勇者一行ダンジョンへ?①
少し短めなので、二話連続投稿します。
先に言っておきます…………戦闘がないです!
いや……最初は書くつもりだったのですが、勢い込んで書いてたら……あれ?戦闘は?てなって、結局諦めました(爆)
もう少し先になりますが、ちゃんと生徒達が活躍する戦闘シーンも用意しているので、それで許して下さい!! 汗
刹那達が、王都を発ってから約一ヶ月程過ぎた頃_______________。
「おらおらー!!どうした!!その程度かっ!!」
王城にある鍛錬場に怒号が走る。
一人の男の足元には、倒れ伏している生徒達の姿があった。
聖騎士四天王。【特攻の猛獣】。
ーーアルフォート・ディグマーー
彼は普段は寡黙な男であるが、武器を持つとスイッチが入ってしまい、性格が豹変してしまうのだ。
身長は差ほど高くはなく、けれども、自身の身の丈より遥かに大きな大剣を振り回す程の怪力の持ち主でもあった。
「それくらいにしておけよ、アル。お前に付き合っていたら、子供らが壊れてしまうぞ」
やれやれと呆れながら、静かに諭すように注意する相棒のシルバール。
聖騎士四天王。【攻防の砦】
ーーシルバール・ミネファスーー
彼は常に冷静沈着で、アルフォートの暴走を止めるのは彼の役目となっていた。
シルバールは、大盾と斧を携え、仲間内では【縁の下の力持ち】と言われる程の苦労人でもある。
「だってよ~、シルバ。こいつら全く歯応え無さすぎだぜ?アイツなら、セツ……ぐほっ」
突如、アルフォートは頭を押さえて蹲る。
シルバールの大盾が、アルフォートの頭を直撃したのだ。
それを見ていた前衛組の生徒達は、何が起こっているのか分からず、先程まで憔悴しきっていた顔には戸惑いが見られるばかりだ。
「おいおい。何やってんの?あんたら」
「ふふ。楽しそうで何よりだわ」
少し離れた所で、後衛組の相手をしていた、ケイトとシーナが二人の元にやってくる。
聖騎士四天王。【樹林の令嬢】。
ーーケイト・シェヌヴァーー
彼女は実は、貴族のご令嬢であると噂されるが、真偽の程は定かではない。
本人自身が、それを聞かれるのを極端に嫌う為、彼女の過去を知る者は限られている。
【樹林】と言われるように、彼女の得意魔法は〈木属性〉である。
聖騎士四天王。【癒しの聖母】
ーーシーナ・アンシェルトーー
彼女は常に微笑みを絶やさない。
どんな戦況化に於いても、微笑みながら仲間の傷を癒す。
さながら【聖母】のように……。
けれど、殆どの者は知らない。
この中で、一番怒らせてはいけないのが彼女である事を…………。
「だってよ~、シルバが……」
「貴様が余計な事を口走ろうとするからだ。それに、アレとの約束を違えるつもりか?」
「ぐっ……」
アルフォートは言葉を詰まらせる。
もう今では、自分達には足元も及ばぬ程に力を付けた【彼】は、今でも彼らを仲間だと言ってくれる。
裏表無く真っ直ぐに……昔と変わらぬ笑顔で、刹那は彼らに頼んだのだ。
「生徒達の事を宜しく頼む」とーーー。
アルフォートが張り切っているのは、ただ単にスイッチが入ったせいだけではない。
一番の理由は、この王都を発つ前日に、刹那が自ら頭を下げてきた事にある。
アルフォートは、刹那の頼みを無碍にしたくなかっただけなのだ。
他の聖騎士達もそれが分かっているから、あまり強くは出られないでいたのだった。
何より、アルフォートだけでなく、聖騎士達は皆が同じ気持ちだったのだから……。
「まぁ、そのくらいにしときなよ。アルのおっちゃんも反省してるんだしさ」
ケイトが苦笑ながらも、アルフォートの擁護をする。
「そうですわね。それよりどうします?そろそろ彼等にも実戦を経験させますか?」
その言葉を聞いて、大半の生徒が喜色ばむ。
けれど、数名の生徒は対照的に難色を示していた。
「ん~……そうだな……」
「ちょっと待って下さい!」
それに意を唱えたのは善文であった。
「ん?どうした?」
「俺達には、実践はまだ早いと思います」
生徒達にどよめきが走る。
ここに居る殆どの者は、変わり映えしない訓練に辟易していたのだった。
アルフォートは、その善文の言い分に、面白そうだと口角を上げる。
「……へ~。何故そう思う?」
周りの非難の声など気にも止めず、善文は自分の考えを口にする。
「俺達は確かに勇者補正で、他の人達よりは優位な立場である事は間違いありません。個々の能力を客観的に見ても、それなりの力を持っている事は間違いは無いでしょう。けれど、さっきの訓練は、実戦経験に基づいての訓練だった筈……それなのに皆は自分達の事ばかりで、連携など最初から頭には無かった。このままでは、弱い魔物ならいざ知らず、少しばかり強い魔物にかかれば…………皆死にます」
その言葉に、生徒達は息を呑む。
けれど、一部の者は、善文の言葉が正論だと頷いている。
その冷静な思考に、聖騎士達は皆舌を巻くばかりだ。
(流石はセツナ殿の親友と言った所か……)
シルバールは感心したように善文を見る。
それは、聖騎士達が今一番懸念している事ズバリであった。
魔物は必ずしも一匹で来るとは限らない。
例え一匹だったとしても、それが強い魔物であったなら、一人が勝手な行動をするだけで連携が乱れ、簡単に窮地に立たされる。
そんな事は頭では分かっていても、それを本当の意味で理解する者は少ない。
それを、この17歳の少年は、ちゃんと理解してる上で発言してきたのだ。
「ちょ!ちょっと待ってくれ!!」
それに更に意を唱えたのは楠木だった。
「た、確かに倉本の言う事も一理ある。けど、結局の所実戦を積まなきゃ意味は無いんじゃないか?」
「それは……」
確かに、楠木の言ってる事も分かる。
どれだけ訓練した所で、実践でしか味わえない危機感などは、訓練だけでは限界がある。
そんな様子を黙って見ていたシーナが提案をした。
「では、まずは初級ダンジョンに向かわれては?あそこなら、よっぽどの事がない限りは命の危険はないでしょうし。その結果次第で、今後どのようにするかを決めてはどうかしら?」
これが決め手となり、勇者一行は、初ダンジョンに挑む事にしたのだった。




