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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第一章 二度目の異世界は十年後?!
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再召喚 と 依頼

俺は暫く目を(しばたた)かせ、ゆっくりと瞼を上げた。

俺の目に映るその場所は、白壁に囲われた円柱型のホール。

四方には幾何学的な模様が彫られた太い柱があり、俺達の足元には、光を失ったばかりの【魔法陣】が今は鳴りを潜めている。

周囲を見渡せば、俺同様に30人程の生徒が、何が起こっているのか分からずに、放心状態で立っていた。

俺達がいる魔法陣を囲むように、黒法衣を纏った者が10人、白法衣を纏った者が同じく10人。

それらをざっと確認した俺は、誰にも気付かれないようにニヤリと笑うのだった。





その女神は今俺の目の前に立っていた。

悪戯を成功させたとでも言うように、楽しそうに笑っている。

先程まで聞こえていた生徒達の笑い声も、車道を走る車のエンジン音も、小鳥の囀りさえも、全てが嘘のように静まり返っていた。


それは時間が停止したモノクロの世界ーーー。


そんな世界で俺と女神は向かい合っていたのだ。

俺は混乱する頭で何とか現状を理解しようと試みたが…………


分からん。


ただその一言に尽きる。

流石にあまりに唐突すぎて、まるで脳が拒否反応をしてるようで思考が纏まらない。

そんな俺の胸中を知ってか知らずか、その女神は笑顔のままに口を開いた。


「やあ、久しぶりだね?セツナ。元気にしてたかい?」


まるで友人に話し掛けるように笑いかける。


「それにしても相も変わらず、其方の気配は分かりずらい。探すのに少々手間取ってしまったよ」


女神はやれやれと首を振っていた。

そこで漸く、俺は我に返り女神を睥睨した。


「……お久しぶりですね。女神様。それで?どうやら俺を探してたようですが、何かご用でしょうか……?」


俺は警戒を怠らず、女神の一挙手一投足に注意をしながら問う。

そんな俺を、少しおかしそうに見遣りながら、女神は喋る。


「そんなに警戒しなくても大丈夫さ。君は確かに【理】から外れた存在ではあるし、それを簡単に容認出来るものではないが、今までは少なくともこの【地球】に悪影響が及んだ事はないからね」


以前に会った時にもそんな事を言っていたのを思い出す。

俺のこの【転生者】と言うものは、【理】から外れた存在なのだと女神が教えてくれた。


【輪廻転生】と言う言葉を聞いた事があるだろう。

死んだ人間の魂が、新しい器に宿り、現世に再び生まれ変わると言うあれだ。

けれどそれは、【あの世】と呼ばれる場所で、魂が浄化され、まっ更な新しい魂となって現世に舞い戻ると言う事で、俺のように【生前】の記憶が残ったまま【転生】するのは、女神から見ても稀有な存在なのだそうだ。

生まれたばかりの子供が、稀に前世の記憶を持っていると言われているが、それはただ単に魂が未だ混濁しているだけで、現世に馴染んでいないだけに過ぎない。

実際にその信憑性を探ろうとしてみても、その記憶と完全に合致する事はほぼ不可能だ。

そして、成長するにつれ、その魂が現世に馴染んでくれば、自然と混濁した魂が【正常】に戻る。

故に、俺の存在は女神すら軽視出来ぬ程に【異常】なのだそうだ。

しかも、ただ【転生】するだけでなく、女神曰く、俺の存在を感知する事は、女神であっても容易に成せないらしい。

俺の存在を初めて感知出来たのは、俺があちらの世界に【勇者召喚】された時だと言う。

なので、帰還時に俺に接触を試み、つらつらとそんな説明をしてきたのを思い出す。


「……それではどんな用件で俺に会いに来たのですか?」


女神の意図が全く読めない。


態々俺を探す理由は?

【理】から外れた俺を消しに来たのか?

だがそれなら前に会った時にとっくにやってるよな?

俺の監視?

けれどそれも俺の接触理由にはならない。

監視するならただ遠くで見ていればいいだけだ。

だったら何の為に?


色々思索してみるが、結局は堂々巡りだった。

女神が俺を探した理由が、結局の所分からなければ、流石の俺でもこの状況を楽観視する事は出来ない。

そう思っていたが、女神はすんなりと俺の疑問に答えるように口を開く。

その言葉に、俺は我が耳を疑った。


「あちらで再び【勇者召喚】が行われた」

「……は?」


俺は一瞬何を言われたか分からず、頭が真っ白になる。

何故?

最初に思い浮かんだ事だった。


【勇者召喚】を行うと言う事は、それだけ切羽詰まった事態に陥ってると言う事の筈……。

召喚が出来るのは、唯一王城にある地下ホールだけなので、必然的に王族のみが召喚を行える。

あの人達が、何の理由も無しに【勇者召喚】を乱発するとは思えなかった。

何より、【勇者召喚の儀】と言うものは、思いの外危険な魔法なのだ。

ならばやはり、それだけの事をしてでも、【力】ある勇者を欲したと言う事か……?


俺は苦悶の表情になる。

そんな俺を見て、女神は苦笑する。


「ちゃんと順を追って説明をしてやるから、まずはワシの話を聞け」


確かに……俺はまず状況を把握しようと、女神の言葉を一言一句洩らさぬように耳を(そばだ)てた。


女神曰く、俺が帰還して暫くは平和な世界が続いてたそうだ。

俺が一番懸念していた【あの事】についても、順調に回復の一途に向かっていたらしい。

けれど、それからたった5年で、世界は再び混沌に見舞われる事となる。

突如として、魔物が各国に襲撃を図ったらしいのだ。

それこそ何の前触れもなく……。

その魔物の変貌ぶりも常軌を逸してたそうである。

今迄にない程の力、突然変異した魔物まで現れ、人々は恐慌としたそうだ。

それと同じくして、とある場所に突如都市が建てられていた。

それは女神さえも予期せぬ事で、本当に気が付いたらそこにあったそうだ。

それこそ、瞬きの間に一瞬の出来事であった。

その光景に女神すら戦慄し、目を疑わずにはいられなかった。

その都市の指導者らしき者は、自らを【帝王】と名乗り、都市の国を【アスラ帝国】と命名し、世界に宣戦布告をしたらしい。

それからも幾度となく各国は魔物の襲撃にあい、悩んだ末に、再び【勇者召喚の儀】を執り行う事に決定したと言う。


女神がそこまで話終えると、一度言葉を切った。


「帝王……帝国……しかも、女神様すら感知出来ない事態……それってまるで……」


俺は女神から齎された情報を反芻しながら頭の中を整理し、一つの可能性に思い至る。

それを女神は頷き、俺の行き着いた考えを肯定した。


「ああ……お前同様に【理】から外れた存在である可能性が高いな」


それでもまだ確証が得られないので、何とも言えないらしく、女神様は珍しく渋い顔をした。


「今回の【勇者召喚】には、元より複数人の召喚ではあったが、不測の事態に備え、其方を含めた生徒30人を【異世界】に送るつもりだ」

「ッ?!それは……!!」


俺はその言葉を聞き、女神に食ってかかろうとしたが、俺の気持ちを逸早く察した女神が、俺を落ち着かせるように優しく言った。


「案ずるな。今回の【勇者召喚】は前回とは勝手が違う。ちゃんと協力者も居るし、何より今回の大規模召喚は、ワシの一存でもある。本来数人程度の召喚を、30人まで引き上げたのだ。【術者】達の影響はそれ程ないよ」


それを聞いて、俺は肩の力を抜き胸を撫で下ろす。


「だが、ワシが出来るのはここまでだ。本来、神であるワシは、直接的に【世界】への介入は認められておらん」

「………………」

「故に、せめてもと思い、【勇者召喚】の中に其方を紛らわせる事にした」


すると女神は、真っ直ぐに俺の目を見据え、きっぱりと言ってきた。


「頼む、セツナ。再び【アルガナリア】に赴き、原因究明とその解決を其方に依頼する」


女神が本来、一介の人間風情に頼み事をするなど前代未聞だろうが、俺は正式にその依頼を受理するのだった。

それにこれは、俺にとっても願ったり叶ったりである。

こんなチャンスを逃すつもりはない。


「確かに承りました。俺の最善を持ってその依頼を遂行しましょう」


俺は女神に対して不敵に笑う。


その瞬間、待ってましたと言わんばかりに、俺の足元には懐かしくも俺が切望してやまなかった【魔法陣】が輝きを放った_______________。

ここまで読んで下さり有り難うございますm(_ _)m


まだ迷走中で、もしかしたら若干編集するかも? 汗

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