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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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化け物 と 救世主

「よし!あの化け物が離れたぞ!」


ベリアル達は刹那に言われた通り、ニーズヘッグが絡みついていた根を切り落とし、ニーズヘッグを【世界樹】から遠ざける事に成功する。


流石は【世界樹】と言った所か。

その根は思いの外頑丈で、ベリアル達を持ってしても容易に切る事が出来ない程であった。


それでも三人は攻撃をし続けた。

魔法や武器や、ありとあらゆる力を持って絶え間無く攻撃した。


それは(ひとえ)に刹那を信じての事だった。


今までも刹那は不可能と言われてた事を可能にして来たのだ。

そんな刹那が「やる」と言ったのだから、自分達が諦めるわけにはいかないではないか。


皆の気持ちは一つであった。


皆が疲弊はしていたが、その瞳には絶望など微塵も感じさせぬ程に、強い意志が感じられた。


ニーズヘッグは、まるで【世界樹】しか目に入っていないと言わんばかりに、尚も【世界樹】に近付き食らいつこうとしていた。


「総員!!【世界樹】の結界に全勢力を当たれ!!」


全員がベリアルの支持の元、ありったけの力を振り絞り、【世界樹】の守りを強化した。


だがその時、ベリアルは目を瞠る事となる。


ニーズヘッグの全身は硬い鱗で覆われてるが、背中だけは、何やら不揃いな硝子のような光沢をしたものが嵌められて並んでいた。


その硝子が妖しくも光り出したのだ。


(あれはまずいっ!!)


そう思ったベリアルの反応は迅速だった。


「全員【世界樹】への結界を一時中断!!あいつの背中にある硝子を結界で囲えっ!!」


ベリアルの声に、戦闘経験のある者は瞬時に応じる。


けれど、この場に居るのはそればかりではなかった。


【精霊魔法師】になりたての者ーーー。

戦闘経験など皆無の者ーーー。


ミシディア然りである……。


文字通り、ここには【精霊魔法士】と呼ばれる者達全てが集められていたのだ。


そして、その一瞬の隙が仇となる。


背中を結界が囲ったと同時に、硝子の光沢に、強大な熱の光が集まると、それは一気に結界内で拡散する。


「〝「『「『「ッ?!」』」』」」〟」


皆がその力に呑まれぬように、必死に歯を食いしばる。

けれど、まるでそれを嘲笑うかのように、結界にピシリと亀裂が走る。


グガァァァァァァァ!!


それは初めて聞くニーズヘッグの咆哮……。


その咆哮が引き金となったのか、力は更に増し、結界は無慈悲にもパリンッと言う音と共に無残に砕け散ってしまう。


「うっ?!」

『ぐぅ……?!』

「きゃああ!!」

『つぅぅ!!』

〝っ?!〟

『んっ?!』


辺りに暴風が吹き荒れる。


人々は吹き飛ばされ、木々はなぎ倒され、それは凄まじいまでの衝撃波となって周囲を巻き込んだ。


ベリアルはすぐ様起き上がり、ニーズヘッグを見上げた。


(やったか?!)


別にあれで倒せるとは思っていない。

けれど、せめてあの攻撃さえ防ぎ切れれば…………そう淡い期待を込めて、ベリアルはニーズヘッグを見遣る。


瞬間……願いも虚しく、白煙立ち篭める中で、数条の光線が地上に降り注ぐ。


その内の一条が、刹那目掛けて真っ直ぐと飛来する。


「くそがっ!!」

「セツナ様っ?!」


ベリアルが悪態を叫ぶ。

アヤメが悲鳴を上げる。


刹那は微動だにしない。


皆が一斉に刹那に駆け寄る…………が、あまりに遠過ぎたのだ。


先程の衝撃波のせいで、皆が散り散りに吹き飛ばされ、満身創痍であった。


足が空回り、思う様に前に進まない。


刹那に至っては、万が一に備えて、ベルナデッタが刹那の周囲に結界を張っていた為、大事には到らなかったのである。


そんな結界があったとしても、あの光線を防ぎ切れないのは、誰の目にも明らかであった。


皆がもう駄目だと諦めた瞬間、怒声が響き渡った。


「なめるなぁぁぁぁ!!」


カーゼノスは、聖剣【レーヴァテイン】を手に、それを勢い良く振り下ろした。


直後、レーヴァテインから光の放流が迸り、光線へと一直線に向かう。


カッーーー。


レーヴァテインの光の放流と、ニーズヘッグの光線がぶつかり、一瞬辺りを眩い光が包み、皆が一斉に目を覆う。


目を瞬かせながら開けると…………そこには、今も尚構えを取りながらの刹那の姿があった。


ホッと胸を撫で下ろすのも束の間、ベリアルが再び声を張り上げる。


「まだ終わっていないぞ!!もう一度【世界樹】に結界を張り直せっ!!」


それを聞き、皆が再度世界樹を結界で囲む。


全員が、もう既に限界であった。

あるのは気力のみ。


ただただ………………我らが【救世主】が齎す奇跡を信じて………………。





パリッーーー。

パリリッーーー。


刀に、全エネルギーが伝わっていくのを感じる。


パリッパリッーーー。


それに伴い、刀身に強大な力の放流が纏いつき、形を成していく。


俺はすっと閉じていた瞳を開けた。


今迄になく、頭も心も澄み渡っている。


俺の持つ【雷切】が、まるで【雷】そのものとなって刀を覆い、10倍の長さとなっていた。


「これじゃ【雷切】じゃなくて、まんま【雷剣】……いや【雷刃】か?」


俺は皮肉を呟く。


空を見上げる。

そこには、未だにあのニーズヘッグとか言う化け物がいた。


けれど、何かに苛立っているように見えるのは気のせいだろうか?


どちらにしろ、俺のやる事は変わらない。


俺は雷切の柄を更に強く握り締め、ニーズヘッグ目掛けて………………放つ。


「いっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


それは雷の斬撃となって、一直線にニーズヘッグの首目掛けて飛び放たれた。


斬撃はニーズヘッグを通り過ぎ、雲を切り裂き、それでも尚勢いは止まず、遥か彼方の上空へと消えていった。


一瞬の静寂ーーー。


そして次には、ニーズヘッグの首がズレ、ニーズヘッグの体がサァーと空気中に霧散していった。


そのニーズヘッグの最期を視界の隅で捉え………………俺はその場で意識を手放した。


遠くで、仲間達の叫び声が聞こえた。


今回は主人公も一杯一杯だったみたいだね~

それでも最後に良い所を決めちゃうのが主人公だよね♪


主人公おつ(o ̄∇ ̄o)/

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