報告 と ドッキリ
眩い光が収束していくと、そこは懐かしの王城であった。
どうやら成功である。
元々失敗してるつもりは無かったが、それでもやはり、自分自身で確かめて見ない事には何とも言えない。
ここには今、俺とアヤメとベリアルだけだ。
今回はアルテミスは居ない。
幻獣世界の事もあるし、俺がもう少しエルフ国に居る事を勧めたからだ。
最初は渋っていたアルテミスだったが、やはり懐かしい気持ちは拭えなかったのだろう。
俺に礼を言って、幻獣世界を満喫してくると言っていた。
「それじゃ、まずはアレク王に帰還の挨拶と報告をしに行くかな?」
そう言って、俺達は【転移の間】を後にしたのだったーーー。
俺達は執務室をノックし、入室の許可を貰ってから部屋に入った。
「うむ。戻ったか。無事で何よりだ」
「お、お帰りなさい。皆様」
そこに居たのは、アレク王だけでなくクルトも居た。
二人は俺達を快く迎えてくれる。
「戻ったと言う事は、【転移魔方陣】は無事機能したと言う事だな」
「ああ、何とかな」
それを聞いたアレク王は、安心したと言うように一つ頷いた。
それから、俺達が居ない間に何か変わった事は無いかと聞いてみると、案の定、地震がこの王都まで響いたのだそうだ。
けれど、特には心配していなかったらしい。
何故なら、俺がエルフ国に居るのが分かっていたかららしいのだが……。
え?俺の立ち位置ってマジでどうなってんの…………?
信頼してくれるのは嬉しいが、俺にだって出来る事と出来ない事がある……と思う。
いや、思いたい………………。
あれ?俺も何か自信が無くなってきた…………。
ま、まぁいいや。
取り敢えずは、エルフ国の出来事を、出来るだけ詳細に報告する。
クルト王子は瞳を輝かせて俺を見てきたが、アレク王は眉間に皺を寄せて唸っていた。
「うーむ。新しい魔物……いや幻獣?か。突然変異した魔物はおったが、新生種なんぞは、ワシが知る限りでは初耳であるな。それも帝王の仕業か?」
「それはまだ分からない……けど、可能性はあると思う」
「そうか…………」
俺達は沈黙した。
正直な所、今の段階では何とも言えない。
怪しいからと言って、全てを帝王に擦り付けるのはどうかとも思う。
まだ、証拠が何も出ていないのだから……。
そんな事を俺が考えていると、クルト王子が、チラチラとベリアル達を見ているのに気付いた。
「ん?どうした?クルト」
「え?いえ……このお二方は、セツナ様のお仲間何ですよね?」
「うん?あぁ、そうか。まだ紹介してなかったな。こっちがアヤメで、こっちがベリアルだ。もう一人居るが、そっちはまだエルフ国に居るから今度紹介するよ」
俺は二人をクルトに紹介するが、アヤメは微笑み、ベリアルは無関心を決め込んでいた。
少しは愛想笑いくらいしろよな。
まぁ、ベリアルだし仕方ないか……。
クルトは、一瞬アヤメの微笑みに見蕩れていたが、すぐに気を取り直して自己紹介をする。
「改めて、初めまして。クルトと申します。どうぞ宜しく」
そう言って、美少年スマイルを炸裂させる。
これはモテそうだな……。
などと、どうでも良い事を考えてしまった。
それから、クルトは二人に色々と質問をしていた。
ベリアルも無愛想ではあったが、クルトを邪険に扱う事はせず、質問にもちゃんと答えてやっていた。
何か主に俺の話ばかりしてる気がするが……………………うん!気のせいだろう!
そこで、ふと俺はある事が気になったので、こっそりアレク王に聞いてみた。
「……なあ。アレク王」
「うん?何じゃ?」
「もしかして……クルトってベリアルの正体知らないのか?」
そう、クルトはあまりに自然体にベリアルに話し掛けていたのだ。
別に知ってても気にしない性格なら良いが、何となく、クルトはベリアルの正体を知ったら平静でいられない気がする。
それに、以前話した時に『魔王を討伐』と言ってた事を思い出す。
すると、アレク王は案の定、少し困り顔をしながら答えた。
「う、うむ。実はな……。言おうかどうか迷ってはいたのだが、クルトの中ではもう【魔王は討伐された】ものとなっていてな……中々言う機会もなかったのじゃ」
「やっぱり…………これは話しておくべきかな……?」
「うーむ。そうじゃな……」
俺達は今度は別の事に悩むハメになった。
別に知らないなら知らないで構わないと思うのだが、ひょんな所から情報が漏れる事は在りうる。
第三者から、ある事ない事を話されて、間違った情報が耳に入るとも限らない。
…………例えば俺みたいな。
それを考えると、今この場で、本人達の口から真実を聞かされた方が良いのでは?と思う。
すると、俺達の様子がおかしい事に気付いたのか、クルトが小首を傾げて訊ねてきた。
「どうかしました?」
俺は意を決して、クルトにベリアルの事を打ち明けた。
ベリアルは特に何も言ってこなかった。
そしてクルトはと言うと………………案の定目を白黒させて顔面蒼白となり、あわや失神寸前であった。
そして、後の事はアレク王に任せる事にして、俺達は次にアリアに会いに言った。
「お帰りなさいませ!皆さん」
「ただ今。アリア」
アリアは満面の笑みで俺達を出迎えてくれた。
「アリアにお土産があるんだ」
「え?」
俺はそう言って【亜空間】からハート型のネックレスを取り出す。
「これは、エルフ国にしかないクリスタルで、【精霊力】を上げてくれる効力があるんだ。きっとアリアの役に立つと思って」
「因みに、それはセツナ様が自ら発掘して加工した物なんですよ?」
「ちょ!!アヤメ?!」
アヤメが一言余計な事を付け足してしまったので、俺は大慌てでアヤメの口を塞ごうとするが、時すでに遅し。
アリアは瞳を大きく見開いて、そこには見る見る涙が溜まっていった。
「あり……がと、う……ございます」
それだけを、やっとの思いで口にした。
俺は、何とも気恥ずかしく頭を掻く。
それから、アレク王にも話したエルフ国での事を、アリアにも話して聞かせた。
アリアは驚いたり笑ったりと、楽しそうに話を聞いてくれる。
話をする前に、俺はアリアに一つのお願いをしていた。
それは……。
暫く四人で紅茶を飲みながら談笑していると、控えめなノックが部屋に響いた。
「どうぞ」
アリアが入室の許可を出す。
「失礼します。皆様をお連れしました」
メイドの人が、著しく頭を下げて、後方に待機していた人物達を部屋に招き入れる。
「よ。皆久し振り」
俺はその人物達に軽いノリで挨拶をした。
中に入ってきた四人の人物は、俺の姿を目で捉えると、驚愕の顔で一斉に叫んだ。
「「「「刹那(くん・先輩)?!」」」」
俺のドッキリ大作戦は成功である。
四人の顔を見て、俺は意地悪くニヤリと笑って見せた。
そこに現れたのは、善文と七鈴菜さんと佐々木さん、それに龍の四人であった_______________。




