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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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修行 と 完成

翌朝目を覚ますと、隣には安らかな寝息をたてて眠るベルナデッタがおり、それを目にして、俺の中に温かなものが広がるのを感じる。


これは幸福感だーーー。


ベルナデッタは、どちらかと言えば精霊と似たようなもので、触れる事は出来るが【精神体】である。


たが俺と……こう言う行為をする時は、こうやって【実体】になってくれる。


【精神体】には感覚と言うものは存在しない。


痛みも、寒さも熱さも……何も感じない。


だから直に俺を感じる為に【実体】になるのだと、恥ずかしながらも説明してくれたのを思い出す。


そんな彼女を、俺は可愛らしく思い……そして、愛おしく思うのだった。


アヤメ同様に、彼女もまた俺が前世で帰還する時、「待っている」と言ってくれた。

俺の勝手な言い分では、俺の事なんかさっさと忘れて、二人には……皆には幸せになって欲しかったのだが、嬉しい事に、俺の恋人達は皆、俺を想い続けると言ってくれるのだ。


まさに男冥利に尽きる。


俺は、幸せそうに眠るベルナデッタの頭を、起こさぬように出来るだけ優しく撫でる。

けれど、ベルナデッタの瞳は僅かに揺れ、そしてゆっくりと開けられた。


「ごめん。起こしちゃた?」


ベルナデッタと目が合い、俺は謝罪を口にする。

けれど、それとは裏腹に、顔が笑ってしまうのは止められない。


ベルナデッタはそんな俺に、僅かに頬を染めながらも首を降る。


「平気です。お早うございます、セツナ」

「うん。お早う、ベル」


俺は、二人だけの愛称でベルナデッタの名を呼び、軽く朝の口付けを交わす。


そうして俺達は服を整えてから、二人一緒に部屋を出たのだった。





それから数日が過ぎ、着々と【転移魔法陣】が完成に近付き残り僅かとなった頃…………とうとう俺がキレた。


「だーーーーーーー!!ストレスが溜まる!!ベリアル!!ちょっと付き合え!!」

「はぁー……そろそろだと思っていたが、疲れたなら休めばいいだろうが」

「違う!『疲れた』のと『ストレスが溜まる』のはまた別問題なんだよ!!」


これは俺の自論である。


ベリアルは、俺の我侭にやれやれと呆れながらも、特に断って来ない。


『なれば、偶には我ともどうだ?我も腕を磨きたいのでな』

「お!アルテミスもやる気か!んー……そうだな……それならいっそ二人纏めて、ってのはどうだ?」


俺は二人を挑発するように、ニヤリと不敵に笑う。

そんな俺に、二人もまた悪い笑みを向けてくる。


「ほぉ?それは面白いな。吠え面かくなよ」

『ふむ。負け惜しみの言葉でも考えておく事だな』


そう言って俺達は外に出て森に向かう。


そんな俺達に、他の者達が呆れた視線を向けて来たのは見なかった事にする。


人気の無い森の中に入り、そこに【空間魔法】で作り上げた即席の結界を張る。


俺達がこれからやろうとしているのは、『修行』とは名ばかりの、ただのストレス発散である。


ルールは至って簡単。

魔法もスキルも使用しない…………言わばただの殴り合いだ。


ストレスも発散出来て、修行にも打って付けなので、俺はこれを結構楽しみにしていたりする。


しかも今回二人同時だ…………さて、どうなる事やら。


「んじゃ、始めますか!」


俺達は結界内に足を踏み入れ、俺の言葉を合図に殴り合いが始まったーーー。






そして翌日、漸く【転移魔法陣】が完成した。


「よっしゃ!これで後は【精霊】に配置に就いてもらうだけだ。ベルナデッタ、頼むよ」

『ええ。心得てます』


俺はその場にだらし無く寝転びながら、ベルナデッタに後の事を任せた。


ベルナデッタが、傍に居た【上級精霊】二体にお願いをしてくれている。


【精霊魔法師】は【精霊】にこよなく愛される。

それは【精霊力】の適正を持ってるだけでも、精霊は好ましく見えるらしいが、それの比ではない。


それ故に、精霊魔法師はいつでも精霊の力を借りる事は出来るが、実は別に【契約】する必要はないのだ。


ただ、契約する事で絆も生まれるし、何よりも精霊の力が増す。


契約しなくても、近くの精霊に【力】を貸してもらえる事も出来るが、お互い【相性】と言うのもあるので、必ずしも力を貸し与えられる保証は何処にも無い。


そこら辺は、人間同士と同じだ。


そして、ベルナデッタはそのどちらも当てはまらない。


精霊はベルナデッタの願いを断る事はしないし、契約をしていなくても、ベルナデッタ自信が精霊達に力を貸し与える事が出来るので、問題無く事が運ぶのだった。


『終わりました』


ベルナデッタが、寝転がっている俺を覗き込むように、極上の笑顔を向けてくる。


「ん。ありがとう」


礼を言って、俺が手を伸ばしてベルナデッタの頬を撫でると、彼女は少し擽ったそうに目を細めた。


けれどすぐに、哀しみを耐えるように瞳を揺らす。


『けれども、もう行かれてしまうのでしょう?』

「うん……多分問題は無いとは思うけど、念の為に、ちゃんと機能してるか俺自身が確かめたいからね。ついでに、王都に一泊してくるよ」

『そう……ですか』


それだけ言うと、ベルナデッタは俯いてしまった。


俺は苦笑しつつも、彼女に申し訳ない気持ちで一杯になる。


ベルナデッタは、このエルフ国から出る事が出来ない。


それでなくとも、俺はいつも慌しくて、彼女にあまり時間を作ってあげる事が出来ないのだから。


だから、少なくともこの国に居る間は、出来る限り彼女の我侭を聞いてあげたいとも思う。


とは言うものの、ベルナデッタは滅多に俺に我侭は言ってくれないんだけどね……。


俺は上半身を起こし、ベルナデッタに顔を近付けた。

それだけで、ベルナデッタは理解して、態々【実体】になってからそっと瞼を閉じる。


俺は少し顔を傾けて、ベルナデッタに口付けをする。


軽いのではなく、最初から深く……舌を絡ませ、ベルナデッタの舌を蹂躙していく。


「!!んっ……」


ベルナデッタが少し苦しそうに声を漏らし、身をよじろうとするが、俺はそれを許さず頭を手で固定する。


「んっ!ふ……ん」


少し強引だとも思ったが、俺がどれだけベルナデッタを想っているのか、言葉だけでなく、ちゃんと体でも知ってもらいたかったのだ。


ベルナデッタも今では俺に身を委ねている。

俺達はそうやってお互いを深く求め合った。


そうして俺達が二人の時間を堪能していると……。


カチャーーー。


「おい。セツナ、そろそろ……」

「「…………あ」」


「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」


「……邪魔したな」

「ちょ?!待て!!」


ベリアルが、そっと扉を閉めようとするのを、俺は慌てて止めた。


何て間の悪い……。

いや、俺が悪いんですけどね……。


ベルナデッタも顔を真っ赤にしていた。


少し反省してます……。


少々バタバタしてしまったが、最後に【鍵】として、ベルナデッタとカーゼノスの波長を魔法陣に登録する。


これにより、この【転移魔法陣】を使用するには、二人のどちらかの許可が降りない限り、魔法陣が起動しないのだ。


そして、約一ヶ月ぶりに、俺達は王都に帰還するのだった。

全く…………結局ラブラブかよ!!(爆)


しかも最後の定番のシーン……彼女を家に連れてきて、いい雰囲気の所に母親が介入……みたいな? 笑

母親でなくてベリアルだけどね 笑笑


まあ、程々にな!って事ですよ!(´∀`*)ケラケラ

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