一度肩をビクッと震わせてから、アヤメは艶のある声で答えた。


「はい……セツナ様が望むならどんな事でも……」






翌日、俺達は再び【転移の間】に来ていた。


「たった一日だったけど、結構充実してたな」


俺は感慨に耽る。

とは言うものの、まだまだやる事は山のようにある。


「お気を付けて行ってきてくださいね。皆さん」


アリアが俺達に見送りの言葉を掛けてくれる。


「ん。またすぐに帰ってくるよ」

「はい。お待ちしております」


そうして、俺達は【転移魔方陣】の上に立つ。


「それじゃ、行ってきます」


魔方陣が光だし、俺達は王城を後にするのだった。


エルフ国に戻った俺達の前にはベルナデッタが居た。


「え?何でいるんだ……?」


まるで、恰もこの時間に戻ってくるのが分かってたように、ベルナデッタは俺達を出迎えたのだった。


『え、えっと……それは……』

「そんなの決まってるじゃないですか。セツナ様」


それに答えたのはアヤメだった。


「セツナ様がお帰りになられるのを、ずっと待ってたんですよね?ベルナデッタ様?」


それが当然と言わんばかりに、アヤメが堂々と胸を張って言う。

アヤメの言葉に、俺がベルナデッタの方を見ると、顔を耳まで真っ赤にして俯いていた。

どうやら、アヤメの言った事は的を得ていたらしい。

俺は苦笑しながらも、ベルナデッタに向かって言った。


「ただ今。ベルナデッタ」


俺達は明日エルフ国を発つ。


今日の予定は、カーゼノスとドリュアスと、お茶でもしながらゆっくりと話しをする事。


それから………………一杯ベルナデッタを甘やかす事に決まった。

次話は、アヤメの過去編となります。

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