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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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報告 と ドッキリ

眩い光が収束していくと、そこは懐かしの王城であった。


どうやら成功である。


元々失敗してるつもりは無かったが、それでもやはり、自分自身で確かめて見ない事には何とも言えない。


ここには今、俺とアヤメとベリアルだけだ。


今回はアルテミスは居ない。

幻獣世界の事もあるし、俺がもう少しエルフ国に居る事を勧めたからだ。


最初は渋っていたアルテミスだったが、やはり懐かしい気持ちは拭えなかったのだろう。

俺に礼を言って、幻獣世界を満喫してくると言っていた。


「それじゃ、まずはアレク王に帰還の挨拶と報告をしに行くかな?」


そう言って、俺達は【転移の間】を後にしたのだったーーー。





俺達は執務室をノックし、入室の許可を貰ってから部屋に入った。


「うむ。戻ったか。無事で何よりだ」

「お、お帰りなさい。皆様」


そこに居たのは、アレク王だけでなくクルトも居た。

二人は俺達を快く迎えてくれる。


「戻ったと言う事は、【転移魔方陣】は無事機能したと言う事だな」

「ああ、何とかな」


それを聞いたアレク王は、安心したと言うように一つ頷いた。


それから、俺達が居ない間に何か変わった事は無いかと聞いてみると、案の定、地震がこの王都まで響いたのだそうだ。

けれど、特には心配していなかったらしい。

何故なら、俺がエルフ国に居るのが分かっていたかららしいのだが……。


え?俺の立ち位置ってマジでどうなってんの…………?

信頼してくれるのは嬉しいが、俺にだって出来る事と出来ない事がある……と思う。

いや、思いたい………………。

あれ?俺も何か自信が無くなってきた…………。

ま、まぁいいや。


取り敢えずは、エルフ国の出来事を、出来るだけ詳細に報告する。

クルト王子は瞳を輝かせて俺を見てきたが、アレク王は眉間に皺を寄せて唸っていた。


「うーむ。新しい魔物……いや幻獣?か。突然変異した魔物はおったが、新生種なんぞは、ワシが知る限りでは初耳であるな。それも帝王の仕業か?」

「それはまだ分からない……けど、可能性はあると思う」

「そうか…………」


俺達は沈黙した。


正直な所、今の段階では何とも言えない。

怪しいからと言って、全てを帝王に擦り付けるのはどうかとも思う。


まだ、証拠が何も出ていないのだから……。


そんな事を俺が考えていると、クルト王子が、チラチラとベリアル達を見ているのに気付いた。


「ん?どうした?クルト」

「え?いえ……このお二方は、セツナ様のお仲間何ですよね?」

「うん?あぁ、そうか。まだ紹介してなかったな。こっちがアヤメで、こっちがベリアルだ。もう一人居るが、そっちはまだエルフ国に居るから今度紹介するよ」


俺は二人をクルトに紹介するが、アヤメは微笑み、ベリアルは無関心を決め込んでいた。


少しは愛想笑いくらいしろよな。

まぁ、ベリアルだし仕方ないか……。


クルトは、一瞬アヤメの微笑みに見蕩れていたが、すぐに気を取り直して自己紹介をする。


「改めて、初めまして。クルトと申します。どうぞ宜しく」


そう言って、美少年スマイルを炸裂させる。


これはモテそうだな……。


などと、どうでも良い事を考えてしまった。


それから、クルトは二人に色々と質問をしていた。

ベリアルも無愛想ではあったが、クルトを邪険に扱う事はせず、質問にもちゃんと答えてやっていた。


何か主に俺の話ばかりしてる気がするが……………………うん!気のせいだろう!


そこで、ふと俺はある事が気になったので、こっそりアレク王に聞いてみた。


「……なあ。アレク王」

「うん?何じゃ?」

「もしかして……クルトってベリアルの正体知らないのか?」


そう、クルトはあまりに自然体にベリアルに話し掛けていたのだ。


別に知ってても気にしない性格なら良いが、何となく、クルトはベリアルの正体を知ったら平静でいられない気がする。

それに、以前話した時に『魔王を討伐』と言ってた事を思い出す。


すると、アレク王は案の定、少し困り顔をしながら答えた。


「う、うむ。実はな……。言おうかどうか迷ってはいたのだが、クルトの中ではもう【魔王は討伐された】ものとなっていてな……中々言う機会もなかったのじゃ」

「やっぱり…………これは話しておくべきかな……?」

「うーむ。そうじゃな……」


俺達は今度は別の事に悩むハメになった。


別に知らないなら知らないで構わないと思うのだが、ひょんな所から情報が漏れる事は在りうる。

第三者から、ある事ない事を話されて、間違った情報が耳に入るとも限らない。


…………例えば俺みたいな。


それを考えると、今この場で、本人達の口から真実を聞かされた方が良いのでは?と思う。


すると、俺達の様子がおかしい事に気付いたのか、クルトが小首を傾げて訊ねてきた。


「どうかしました?」


俺は意を決して、クルトにベリアルの事を打ち明けた。


ベリアルは特に何も言ってこなかった。


そしてクルトはと言うと………………案の定目を白黒させて顔面蒼白となり、あわや失神寸前であった。


そして、後の事はアレク王に任せる事にして、俺達は次にアリアに会いに言った。





「お帰りなさいませ!皆さん」

「ただ今。アリア」


アリアは満面の笑みで俺達を出迎えてくれた。


「アリアにお土産があるんだ」

「え?」


俺はそう言って【亜空間】からハート型のネックレスを取り出す。


「これは、エルフ国にしかないクリスタルで、【精霊力】を上げてくれる効力があるんだ。きっとアリアの役に立つと思って」

「因みに、それはセツナ様が自ら発掘して加工した物なんですよ?」

「ちょ!!アヤメ?!」


アヤメが一言余計な事を付け足してしまったので、俺は大慌てでアヤメの口を塞ごうとするが、時すでに遅し。

アリアは瞳を大きく見開いて、そこには見る見る涙が溜まっていった。


「あり……がと、う……ございます」


それだけを、やっとの思いで口にした。


俺は、何とも気恥ずかしく頭を掻く。


それから、アレク王にも話したエルフ国での事を、アリアにも話して聞かせた。

アリアは驚いたり笑ったりと、楽しそうに話を聞いてくれる。


話をする前に、俺はアリアに一つのお願いをしていた。


それは……。


暫く四人で紅茶を飲みながら談笑していると、控えめなノックが部屋に響いた。


「どうぞ」


アリアが入室の許可を出す。


「失礼します。皆様をお連れしました」


メイドの人が、著しく頭を下げて、後方に待機していた人物達を部屋に招き入れる。


「よ。皆久し振り」


俺はその人物達に軽いノリで挨拶をした。


中に入ってきた四人の人物は、俺の姿を目で捉えると、驚愕の顔で一斉に叫んだ。


「「「「刹那(くん・先輩)?!」」」」


俺のドッキリ大作戦は成功である。

四人の顔を見て、俺は意地悪くニヤリと笑って見せた。


そこに現れたのは、善文と七鈴菜さんと佐々木さん、それに龍の四人であった_______________。

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