各国の王達
刹那一行がエルフ国に着いて間も無く地震が起きる。
その揺れは、世界中にも響き渡るものだった。
この世界で地震など滅多にない。
名前だけは知ってても、実体験した事がある者は殆どいないだろう。
その中での各国の王達の反応はーーー。
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【獣人国】獣王の間。
「な!なんだよ?!今のは!!」
「ほお。これは地震と言う奴だな」
「じしん?親父、何それ」
「親父ではなく、パパと呼んでくれといつも言っとるだろ?」
「…………ぶっ殺すぞ」
「ほー?そんな事言っとると、あ奴めに嫌われるぞ?」
「ぐっ……」
獣王は意地悪くニヤニヤと笑う。
獣王の娘は、それが態とだと分かっていても言葉に詰まる。
それだけ、娘にとって【彼】の存在は大きかった。
「い、いいもん!アイツはありのままのオレが好きだって言ってくれたし……」
唇を尖らせながら、娘は少し拗ねた素振りをする。
(あ~……我が娘ながらカワユイの~)
娘には甘甘な獣王である。
「まぁいい。地震の原因は……ほれ、恐らくあれだろうな」
そう言って、獣王は窓から見えるエルフ国を指差す。
「は?何だよ……あれ」
娘が指差した方角を見ると、そこには遠くからでもはっきりと見える程、巨大な木が空に浮いていた。
「あれは恐らく【世界樹】だろうな」
「【世界樹】ってあの?」
娘はあまり獣人国から出た事がなかった為、名前くらいしかその存在を知らなかった。
獣王はその質問に答えようとして……瞬間、目を見開き【世界樹】の方角を凝視した。
「これは……」
「……え?うそ……」
娘も『それ』に気付く。
エルフ国の方角から、莫大なエネルギーの波動が、この獣人国まで伝わってくる。
それは忘れもしない……恋い焦がれてやまなかった……もう2度と生きて会えるとは思ってもみなかった……愛しいあの人の【気配】……。
見る見る内に、娘の瞳に涙が溜まる。
そして、その場でみっともなくわんわんと泣きじゃくる。
そんな娘に、獣王は優しい眼差しを向けるのであった。
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【ドワーフ国】女王の部屋。
「あら~?これって地震ってやつかしら~?」
何とも間の抜けた、緊張感も何も無い声で、女王は自室で独り言を呟く。
そんな時、激しく部屋をノックする音が聞こえた。
「どうぞ~」
女王が、のんびりと返事をすると、勢い良く扉が開かれる。
「女王?!ご無事ですか?!」
「な~に~?そんなに慌てちゃって~」
「な、何って……今の揺れで女王に何か合ったのではと思いまして……」
近衛隊隊長は、女王のあまりのいつも通りさに、逆に面を食らってしまう。
「私なら大丈夫よ~。それよりも~、【鉱山】を見てきて~?採掘中の子が居るかも~?」
「は、は!畏まりまして!」
近衛隊隊長は、その言葉に即座に反応し、部屋を後にする。
それを確認した女王は、また一眠りしようとベッドに横になったが…………すぐに飛び起きる。
先程までの、のんびりした動きとはうって変わり、それは凄まじい迄の機敏な動きであった。
「あら?あらあら~?この気配は……間違いないわ~。また貴方に逢えるのね……」
女王は、妖艶な笑みを浮かべるのであった。
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【サリファム王国】執務室。
「うぉ!何じゃこれは?!」
「地震……ですかね?」
アレク王の驚きの質問に、冷静に答えるトマルス。
「地震?!とは、あの地震の事か?」
「どの地震の事を仰ってるのかは分かりませんが、恐らくはその地震でしょう」
などと、漫才のような事をする二人。
そんな二人が居る執務室に、ノックもせずにいきなり扉が開かれた。
「父上!!」
「これ!クルト!!ノックもせずに行儀が悪いぞ!!」
アレク王の一喝と、トマルスの眼鏡が光るのを見て、クルト王子は慌てて謝罪を口にする。
「す、すみません……って!!そうではなくて!!」
「何じゃ?さっきから……」
「ですから!!先程の揺れですよ!!」
「ああ……地震の事か」
「じ、じしん?」
アレク王の以上に落ち着いた態度に戸惑いつつも、聞き慣れない言葉に困惑するばかりのクルト王子。
すると、この部屋にもう一人の来訪者が現れる。
「あら?クルトもここに居たの?」
「あ、姉上?ええ……父上に地震について聞こうと……」
「あぁ……先程の地震ですか」
アリア王女も地震について知ってるようで、自分だけが知らない事に少し落ち込むクルト王子。
「その地震についてお話があります。お父様」
「ん?何だ?」
「震源地は恐らくエルフ国だと思います。先程【世界樹】が天空に浮いてるのを確認しました」
「へ?」
素っ頓狂な声を出したのはクルト王子だ。
流石のクルト王子も、【世界樹】を知らない筈はない。
それが浮いてたと言うのだから、驚かない筈がなかった。
だと言うのに、驚いたのはクルト王子だけで、他の三人はクルト王子と正反対の反応を示した。
「わーはははははは。そうかそうか。相変わらずやる事が突拍子ないの」
「全くですね。戻ってきたら、色々話を聞く必要があります」
「ですわね。楽しいお話がまた聞けそうで今から楽しみです」
アレク王は爆笑し、あの鉄面皮と畏れられているトマルスでさえ笑みを浮かべ、アリア王女もただ微笑みを浮かべるだけであった。
ただ一人、クルト王子だけが現状に着いて行けないでいる。
何故なら三人の想いはただ一つだけ……。
「「「きっと大丈夫だ(です(わ))!!」」」
ただ【あの者】を信じているだけだった。
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【人魚国】正門前。
「くぅ……」
「姫様!!お下がり下さい!!ここは我らに……」
「いいえ!!この国を守るのはあたしの役目だよ!!ここは何としても死守するんだっ!!」
普段の彼女を知る者が聞いたら、きっと我が耳を疑っただろう。
けれど、彼女は今【姫】と言う大役を背負う覚悟をしている。
それは単に、【あの人】のお陰であった。
先程何やら海底が激しく揺れたような気がするが、今はそんな事を気にしている余裕は無い。
今目の前に、脅威が迫っている。
ここを守らなければ、力無き民達が無残に殺されていく……。
それだけは何としても阻止しなくては行けない。
「『為せば成る。為せぬなら成してみよ』!!」
まるで呪文のようにそれを唱える。
嘗て【あの人】が言った言葉……。
それを聞いた衛兵達の目にも、再び闘志が燃え上がる。
「【占い】にも出てたんだ!!必ず勝機は我らが手にっ!!」
「「「「おぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!」」」」
(今のあたしを見たら何て言うかな?褒めてくれるかな?)
不純な動機かもしれない……。
それでも、それが姫の支えになる。
「ッ?!」
瞬間、強大な力が世界を震撼させた。
「これは……!!」
間違いない。【あの人】の気配だった。
「皆感じたね!!【あの人】が今一度この世界に来てくれてるよ!!これは絶対に負けられないよっ!!」
更に激戦は続く。
けれどその瞳には、絶望など微塵も感じられなかった。
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【天空城】竜王の間。
『む?』
「どうしたの?竜王様」
『いや。どうやら地上で何かがあったようじゃ』
「何か?」
少女は今【人化】を持続させる為に、修行に励んでいた。
それは、もう一度【あの人】に会った時、驚かせる為である。
『うむ。何やら大気が震えておるな』
「?ふ~ん……。ノエルには分かんないや!」
少女には興味がなかった。
少女の頭の中には【あの人】しかいない。
竜王は、そんな少女に呆れつつも、我が子を見る目で優しく見つめるのだった。
『それにしても、大分【人化】がうまくなったものじゃな』
「でしょ!アルテミスが【人化】してて羨ましかったんだよね~。これで【交尾】出来るね!」
『ぶっ!!』
竜王は、少女の突拍子の無い言葉に、勢い良く吹き出してしまった。
『お主は……全く…………』
少女の目的が何かは竜王も知っている。
全ては【あの人】への想い故の事の為、竜王も強くは出れなかった。
『ッ!!何じゃ?!』
珍しく竜王が慌てる。
突如として莫大な力の放流が、この【天空城】まで届いてきたのだ。
「これって……っ!!」
少女もその波動に気付き、そしてそこにある【気配】を敏感に感知した。
それは、逢いたくて逢いたくて逢いたくて仕方のなかった【想い人】の気配……。
『!!待つのじゃ!!』
竜王は、少女がいても立ってもいられず、すぐに飛び出そうとするのを制止した。
少女が文句を言おうと口を開いた瞬間……。
『むぅ?!』
「きゃっ!!」
突如この【天空城】が激しく揺れる。
それは【あの人】が放った、強大な力の斬撃であった。
それが、この【天空城】のすぐ傍を通り過ぎ、その凄まじい衝撃波が【天空城】にも伝わってきたのだ。
『全くあ奴は……やる事なす事相変わらずめちゃくちゃじゃな』
竜王は呆れつつも、その変わらぬ旧友に心が温かくなり目を細める。
「ノエル行かなきゃ!!」
それでも少女は、今すぐに飛だそうとする。
『まぁ、待て。今はまだその時ではないじゃろう』
「何で?!」
『そもそもお主、あ奴と別れる際に「嫌い!」と言ってなかったか?』
「?!そ、それは……」
少女は言葉に詰まり、瞬時にその瞳に涙が浮かぶ。
「ノエル嫌われた……?」
『カッカッカッカッ!それは無いじゃろう。案ずるで無い』
「ほ!本当に?!」
『うむ。だが今は逢いにゆくのは得策とは言えんかもしれん。今はただ待つのじゃ。いずれ時が来れば、あ奴からお主を呼ぶであろうて。それまでは修行に励むが良い』
「うん!分かった!ノエルいーっぱい修行して、いーっぱい褒めてもらうんだ!」
少女はただただ、もう一度【あの人】に逢う事だけを胸に抱きながら、更なる修行に励むのであった。
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【魔都】自宅
「ひゃ?!」
バサバサっーー。
机にあった書類が床に散乱する。
「もう!!今の揺れは何さ!!」
妹は舌打ちをする。
それでなくても、最近は【魔素】が増えたせいで、魔物だけでなく魔族まで影響が及んできているのだ。
意志の強い者、力のある者は何も問題はないが、力無き者はその力に呑まれ、今はあちこちで小競り合いが起こる始末。
「はぁ~」
妹は頭を抱えながらため息をついた。
「溜め息ばかり吐いてると幸せが逃げるぞ?」
これは嘗て【あの方】が言っていた言葉……。
「迷信だけどな」と笑っていた。
「ベリト……」
勝手に入室してきた男を、ジト目で妹は睨む。
「はは。そんな顔すんなよ。地震でお前が無事か確認しにきただけだから」
「じしん?さっきの揺れの事?」
「そ!大地が何かしらの原因で大きく振動するのが地震」
この男は見掛けによらず博識なのだ。
「……………………」
もう一人、この部屋に入ってきた女性は、散乱している書類を無言で片付ける。
「あ!ありがとう。ラム」
こくりーー。
女性は無言で頷く。
「そう言えば、もう10年になるんだよね……【あの人】と【バカ兄貴】が居なくなって……」
書類を片付けながら、何故かふと、そんな事を思った妹。
「そういや……もうそんなになるのか……長いような、短いような……」
「………………」
「だね。【バカ兄貴】は兎も角【あの方】には逢いたいなー」
皆が懐かしの【あの方】に思いを馳せ、目を細める。
【バカ兄貴】を改心させ、あまつさえ全魔族をも救ってくれた大恩ある人の事を……。
そんな時、莫大な力の波動が魔都を襲った。
「んな?!」
「これは……!!」
「っ?!」
三人は一斉に窓を見遣る。
「この……波動って……まさか?」
「ああ……間違いない!!アイツだっ!!」
「………………帰って……きた」
女性が、今日初めて口を開き、ボソリと呟く。
「うん……うん!!帰ってきたんだよ!!【あの方】が居るならきっと【バカ兄貴】も……!!」
妹の目には涙が滲んでいた。
【バカ兄貴】と言いながらも、それでも妹にとっては、たった一人の肉親である。
二人は、そんな妹の肩を優しく包み込むのであった。
何故こんなに多くの国を作ってしまったのか…………途中で頭の中がパニックに陥ってしまったよ 汗
多分大丈夫だとは思うけど、全部の国を書けたか若干の不安が残る作者です 笑
まあ、何とかなるでしょう!←本当かよ 笑
所で、「為せば成る。為せぬなら成してみよ」のくだり合ってるのかな~?
作者としては、「やれば出来る。やれぬならやってみせよ!!」って言う意味のつもりなんですが……自信がないっす 汗
間違っていたら、ご指摘お待ちしております←他力本願ですみません(爆)




