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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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各国の王達

刹那一行がエルフ国に着いて間も無く地震が起きる。

その揺れは、世界中にも響き渡るものだった。

この世界で地震など滅多にない。

名前だけは知ってても、実体験した事がある者は殆どいないだろう。

その中での各国の王達の反応はーーー。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【獣人国】獣王の間。


「な!なんだよ?!今のは!!」

「ほお。これは地震と言う奴だな」

「じしん?親父、何それ」

「親父ではなく、パパと呼んでくれといつも言っとるだろ?」

「…………ぶっ殺すぞ」

「ほー?そんな事言っとると、あ奴めに嫌われるぞ?」

「ぐっ……」


獣王は意地悪くニヤニヤと笑う。

獣王の娘は、それが態とだと分かっていても言葉に詰まる。


それだけ、娘にとって【彼】の存在は大きかった。


「い、いいもん!アイツはありのままのオレが好きだって言ってくれたし……」


唇を尖らせながら、娘は少し拗ねた素振りをする。


(あ~……我が娘ながらカワユイの~)


娘には甘甘な獣王である。


「まぁいい。地震の原因は……ほれ、恐らくあれだろうな」


そう言って、獣王は窓から見えるエルフ国を指差す。


「は?何だよ……あれ」


娘が指差した方角を見ると、そこには遠くからでもはっきりと見える程、巨大な木が空に浮いていた。


「あれは恐らく【世界樹】だろうな」

「【世界樹】ってあの?」


娘はあまり獣人国から出た事がなかった為、名前くらいしかその存在を知らなかった。


獣王はその質問に答えようとして……瞬間、目を見開き【世界樹】の方角を凝視した。


「これは……」

「……え?うそ……」


娘も『それ』に気付く。


エルフ国の方角から、莫大なエネルギーの波動が、この獣人国まで伝わってくる。


それは忘れもしない……恋い焦がれてやまなかった……もう2度と生きて会えるとは思ってもみなかった……愛しいあの人の【気配】……。


見る見る内に、娘の瞳に涙が溜まる。


そして、その場でみっともなくわんわんと泣きじゃくる。


そんな娘に、獣王は優しい眼差しを向けるのであった。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【ドワーフ国】女王の部屋。


「あら~?これって地震ってやつかしら~?」


何とも間の抜けた、緊張感も何も無い声で、女王は自室で独り言を呟く。


そんな時、激しく部屋をノックする音が聞こえた。


「どうぞ~」


女王が、のんびりと返事をすると、勢い良く扉が開かれる。


「女王?!ご無事ですか?!」

「な~に~?そんなに慌てちゃって~」

「な、何って……今の揺れで女王に何か合ったのではと思いまして……」


近衛隊隊長は、女王のあまりのいつも通りさに、逆に面を食らってしまう。


「私なら大丈夫よ~。それよりも~、【鉱山】を見てきて~?採掘中の子が居るかも~?」

「は、は!畏まりまして!」


近衛隊隊長は、その言葉に即座に反応し、部屋を後にする。


それを確認した女王は、また一眠りしようとベッドに横になったが…………すぐに飛び起きる。


先程までの、のんびりした動きとはうって変わり、それは凄まじい迄の機敏な動きであった。


「あら?あらあら~?この気配は……間違いないわ~。また貴方に逢えるのね……」


女王は、妖艶な笑みを浮かべるのであった。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【サリファム王国】執務室。


「うぉ!何じゃこれは?!」

「地震……ですかね?」


アレク王の驚きの質問に、冷静に答えるトマルス。


「地震?!とは、あの地震の事か?」

「どの地震の事を仰ってるのかは分かりませんが、恐らくはその地震でしょう」


などと、漫才のような事をする二人。


そんな二人が居る執務室に、ノックもせずにいきなり扉が開かれた。


「父上!!」

「これ!クルト!!ノックもせずに行儀が悪いぞ!!」


アレク王の一喝と、トマルスの眼鏡が光るのを見て、クルト王子は慌てて謝罪を口にする。


「す、すみません……って!!そうではなくて!!」

「何じゃ?さっきから……」

「ですから!!先程の揺れですよ!!」

「ああ……地震の事か」

「じ、じしん?」


アレク王の以上に落ち着いた態度に戸惑いつつも、聞き慣れない言葉に困惑するばかりのクルト王子。


すると、この部屋にもう一人の来訪者が現れる。


「あら?クルトもここに居たの?」

「あ、姉上?ええ……父上に地震について聞こうと……」

「あぁ……先程の地震ですか」


アリア王女も地震について知ってるようで、自分だけが知らない事に少し落ち込むクルト王子。


「その地震についてお話があります。お父様」

「ん?何だ?」

「震源地は恐らくエルフ国だと思います。先程【世界樹】が天空に浮いてるのを確認しました」

「へ?」


素っ頓狂な声を出したのはクルト王子だ。


流石のクルト王子も、【世界樹】を知らない筈はない。

それが浮いてたと言うのだから、驚かない筈がなかった。


だと言うのに、驚いたのはクルト王子だけで、他の三人はクルト王子と正反対の反応を示した。


「わーはははははは。そうかそうか。相変わらずやる事が突拍子ないの」

「全くですね。戻ってきたら、色々話を聞く必要があります」

「ですわね。楽しいお話がまた聞けそうで今から楽しみです」


アレク王は爆笑し、あの鉄面皮と畏れられているトマルスでさえ笑みを浮かべ、アリア王女もただ微笑みを浮かべるだけであった。


ただ一人、クルト王子だけが現状に着いて行けないでいる。


何故なら三人の想いはただ一つだけ……。


「「「きっと大丈夫だ(です(わ))!!」」」


ただ【あの者】を信じているだけだった。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【人魚国】正門前。


「くぅ……」

「姫様!!お下がり下さい!!ここは我らに……」

「いいえ!!この国を守るのはあたしの役目だよ!!ここは何としても死守するんだっ!!」


普段の彼女を知る者が聞いたら、きっと我が耳を疑っただろう。


けれど、彼女は今【姫】と言う大役を背負う覚悟をしている。


それは単に、【あの人】のお陰であった。


先程何やら海底が激しく揺れたような気がするが、今はそんな事を気にしている余裕は無い。


今目の前に、脅威が迫っている。


ここを守らなければ、力無き民達が無残に殺されていく……。


それだけは何としても阻止しなくては行けない。


「『為せば成る。為せぬなら成してみよ』!!」


まるで呪文のようにそれを唱える。


嘗て【あの人】が言った言葉……。


それを聞いた衛兵達の目にも、再び闘志が燃え上がる。


「【占い】にも出てたんだ!!必ず勝機は我らが手にっ!!」

「「「「おぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!」」」」


(今のあたしを見たら何て言うかな?褒めてくれるかな?)


不純な動機かもしれない……。


それでも、それが姫の支えになる。


「ッ?!」


瞬間、強大な力が世界を震撼させた。


「これは……!!」


間違いない。【あの人】の気配だった。


「皆感じたね!!【あの人】が今一度この世界に来てくれてるよ!!これは絶対に負けられないよっ!!」


更に激戦は続く。

けれどその瞳には、絶望など微塵も感じられなかった。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【天空城】竜王の間。


『む?』

「どうしたの?竜王様」

『いや。どうやら地上で何かがあったようじゃ』

「何か?」


少女は今【人化】を持続させる為に、修行に励んでいた。


それは、もう一度【あの人】に会った時、驚かせる為である。


『うむ。何やら大気が震えておるな』

「?ふ~ん……。ノエルには分かんないや!」


少女には興味がなかった。


少女の頭の中には【あの人】しかいない。


竜王は、そんな少女に呆れつつも、我が子を見る目で優しく見つめるのだった。


『それにしても、大分【人化】がうまくなったものじゃな』

「でしょ!アルテミスが【人化】してて羨ましかったんだよね~。これで【交尾】出来るね!」

『ぶっ!!』


竜王は、少女の突拍子の無い言葉に、勢い良く吹き出してしまった。


『お主は……全く…………』


少女の目的が何かは竜王も知っている。


全ては【あの人】への想い故の事の為、竜王も強くは出れなかった。


『ッ!!何じゃ?!』


珍しく竜王が慌てる。


突如として莫大な力の放流が、この【天空城】まで届いてきたのだ。


「これって……っ!!」


少女もその波動に気付き、そしてそこにある【気配】を敏感に感知した。


それは、逢いたくて逢いたくて逢いたくて仕方のなかった【想い人】の気配……。


『!!待つのじゃ!!』


竜王は、少女がいても立ってもいられず、すぐに飛び出そうとするのを制止した。


少女が文句を言おうと口を開いた瞬間……。


『むぅ?!』

「きゃっ!!」


突如この【天空城】が激しく揺れる。


それは【あの人】が放った、強大な力の斬撃であった。


それが、この【天空城】のすぐ傍を通り過ぎ、その凄まじい衝撃波が【天空城】にも伝わってきたのだ。


『全くあ奴は……やる事なす事相変わらずめちゃくちゃじゃな』


竜王は呆れつつも、その変わらぬ旧友に心が温かくなり目を細める。


「ノエル行かなきゃ!!」


それでも少女は、今すぐに飛だそうとする。


『まぁ、待て。今はまだその時ではないじゃろう』

「何で?!」

『そもそもお主、あ奴と別れる際に「嫌い!」と言ってなかったか?』

「?!そ、それは……」


少女は言葉に詰まり、瞬時にその瞳に涙が浮かぶ。


「ノエル嫌われた……?」

『カッカッカッカッ!それは無いじゃろう。案ずるで無い』

「ほ!本当に?!」

『うむ。だが今は逢いにゆくのは得策とは言えんかもしれん。今はただ待つのじゃ。いずれ時が来れば、あ奴からお主を呼ぶであろうて。それまでは修行に励むが良い』

「うん!分かった!ノエルいーっぱい修行して、いーっぱい褒めてもらうんだ!」


少女はただただ、もう一度【あの人】に逢う事だけを胸に抱きながら、更なる修行に励むのであった。


・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【魔都】自宅


「ひゃ?!」

バサバサっーー。


机にあった書類が床に散乱する。


「もう!!今の揺れは何さ!!」


妹は舌打ちをする。


それでなくても、最近は【魔素】が増えたせいで、魔物だけでなく魔族まで影響が及んできているのだ。


意志の強い者、力のある者は何も問題はないが、力無き者はその力に呑まれ、今はあちこちで小競り合いが起こる始末。


「はぁ~」


妹は頭を抱えながらため息をついた。


「溜め息ばかり吐いてると幸せが逃げるぞ?」


これは嘗て【あの方】が言っていた言葉……。

「迷信だけどな」と笑っていた。


「ベリト……」


勝手に入室してきた男を、ジト目で妹は睨む。


「はは。そんな顔すんなよ。地震でお前が無事か確認しにきただけだから」

「じしん?さっきの揺れの事?」

「そ!大地が何かしらの原因で大きく振動するのが地震」


この男は見掛けによらず博識なのだ。


「……………………」


もう一人、この部屋に入ってきた女性は、散乱している書類を無言で片付ける。


「あ!ありがとう。ラム」

こくりーー。


女性は無言で頷く。


「そう言えば、もう10年になるんだよね……【あの人】と【バカ兄貴】が居なくなって……」


書類を片付けながら、何故かふと、そんな事を思った妹。


「そういや……もうそんなになるのか……長いような、短いような……」

「………………」

「だね。【バカ兄貴】は兎も角【あの方】には逢いたいなー」


皆が懐かしの【あの方】に思いを馳せ、目を細める。


【バカ兄貴】を改心させ、あまつさえ全魔族をも救ってくれた大恩ある人の事を……。


そんな時、莫大な力の波動が魔都を襲った。


「んな?!」

「これは……!!」

「っ?!」


三人は一斉に窓を見遣る。


「この……波動って……まさか?」

「ああ……間違いない!!アイツだっ!!」

「………………帰って……きた」


女性が、今日初めて口を開き、ボソリと呟く。


「うん……うん!!帰ってきたんだよ!!【あの方】が居るならきっと【バカ兄貴】も……!!」


妹の目には涙が滲んでいた。


【バカ兄貴】と言いながらも、それでも妹にとっては、たった一人の肉親である。


二人は、そんな妹の肩を優しく包み込むのであった。


何故こんなに多くの国を作ってしまったのか…………途中で頭の中がパニックに陥ってしまったよ 汗


多分大丈夫だとは思うけど、全部の国を書けたか若干の不安が残る作者です 笑


まあ、何とかなるでしょう!←本当かよ 笑


所で、「為せば成る。為せぬなら成してみよ」のくだり合ってるのかな~?

作者としては、「やれば出来る。やれぬならやってみせよ!!」って言う意味のつもりなんですが……自信がないっす 汗


間違っていたら、ご指摘お待ちしております←他力本願ですみません(爆)

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