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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第二章 エルフ国での脅威誕生
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ボブベアー と ワーム

その後、俺達はボブベアーの死体を、魔石と肉塊に分けて回収した。

魔石は売却予定で、肉塊は勿論熊鍋用にだ。

魔石は武器や防具の素材にもなるのだが、ボブベアーの魔石では大した物が作れる訳では無いので、俺は迷う事なく売る事にする。


程なくして、漸く正気に戻った村人やギルメン達から、一斉にどよめきが走った。

色々と質問攻めに合ったが、そこはシーマス。

ちゃんとその場を納めてくれた。

持つべきものは昔の仲間である。


それからは、村長が先刻の非礼を詫びに、再び土下座をしに来た。

この男、スキル【土下座】を持っているのではないかと本気で思ってしまう。

そう思わせる程に、村長の土下座は真に迫るものがあるのだ。


村長は、シーマスやギルメン一人一人にも頭を下げていった。

ギルメン達も、村長の事情を知っていた為、その気持ちを汲んで快く謝罪を受け入れた。


そして翌日ーーー。


俺達は例の洞窟の前に立っていた。

あの後、村長とシーマスを交えて、俺に正式な依頼として頼んできたからだ。

俺は結局その依頼を受け入れた。

シーマスの頼みと言う事もあったが、何より、俺がボブベアーの発生理由を明白にしておきたかった為でもある。

仲間達は特には何も言わなかった。


ただ、ここに居るのは、俺とアヤメとアルテミスとベリアルの四人だけである。

エルフ組はお留守番だ。

理由は簡単で、【精霊魔法師】である彼女等は、精霊魔法は得意とするが、実は近接戦闘は苦手とする。

一概にそうとは言えないが、少なくともエルフ五人組はそれを得意としていないのだ。

この洞窟は落盤の恐れがあった為、極力魔法は使用したくなかった。


それに、他にも理由はある。


「汚れるのは好まぬが、久方の戦闘だ。思う存分に暴れさせてもらおうか」


と【人化】をしたアルテミスが獰猛な笑みを浮かべる。


偶には、コイツらにも出番が無いとな……。


別に戦いが無いならない方が良いが、暴れれる時は存分に暴れさせてやりたい、と俺は思っている。


「村長に、事が終わったら風呂を提供してくれと頼んでいるから、心配せずに存分に暴れていいぞ?」

「何?!それは真か?!」


俺が言った言葉に、アルテミスが凄い勢いで食いついてくる。

俺はそれに苦笑する。

相変わらずの潔癖症である。


「とは言うものの、さっきも言ったが、落盤の恐れもあるから程々にな」

「心得ている」


他の2人も、俺の言葉に頷いて同意する。


俺は【亜空間】から【三日月】(正式名称「三日月宗近」)を取り出した。

これは、俺の愛刀の一つで、刀身には三日月のような打除けが煌めくように浮かび上がり、それは正に『名刀』と呼ばれるに相応しい一振りである。


とは言うものの、俺は日本で鍛錬を行ってきたつもりではあるが、それでも俺も実践は久方振りなのだ。

俺は何度かその場で素振りをして、三日月を手に良く馴染ませる。


「よし!んじゃ行きますか!」


俺の号令を皮切りに、俺達は洞窟内へと足を踏み入れた。


それは正に蹂躙と言えるものだった。

アルテミスがボブベアーの胴体を引きちぎり、ベリアルは拳で粉砕し、アヤメは短剣で急所を的確に突き、俺が三日月で一閃する。

ボブベアーが何体居たのかは知らない。


50?100?


他の者達が見たら、もしかしたら逆にボブベアーに同情していたかもとは思わずにはいられぬ程に、俺達はボブベアーに容赦がなかった。

終いには、ボブベアー達の方が俺達から逃げようとする始末である。

本来の魔物からは有り得ない行動であった。

それすらも俺達は許さず、ボブベアーを一掃していく。


程なくして、俺達は洞窟の最奥にある開けた場所に出る。

誰一人として息は乱れては居なかった。


そしてその俺達の視線の先には、【ワーム】がとぐろを巻いて俺達をじっと見ていた。

【ワーム】とは、巨大な蛇で、背中に数枚の小さな鳥のような羽根を生やし、巨大な口からは長い牙が飛び出しており、その牙の間からはチロチロと細長い舌を覗かせている。


「おい、あれ……」

「ああ。分かっている」


ベリアルの指摘に、俺は内心舌打ちをしたい気持ちをグッと抑える。


ワームのどぐろの中心には、例の【ギーネ草】があり、その傍らには【魔法陣】らしきものが視界に捉えられた。

まるでワームがその【魔法陣】を守るかのように……。


ワームが俺達を敵と認識したのか、小さな羽根を振動させ、口を大きく開く。

すると、そこに高温度の炎が集まり、一気にそれを俺達目掛けて噴出する。


俺達は、二手に別れて、それを難無く回避した。


「おい!瞬殺でいくぞ!薬草が燃えてなくなったら元も子も無いからな!」


ワームが喋れたら「ふざけるな!」と一喝しそうな事を、俺は皆に当然とばかりに叫んだ。

喋れなくとも意味は理解したのか、俺を睥睨するワームは、再びあの大口を開口する。


「解して断て〈断空〉!」


アヤメが【短縮詠唱】を呟き、ワームの大口に魔法を放つ。

ワームは一瞬目を大きく見開き、閉じた口からはボフッと言う音と共に、小さな鼻から煙が上がる。


続いて、長い尻尾を俺達目掛けて大きく振りかぶる。

周囲の事などお構い無しで、その尻尾は洞窟の岩壁を抉り、あわや洞窟が崩壊するのではないかと思った瞬間、アルテミスが【無詠唱】で風のシールドを張り、岩壁の落下を防ぐ。


俺とアヤメが横っ飛びで軽々ワームの尻尾を回避すると、すかさずベリアルの魔力を纏った拳が、ワームの脳天を直撃し、ワームが轟音と共に地に激突する。


そして俺が、ワームの首目掛けて、三日月で【音速居合切り】を放つ。


すると、一瞬の停止ののち、ワームの頭が静かに…………ズルリと地面にずり落ちた。


それは何とも呆気ない幕切れである。

恐らくワームは【死】を実感する事なく人生の幕を閉じたのだから……。


もう一度言うが、誰一人として息を切らしてる者はここには居なかった。

ワーム「へ?あれ?もうワシの出番終わり?早すぎない?ねえ……アンタら強すぎじゃね?ワシ、これでもランクSよ?次の出番は………………ない?そうですか…………(シクシク)」

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