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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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惑いの森 と ドリュアス

俺達は早朝に村を出た。


薄情だと思われるかもしれないが、村長や村人達には何も言っていない。

また囲まれて色々質問攻めにされるなど真っ平御免だった。


それでもシーマスには先読みされていたみたいで……。


「お世話になりました、セツナ様。また近くまでいらしたら是非お寄り下さい」

「ああ。気が向いたらな。シーマスも元気で」

「ええ、貴方様も。何やらまた厄介事に巻き込まれているようですが、もし私の力が必要でしたらお声がけ下さい。貴方の為ならどんな助力もおしみませんから」

「はは。それは心強いな。勿論頼りにせてもらうさ」


そう言って、俺達は固い握手を交わすのだった。


俺は皆を見渡す。


「さて、と。ちょいとばかし、予想外な寄り道になっちまったが、ここからは真っ直ぐエルフ国に向かうぞ!お前ら!」


俺の言葉に、皆が迷う事なく頷く。


そこからは、本当に宣言通り、寄り道もせずに真っ直ぐエルフ国へ進んだ。

途中何度か魔物の襲撃にあったが、そこは相変わらずに俺の仲間はチートな連中が揃っているので、難無く瞬殺である。


道中の食事は、専ら熊料理だった。

大半は売却したが、それにしても量が多過ぎたので、残りは未だに俺の【亜空間】の中である。

ベリアルが「暫くは熊はいらん」と愚痴っていたが、俺も同感だ。


そして、俺達は今エルフ国最初の関門?の前に来ていた。


【惑いの森】ーーー。


この森に踏み込んだ者は、エルフ以外は誰であろうと、漏れなく森の()()に振るいにかけられる。

ここで、エルフ国に入国出来る者を選別しているのである。


「さて、では行きますか」


俺達は迷わずに【惑いの森】へと足を進めた。


暫くすると異変に気付く。

本来なら一時間弱で森を抜ける事が出来る筈なのだが……。


「セツナ」

「んー?」

「どうやら()わされたみたいだぞ?」

「え?」


それに強く反応したのはミシディアだった。

そう、俺達はかれこれ二時間以上も森をさ迷っていたのだ。


「あー……やっぱな~」

「そんな!ここには私達がいるんですよ?!」


俺は落ち着いていたが、ミシディアを初め、他のエルフ達は動揺を露わにしていた。


気持ちは分かる。

俺達は兎も角、エルフであるミシディア達が【惑いの森】に()わされるなど、本来は有り得ないのだから……。


「ちょっと止まってくれる?アルテミス」

『承知した』


俺はアルテミスに停止を頼むと、ひらりと馬車から飛び降りた。

そして徐に、まるで目の前の友人に話すように口を開く。


「どうせ()てるんだろ?いい加減出てきたらどうだ?【ドリュアス】」


すると、まるで森全体に反響するように笑い声が辺りに響く。


〝うふふふふふ〟

「「「「「?!」」」」」


エルフ組はそれに驚愕して、瞬時に身構える。

けれど俺達は特に驚く事も無く、いつも通り自然体で、木々しかない筈の森を見詰めるだけだった。


すると次の瞬間、すーっとその木々から、あたかも最初から居たかのように、一人の少女が宙に浮いてそこに現れた。


半透明で濃い緑の髪に、色とりどりの花冠を頭に乗せた少女は、音もなく俺に近付き、俺の首に腕を回してくる。


「少しイタズラが過ぎるんじゃないか?ドリュアス」


彼女こそが、この【惑いの森】の番人であり、この『森そのもの』である。


〝あら、そうかしら?私に挨拶も無しに、誰かさんが素通りしようとするからじゃないの?〟


そう言って、少し拗ねた素振りを見せるドリュアス。

俺はそんな彼女に苦笑しつつも、素直に謝罪の言葉を口にする。


「すまなかったよ。そんなつもりは無かったんだが……機嫌を直してくれないか?」


それだけで彼女のご機嫌は直り、笑いながらクルクルと俺の周りを浮遊する。


「……お前ら何してるんだ?」


何やら呆れたような口調のベリアスに俺は振り向くと……………………俺もベリアル同様の反応になってしまった。


何故かエルフ組が、額を地面につけて平伏しているのだ。

先日の、とある村の村長にも負けず劣らずの土下座である。


すると、ミシディアが代表して、緊張しながらも、から廻った口上をする。


「お、お初にお目見え致します!【番人様】!ほ、ほほほほ本日もご機嫌うるわ……」

〝それよりもセツナ。今回はどう言った要件で来たの?〟


ドリュアスは、ミシディア達を眼中に無いと言わんばかりに、完全無視をする。


まぁ、確かに、緊張し過ぎて何を言ってるか分からなかったが……。


それでも、流石に同情してしまうので、俺がドリュアスに口添えをしてやろうと思う事にした。


「うん。まぁでもその前に、彼女達の話を先に聞いてやってくれないかな?」

〝興味がないわ〟


一刀両断である。


俺は苦笑するしかなかった。


ドリュアスとは、エルフ達にとっては、かの【大聖人】と並ぶ雲の上の存在で、正しく【神】に等しい存在とされているのだ。


その上、彼女は【大聖人】と違い、よっぽどのことがない限り、その姿を人前に晒す事は無い。

ミシディア達の反応を見るに、間違いなくドリュアスの姿を初めて目にしたのであろう。

そんな至高とも呼べる者が今目の前に居るのだから、緊張して然るべきかもしれなかった。

そうは思うものの、ドリュアス本人が興味が無いと言うのだから、俺がこれ以上何かを言う事は無い。


ドリュアスがエルフを無条件で通すのはただのお役目だ。

特に何かを思ってやっている訳では無い。

ドリュアスにとっては、興味があるかないかの二択しか存在しないのだ。

そのドリュアスが、エルフの中で興味の対象とするのは、恐らく【大聖人】と【エルフ王】くらいではないだろうか?


俺は彼女に、事の経緯を大まかに説明する事にした。

話を聞き終えたドリュアスは、少し悲しそうにしながら言う。


〝そう……じゃあ、今回もあまり長くは居ないのね〟

「うん……ごめん。でも出来るだけ時間を作ってまた会いに来るよ。その時にでもゆっくり話をしよう」

〝……分かったわ。貴方は決して嘘をつかないから信じるわ〟

「ありがとう。ドリュアス」


そう言うと、ドリュアスは俺の頬に軽く口付けを落とす。


〝では貴方達を出口まで案内してあげる〟


その一言だけで、俺達の目の前に、出口らしき道が現出する。


〝それじゃ、必ずまた来てね〟

「ああ、必ず来るよ」


俺の言葉に満足したのか、ドリュアスは最初に現れた時同様に、すーっと消えていった。


「おい!いつまで呆けてるつもりだ!」


ミシディア達は、まだ正座をしながら呆然とその場で硬直したままだったので、俺は一喝した。


何やかんやしながらも、俺達は【惑いの森】から漸く出る事が出来た。


森の先は少し開けた場所になっており、守備兵らしき軽装のエルフが数名と、休憩所の役目をするテントが一つあるだけだった。


その内の守備兵2人が俺達に近付いてきた。


「【番人様】に認められし者達よ。よくぞ参られた。念の為に荷物を改めさせてもらうぞ。決まり故許せ」


そんな守備兵に俺は苦笑する。


何度聞いても、この口上だけは慣れなかった。

何でも、この台詞は、この場所の守備兵に任命された時に最初に覚える口上らしい。

いつからだとかは誰にも分からず、気付いたらこれに決まってたとか何とか……。


う~ん…………謎だ。


とは言え、別段断る理由も無いので、俺は了承しようと口を開きかけ……閉じた。


『その方達は良いのですよ』


その声に守備兵達は眉間に皺を寄せ振り返り、そして固まった。


俺はその姿を見て目を細める。


『お久し振りですね。セツナ』


俺の最愛の人の一人【ベルナデッタ】が微笑を浮かべて立っていた。

気付いた方も多いかと思いますが【ドリュアス】とは………………はい!正解です!【ドライアド】の事ですね~。

木の精霊さんです。

そのドライアドさんが、この惑いの森を守っておられます。

ドリュアスさんは意外にドライな方なのです。

…………あ、別にダジャレじゃないよ? 笑笑

興味のある者と無いものがハッキリしているので、興味の無い者にはかなりどぎついです。

と言うか、全く眼中に無いです 笑笑

そこはやはり主人公!!

木の妖精さんにもめっちゃ愛されてますね~♪

さて、次回は漸く【あの方】が登場ですよ。

お楽しみに~ヾ(o゜ω゜o)ノ゛


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