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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
24/96

新生種 と 脅威

「じゃ、始めるぞ?」


俺はベルナデッタを見遣る。


『ええ。いつでも』


他の皆は、少し離れた場所で俺達を見ていた。


俺は大きく息を吸い込み、地面に両手をつける。

ベルナデッタは大きく腕を広げる。


そして俺達は同時に【詠唱】を開始する。


「土の精霊 我が声を聞け 我が願いを聞け 我が魂に耳を傾けよ 我は願う 我は望む 其が力我に貸し与えん 〈隆土〉!」

『風の精霊よ 我が名はベルナデッタ 我が名 我が声 我が魂 我が力に共鳴せよ 我が力となれ 我が意思を願いと共に 〈天風〉 !』


俺達が用いるのは【精霊魔法】だ。

ここが【エルフ国】で、精霊の力が強いと言う理由もある。


精霊魔法の特徴は【お願い】する事。

当然だ。誰かに何かを頼む時は、お願いするのがスジなのだから。

だから、俺達は【精霊】達にお願いをする。


その力を貸して欲しいと……。


俺は、久し振りの【完全詠唱】だった為、舌を噛みそうになり少し焦った。

それでも何とか【詠唱】を紡ぐ事ができ、俺達は【詠唱】を終える。


そして瞬間…………。


ドゴガガガガ・・・!!


地面が大きく盛り上がり、【世界樹】が押し上げられて行く。


上へ……上へ……上へ……上へ…………。


そして、ドガッと言う大きな音と共に土は地面に落下する。

土煙が立ち篭める中上を見上げると、【世界樹】はまだ上空に浮いたままだった。

それはベルナデッタの【風魔法】によるものだ。


俺は【世界樹】を見上げ、その根っこから目が離せなかった。


「何だ……ありゃ……」


自然と声が漏れる。

俺の頬を冷たい汗が流れる。


「あ……あぁ…………」


いつの間にかこの場に来ていたミシディアが、腰を抜かし絶望の声を発する。


それはあまりに異様な光景……。


【世界樹】の根は、天高く上がっているのにも関わらず、未だその太くて長い根は地中に埋められている。

【世界樹】がこの世界に深く根を張っていると言うのは、どうやら本当のようだった。


けれど、勿論問題はそこではない。


その太い根っこに、巨大な『何か』が、まるでとぐろを巻くように根に絡みつき……【世界樹】の太い根に齧り付いていた。

その『何か』は、竜?蛇?のようで、大きな翼に体は硬そうな鱗で覆われ、鋭い爪と牙が【世界樹】の根にしっかりと食い込んでいる。

地中から出されても尚、まるで【世界樹】の根にしか興味がないと言わんばかりに、根っこを貪っているのだ。


驚愕すべきはその大きさだった。

その全長は、もしかするとこの【エルフ国】全土を上廻る程だ…………。


俺はその異常なまでの光景を暫く呆然として見ていたが、はっと我に返り、すぐ様【鑑定眼】を発動する。


~~~~~~~~~~~~~~

【ニーズヘッグ】

ランクSSS?


世界樹【ユグドラシル】の『根』

より生まれた新生種。

根が瘴気に当てられて根腐れを起

こした為に生まれ出たもの。

世界の根源を食い尽くすまでその

破壊行動は止まる事は無い。


攻撃力・能力など全てが未知数


~~~~~~~~~~~~~~~


「……は、はは。マジかよ」


俺はそれに戦慄した。

喉はカラカラに乾き、体の震えが止まらない。


だと言うのに…………俺の顔に笑みが浮かぶ。


俺は戦いは好きじゃない。

戦わずに解決出来るのであれば、それに越した事はない。


けれど、これは人間の()だろうか。


強者は強者を求める……。

誰かが昔そんな事を言ったのを、何故か今思い出した。


今目の前にあるこれは、紛れも無く【脅威】だ。

それを前にして、俺の心は高揚し、俺の頭は逆に冷めていく。


「な、何だ?!これは!!」


いつの間にかエルフ達がこの場に集まり出していた。

俺はベルナデッタに向き直った。


「ベルナデッタ」

『……はい』

「【世界樹】の根を切り落とす。構わないか?」

「「「「「「な?!」」」」」」


それを聞いたエルフ達が、信じられないとばかりに目を剥く。

けれどベルナデッタは、真剣な面持ちで俺の目を真っ直ぐ見据えて頷いた。


『ええ。構いませんよ。【ユグドラシル】は再生能力が高いですから。貴方がそれを必要だと言うなら、わたくしは貴方の支持に従うまでです』

「?!【大聖人】様?!何を!!」


ベルナデッタは、何とも頼もしい事を言ってくれる。

俺がやろうとしている事は前代未聞だ。

それでも……こんな場面でさえも俺に全幅の信頼を置いてくれるというのだ。


それに応えなければ男ではないだろう。


この場に居るエルフ達が皆驚愕の声を上げる。

俺はその心強い言葉を聞くと一つ頷き、エルフ達の方を振り向き叫ぶ。


「聞けっ!!今から【精霊魔法師】全勢力を持って世界樹【ユグドラシル】に【結界】を施す!!根を切り落としあの化け物を【世界樹】から遠ざけたのち、あの化け物を……討つ!!!!」

「なっ?!ふざけるな!!あんなのに勝てるわけないだろ?!正気か?!」


俺の言葉にエルフ達は食ってかかる。

信じられない者を見る目で俺を睥睨し、完全に恐怖で支配されていた。


俺は内心舌打ちしたいのをグッと堪えた。

今は押し問答する時間さえ惜しいのだ。


すると、エルフ達のある一画からどよめきが走る。

そちらに視線を向けると、金髪を靡かせて、一人の美青年が前に躍り出た。


「お、王?!【エルフ王】?!こんな所で何を?!ここは危険です!!早くお逃げ……!!」


エルフ達が叫ぶのを聞かず、その美青年は大仰に俺の前で膝を折る。


「「「「「「ッ?!な?!」」」」」」


その【エルフ王】の信じられない行動に、皆が一様に驚きの声を上げる。

そんな様子を無視して【エルフ王】は口を開く。


「ご無沙汰しております。セツナ様」

「カーゼノスか……久し振り。けど今は挨拶する時間も惜しい。文句なら後で幾らでも聞く。今は俺の支持に従ってもらいたい」

「文句など……滅相も御座いません。我らエルフ一同、セツナ様の命に従います」


そう言うや否や、カーゼノスは立ち上がり、エルフ達を見回して叫んだ。


「聞いたな!!皆の者!!この世界の【救世主】様の命だっ!!直ちに【精霊魔法師】を集結せよっ!!」


カーゼノスの【救世主】と言う言葉に、皆が一瞬に顔色を変える。

いつもならここで俺が悶絶する場面であるが、こんな緊迫した場面で気にしてる暇はない。


エルフ達の事はカーゼノスに任せる事にし、俺はもう一つの()を打つ事にした。


「ドリュアス」

〝な~に?〟


この場には似つかわしくない、何とも間の抜けた返事が帰ってくる。

音もなく現れたドリュアスは、笑みを浮かべていた。

今では、先程の少女の姿ではなく美しい大人の女性になっている。


「お前と、お前の【眷属】にも力を貸してもらいたい。頼めるか?」

〝 いいわよ〟


あっさりとドリュアスは俺の願いを聞き入れる。

その一言だけで、ドリュアスの【木の眷属】達が一斉に動き出すのを感じた。


「アヤメ!!アルテミス!!ベリアル!!」


そして最後に、俺は頼もしい仲間達の名を叫んだ。


「はい!」

「待ちくたびれたぞ」

『して?我らは何をすれば良いのだ?』


皆は呼ばれて当然だと言わんばかりに、それぞれ返事をする。

その瞳からは、一切の迷いも恐怖も感じられなかった。

ベルナデッタ同様に、俺を信頼してくれているのが伝わってくる。


「お前達は今から【世界樹】の根を切り落とし、あの化け物を【世界樹】から遠ざけろ!化け物が離れたら、【精霊魔法師】達と協力の元、結界の維持に務めろ!!」


三人は重々しく、けれどしっかりと頷く。


「俺はこれから、最大級の攻撃に移る。周りを気にしてる余裕も無くなるだろうから…………ベリアル」

「何だ?」

「その間はお前が皆の指揮に当たれ」

「……分かった」


正直な所、ベリアルとアルテミスの力は拮抗している。

ほぼ同レベルの力だろう。


それでもベリアルを選んだのは簡単だ。

場数の違いである。

アルテミスもそれを理解している為、敢えて何も口にしない。


ベリアルの了承を得てから、俺は【亜空間】から、愛刀の一本【雷切】を取り出した。

【雷切】は、見た目は何の変哲もない普通の刀だ。

けれど、その性質は【雷】を纏い、雷を【両断】するなど、見た目に反して切れ味は抜群なのである。


俺は雷切の刀身を鞘から抜刀すると、両手で柄を握り、刀を横に据えて腰を低く落とす。


周りに叫喚が飛び交っている。


俺はそれらの喧騒を一切無視して、瞳を閉じて瞑目し、全神経を刀に注ぐ。


【魔力】も【精霊力】も刀に流し込む。


そこにあるのは暗闇と………………静寂だけであった。

ある方のご指摘で、


14 閑話~雛形七鈴菜の場合~

病院に強制連行されてしまった事だった

病院に連行されてしまった事だった


23 世界樹 と 異変

「【精霊眼】で地中の中を覗いてみてくれないか?」

「【精霊眼】で地中を覗いてみてくれないか?」


と修正させて頂きました。

返信は不要との事でしたので、こちらでお礼を申し上げます。

有難う御座いましたm(_ _)m

定期的に確認しながら微修正を施してるものの、まだまだ勉強不足で至らない事も多々あると思いますが、今後とも日々精進していくので宜しくお願いします。

こんな未熟者の小説を楽しみと思ってくださる皆様にも、心から感謝致しております。

他にも、何か気になる点等が御座いましたら、お気軽にお申し付け下さい。

勿論、応援メールも下されば大変励みになります。


今後とも【転生】と【転移】の二足の草鞋をどうぞ_| ̄|○)) よろしくお願いします ((○| ̄|_



さてさて、堅苦しい話はこれくらいにして、本編の話でもしましょうか 笑

もうお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、今回の愛刀【雷切】も前回の【三日月】も実際あるらしいですよ?

興味のある方は是非調べてみて下さい!笑

この世界では、ちゃんと【刀】は製造されています。

ですが、何やら見た目がよわっちそ~とか何とかで、基本は剣が主流ですね。

主人公が持つ刀はどれもが、昔の仲間である変わり者のドワーフとの共同制作なので、まさに世界で一本の刀です!

今後名高い刀が出てくるかは…………作者にも分からないので悪しからず 笑笑

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