大聖人 とベルナデッタ
『お久し振りですね。セツナ』
硬直と言う呪縛から、漸く立ち直った守備兵達は、その場で勢い良く膝を折り頭を垂れる。
ミシディア組やテントの中に居た守備兵も、態々外に出て来て同様に膝を折った。
目の前の女性は【ベルナデッタ】ーーー。
【大聖人】と呼ばれ、ドリュアスと同じくエルフ達から【神】のように敬われている。
半透明な体にエルフ特有の耳、美しい白い髪が地面スレスレまで伸びた、とても綺麗な女性である。
【濃厚色】の髪は強い魔力などの表れと言うが、彼女の【白】も、言わば同じ意味を成す。
寧ろ、俺のような言葉だけの奴よりも、彼女は真の【超越者】と言えるのだった。
ベルナデッタが【半透明】な理由は、少々込み入った事情があり、けれどもそれは彼女自身が望んだ結果でもある。
ベルナデッタは禁術により、自らの魂を、この【エルフ国】に繋ぎ止めた。
幾千幾万の間、ずっとこの【エルフ国】、延いては、【アルガナリア】を見守り続けていたのである。
それが、【大聖人】と言われる所以であった。
「やあ、ベルナデッタ。久し振り」
「「「「「なっ?!」」」」」
俺がベルナデッタに気軽に挨拶をすると、守備兵達は目を剥き、何かを言おうと口を開くが、次のベルナデッタの行動によってそれが成される事は無かった。
ベルナデッタが俺の元に駆けつけると、大きく腕を広げて、俺を胸に抱いたからだ。
『お帰りなさい。セツナ』
何とも情けない話だが、彼女は俺よりも身長が高い為、俺は嫌がおうにも彼女の谷間に顔を埋めるハメとなる。
しかもベルナデッタの胸は………………豊満なのだ。
俺は若干の息苦しさを我慢し、何とか首だけを動かしてベルナデッタを見上げて一言。
「ただ今。ベルナデッタ」
その笑顔は、正に極上の花であった。
彼女の左薬指の【クンツァイト】が嵌め込まれた指輪が、陽の光に反射して一際輝いた。
俺達は、少しの間熱い抱擁を交わしてから、改めてエルフ国に入る為移動した。
ここはまだエルフ国ではない。
正確に言えば、【エルフ国】はドーナツ型の3層の構造で成っている。
第一の壁が、ドリュアスが守護する【惑いの森】、第二が守備兵達が荷物検査などをする広場、第三も森だが、実はその木の上には、弓を携えた守備兵が潜んでいたりする。
基本、ドリュアスが【惑いの森】で来訪者を選別するので、ここまでする必要はないのではと思われがちだが、エルフとは意外に警戒心の強い種族であったりするのだ。
そして、その最後の森を抜けると、漸く目的地である【エルフ国】の門が現れる……と、そんな感じである。
なので、俺達はエルフ国に入る為に、三層目の森に進んでいた。
守備兵達も俺の正体に気付いたらしく、先程とは打って変わって、今度は目を輝かせて俺を見てきている。
何ともやりづらい………………。
クルトやミシディアを彷彿とするので、止めてもらいたいものである。
そして、俺は数歩先に進んで…………止まった。
…………………………………………………………何だ?
そんな俺の様子に、ミシディア達や守備兵達が小首を傾げる。
けれど、そんな不審な行動をしたのは俺だけではなかった。
ベルナデッタ、それにアヤメやベリアル、アルテミスまでもが目を見開いて、その場で硬直していたのだ。
俺の背中に冷たい汗が流れるのを感じる。
何かが体の中から這い上がってくるような…………変な違和感がある。
これは何だ…………?
何が起こっている…………?
そう……これはまるで…………恐怖………………
久しく味わって来なかった恐怖が俺を支配していた。
「………………………………………………来る!!」
俺は不意に地面を見遣り呟くと、それと同時に、地面が大きく揺れた。
ゴゴゴゴ・・・!!
それはまるで、地獄の門が開く音のようにも聞こえたのであった。
やっと5人目(だよね? 笑)のヒロインが登場ですね!
けれど、着いて早々またもや厄介事の匂いが……。
さて、どうやる事やら?
活動報告始めました!
気が向いたら見てみて下さい♪




