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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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光石 と 幻獣王

俺は三日三晩昏睡していたらしく、四日目の昼に目を覚ました。


目の前には、泣き腫らした目をしたアヤメの姿と、瞳に涙を浮かべたベルナデッタ、心底安心した顔をしたベリアルとカーゼノス、【人化】をしたアルテミスが俺を見下ろしていた。


それからは、俺が寝ている間の事を細かく聞いた。

被害は甚大であったが、奇跡的に死者は出なかった事。

ニーズヘッグが消失した際、そこには巨大な【光石】が残っていた事。


別に俺は、それには特に驚きはしなかった。


【光石】を幻獣が、【精霊石】を精霊が、と言われているが、実はどちらも同じような性質で、似たものなのだ。

【魔物】には肉体があるので死んでも肉塊は残るが、【半精神体】である幻獣と、【精神体】である精霊には、死と言う概念がなく、ただ【核】を残して消失するだけであった。

【ユグドラシル】の根から生まれたニーズヘッグは、魔物と言うよりも、どちらかと言えば幻獣に近い類のものなのだろう。


そもそも、俺が最初に【魔力眼】で視た時に魔力を感知出来ず、【精霊眼】で感知出来たのだから当然だろうと思う。


それよりも、現在の目の上のたんこぶは、その【光石】をどう処分すれば良いかと言う事だった。

その巨大なものの置く場所がないので、何とか皆が交互に〈風魔法〉で浮かせている状態らしい。


そこで俺は、ある事を思い付き、駄目元で聞いてみた。


「その【光石】俺に譲ってくれないか?俺なら【亜空間】に余裕で入るだろうし」


それを二つ返事であっさり了承されてしまった。


……………………君達の俺への信頼が怖いよ。


確かに、別に悪い事に使う訳ではないけど、それでも理由も聞かずにオーケーされるとね…………。


俺は苦笑するしかなかった。


次に聞いたのは、【ユグドラシル】の件についてだ。

ベルナデッタはああ言ってたが、それでもやはり心配なものは心配である。


けれどもどうやら杞憂であったらしい。


ベルナデッタの言った通り、【ユグドラシル】の再生能力は凄まじいらしく、もう既に切り口から新しい根が生えだしたようだ。


俺は胸を撫で下ろす。


そして切り落とした根っこだが、その一本の(うろ)の中に不思議な殻のような物が見つかったらしい。

【鑑定眼】や色々なもので調べてみたが、詳しくは分からなかったとか。


俺もそれを見せてもらったが、厚さは薄く、黒に何やらラメのようなものがキラキラしていて何とも不思議である。

俺も【鑑定眼】で視てみる事にした。


~~~~~~~~~~~~~~~

【ニーズヘッグの卵の殻の破片】

これは?が創造したもの。

世界樹【ユグドラシル】の??を

養分として成長。

発動条件は???が現れる事。


~~~~~~~~~~~~~~~


………………何だ?これは。


今迄にこんな事は無かった。

何故か穴埋めの問題集みたいな事になってるんだが?


俺は念の為に、【解析】でも視てみる事にした。


『創造』と言う事は造られたと言う事。

本当にそんな事が可能かは分からないが、もしそうなら何かしらの【術式】が組み込まれている可能性もある。


だが…………。


「ッ?!」

「セツナ様?!」

『セツナ?!』


一瞬、莫大な量の『何か』が俺の頭を駆け巡り、俺は強烈な頭痛に襲われ顔を顰める。

俺の異変に、皆が心配そうに顔を覗き込んで来た。


「だ、大丈夫だ」


これ以上皆に心配を掛けたくなかった俺は、努めて平静を装ったが、それでも納得しなかったのか、皆の顔は晴れないままだ。


なので、俺は無理矢理話を変える事にした。


「そう言えば。アルテミスは里帰りしてきたのか?」

『ん?いや……お主が目覚めておらんのに、我だけそのような私事に出るわけも行かんだろう』

「お前な~……まぁいいや。それじゃ、俺も後で【幻獣世界】に顔を出すとするかな。皆の無事をこの目で確かめておきたいし」

『うむ。皆の者も喜ぶだろう』


皆の顔にもやっと笑みが戻って少しホッとする。


【幻獣世界】とは、【ユグドラシル】を媒介にして造られた【空間】内にある、アルテミスの故郷であり、幻獣達の住処だ。

ベルナデッタは、そこの【番人】の役目も担ってたりする。


最後に俺がここに来た目的を話し、それを実行に移そうと腰を浮かせたら…………めっちゃ怒られた。

まだ暫くは安静にしてろ、だそうだ。


う~ん……自分的にはもう大丈夫なんだけどな~


とは言え、今回はめちゃくちゃ心配を掛けさせてしまったので、俺も強くは出れず、仕方が無いので皆の意見を尊重して、もう三日程休む事にした。


余談だが、その晩にアヤメに触れようとして……………………また怒られた。


…………………………別に落ち込んでないからな。


あ~、それから、翌日にはドリュアスに会いに行った。


ドリュアスに今回の礼と、約束通り話をしようと思ったのだが、どうやら彼女にも酷く心配をかけてしまったらしく、俺の体を気遣ってくれて、小一時間程話してからまた来ると再び約束をして別れた。


次の日は、【ユグドラシル】の無事を確認してから、【幻獣世界】へ足を踏み入れた。

久し振りの【幻獣世界】は……相変わらずの圧巻の一言である。

多少の被害が見受けられたが、その美しさは芸術的で、つい見蕩れてしまう。


『雲の上』に大きな島が二つあり、その島の間には、巨大な清流の滝が激しく水飛沫を上げ、そこには大きな七色の虹が二つの島を挟んで掛かっているのだが、実はこの虹は橋となっているのだ。


まさに幻想の世界である。


そして、俺を出迎えてくれたのは、様々な幻獣達ーーー。


ビーバーのような姿をした【アーヴァンク】。

ヘラジカのような姿をした【アクリス】。

ヤモリのような姿をした【イピリア】。

巨大な牙が特徴的な牛のような姿をした【エアレー】。

金の角を持ったシャモアのような【ズラトロク】。


それから、地球でも有名な【フェニックス】などなど、多種多様な幻獣が今俺の周りに集まってきていた。


俺は皆一人一人に声をかける……と言っても、流石に多すぎて、全員に挨拶出来なかったが仕方ない。

そして俺は、足元の地面に触れて笑顔で言った。


「【幻獣王】も久し振り。少し力が弱まってるみたいだけど大丈夫か?」

「そう。俺が言えた義理ではないけど、あまり無理はするなよ?」

「あはは。分かってるよ。一昨日も皆に怒られたばかりなんだから」


俺は別に独り言を言ってるわけではないぞ…………。


【幻獣王】または【精霊王】と呼ばれているが、この王には実体はない。


精神体……でもなく、【意識】そのもの?みたいな感じだ。

少し説明が難しく厄介なのだが、この【幻獣世界】を形作っている、その全てが【幻獣王】である。


故に、今俺が立っている大地も風も木も滝も虹の橋すらも、全てが【幻獣王】と言えるのだ。


「うん!やっぱり少し俺の【精霊力】も分けてあげるよ。どこまで役に立つか分かんないけど」

『なっ?!まっ!!』


アルテミスの制止の声も聞かず、俺は【幻獣世界】……【幻獣王】に力を注いだ。


若干の眩暈を覚えたが、全く苦にはならなかった。


けれどやはりと言うか何と言うか……………………めっちゃ怒られました。


あれ?何か最近俺怒られてばっかじゃね?

まぁ、自業自得なので反省してます……多分。


三日目は、皆から本当に絶対安静を言い渡されてしまい、部屋から一歩も出してもらえなかった。


皆の目が怖かったよ…………。


そして漸く皆のお許しが下りた所で、俺は今、とある【魔法陣】の前に立っていた。


それは勿論、例の目的を果たす為であった。

皆には頭の上がらない主人公です 笑


そんな主人公を作者は愛しております!(多分)

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