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【転生】と【転移】の二足の草鞋  作者: 千羽 鶴
第一章 二度目の異世界は十年後?!
12/96

下級生 と 告白

この回が一番難しかったです~(´;ω;`)ウゥゥ


何故こうなった?!

こうなる予定では無かったのに……


全く期待せずに見て下さい。

(え?今迄も期待してなかった?そんな悲しい事言わないで~)

それからは皆で軽く近況報告をして別れ、俺は今昼を少し過ぎてから王城に戻ってきた所だった。

他の生徒達も今頃は昼飯を終え、午後の実技練習の為に、各々食休みしている頃だろう。

俺は生徒達に見付からないよう気を配りながら、シェパードさん(王城のお抱え料理長)に、何か軽く摘めるものがないか聞く為に料理場に足を運んでいる途中だった。

けれど、渡り廊下を中腹まで来た時、何とも下ひた笑いが耳について俺は眉を顰める事となる。

それは中庭の一つの、丁度死角になっている所からのようで、俺はその声の方に足を向けてみる事にした。


「ぎゃはは!いい格好だな!おい!」

「ぷぷぷ。流石鈴本くんは天才だよ!」

「くくく。本当だね。もう魔法を習得するなんて」

「いひ、いひひ……異世界……最高……」


俺が目を向けた先に居たのは、四人の男子生徒と、それに取り囲まれるように一人の女子生徒が、何故か水浸しで棒立ちで立っていた。


「……………………」


スっと俺の心が一気に冷ややかになるのが分かった。

どこにでもこう言う馬鹿は存在するものだ。

目の前にあったのは、典型的なイジメだった。

特に【異世界】特有の空気に当てられ、増長するやからも現れるだろうと思ってはいたが、実際に目の当たりにすると気分が悪い。

見た所、恐らくはこれが初めてでなく、日常的に行われていたのだろう事。

その少女は半ば諦めつつ、彼らが飽きる迄、じっと耐えるつもりであるようだった。


ん?あれ?あの子は確か…………


何となく見覚えのある子な気がして、俺は男子生徒達の所へ向かい、背後から声をかける。


「…………ねえ?何してるの?」


男子生徒達は俺の声に一瞬ビクッとなったが、俺の姿を捉えると、心底安堵した顔をした。


分かりやすすぎである。


俺の顔を知ってるとは思えなかったので、当然と言えば当然かもしれない。

自分で言うのもなんだが、第一印象はまるっきし喧嘩の弱いやつに見えるだろうからな。

少女の方は驚いた顔をして、こっちを凝視していた。

と言っても、彼女の目は前髪で隠れている為、視線で何となくそんな感じがしただけだが……。

それよりも俺は、今一度男子生徒達に声を掛けた。


「何してるの?」

「はー?何だてめぇーは。何でもいいだろ!あっち行けよ!」

「見た事ない顔だけど、上級生かなー?でも痛い目みない内に消えた方がいいよー?」

「くくく。そうそう。何か弱そうだし」

「いひ、いひひ……正義ぶっても……勝てない……可哀想……」


などと口々に好き邦題行ってくる。


正直言おう…………俺は怒っている。


さっきの口振りからして、恐らくは男子生徒の一人は既に魔法を使えるみたいだが、確かに半日で使えるのは大したものだ。

もしかしたら【魔法書】か何かを読んだのかもしれない。

この王城では、希望があればある程度までの本は自由に閲覧する事が可能だからだ。

けれど俺から言わせれば所詮その程度でしかない。

魔法の知識を碌に知らないで、ただ新しいおもちゃを手に入れてイキがっているだけの馬鹿である。

それに、魔法をこんな下らない事に使用する事も許されないし、何よりも、たった一人の女子生徒を、寄って集って男が見世物にするなど言語道断だ。

こんな事をする連中には、多少キツイお灸が必要だろう。

とは言うものの、まずは女子生徒の保護が最優先だ。

そう思い、俺は未だ何か捲し立ててる馬鹿四人組を無視して、少女の傍に行き、気付かれないように【亜空間】からコートを取り出して少女にそっと羽織らせた。

少女は一瞬キョトンとしてみせたが、その後どうすれば良いのか分からず、ただオロオロとするばかりだ。


「…………おい。俺の事を……シカトしてんじゃねぇーーーーーーー!!」


そんな俺達のやり取りが相当気に食わなかったのか、男子生徒の一人が唐突に右手を上げ、【詠唱】を開始する。


「我が手に集まり 其の者を撃ち抜かん!!〈火球〉っっっ!!!!」

「ッ!!」


背後で少女が息を呑むのが聞こえたが、俺は表情を変える事なく、ただ手を一振りするだけ……それで終わる。


「「「「「……え?」」」」」


男子生徒だけでなく、女子生徒も今何が起きたのか分からず、疑問の声を出す。

俺に向けられた火の玉は、俺が腕を一振りするだけで簡単に消失したのだった。

男子生徒は状況についてこれないようだったが、すぐに顔を真っ赤にしてプルプル肩を震わせながら、今度は連続で魔法を放ってくる。


〈火球〉〈風球〉〈水球〉〈土球〉と…………。


そのどれもが【球シリーズ】(俺命名)と呼ばれる、初級中の初級である。

僅かでも適性があれば、赤子でも使えると言うが、それにしても威力もスピードもないお粗末な代物だった。

俺は、魔法を発動する事も無く、ただ片手を振るのみ……それだけだ。

力の差は歴然、こんな連中程度に魔法を使用するなど馬鹿らしい。


「ぜぇー……はぁー……」


男子の方は【魔力枯渇】に陥ったのか、肩で息をしながら、顔面は蒼白であった。

他の生徒達も、現実について行けずただ呆然とその場で見ている事しか出来ないでいる。

俺は最後の駄目押しとばかりに、男子生徒達にニコリと笑ってみせた。


「で?まだ続けるの?」


それだけで効果は一入(ひとしお)だ。

それを聞いた男子生徒は、一斉に「ヒッ!」と蛙の潰れるような鳴き声を出し、魔法を使用していた男子生徒を引き摺るように、一目散にその場から逃げていった。

俺はそれを見届けてから、少女の方に向き直る。

少女も未だ現状が理解出来てないのか、呆然と立ち尽くすばかりだった。

なので、俺はそんな少女の目線に合わせるように少し屈み、優しく声を掛けた。


「大丈夫?」

「……え?あ、ははははは、はい!!」


漸く少女は意識を取り戻し、慌てるように返事をする。

そんな少女に苦笑しつつも、俺は片手を少女に向ける。


「少しじっとしててね?」

「え?」


少女が小首を傾げる。

俺は気にせず【無詠唱】で魔法を発動した。


「ッ!!」


すると少女の濡れた服や髪が、見る見る内に乾いていく。

少女は驚きに目を見開いていた。

俺は【火】と【風】の【複合魔法】を使用して熱風を作り上げ、衣服を乾燥させたのである。

少女が来ていたのは、体操服のようなもの(この後の実技練習の為に着ていたと思われる)だったのだが、濡れた衣服がピッタリ身体に張り付き、少女の……その……豊満な胸がくっきりと浮かび上がり、目のやり場に困ってしまった為の最善の策だった。


いや……一応俺も男だからね…………。


などと誰に聞かせるでもない言い訳をする。


「よし!これでいいかな」


すっかり乾いた自分の体を見て、少女はハッとして慌てたように小声で俺に礼を言ってきた。

それに俺は「気にしないでいいよ」と言ってから、再び少女に目線を合わせる。


「君は確か、一年の佐々木さんだったよね?」

「……え?な、何で……」

「何でって……同中だったし、それに何度か図書室で話た事もあるよね?佐々木さんは覚えてなかったかもしれないけど……」

「ち、ちが……!!」


そう言うと、佐々木さんは首が取れんばかりに大きく頭を振って否定する。

どうやら俺の事は覚えていたようだった


彼女の名は【佐々木一二三】と言う。


同じ中学校出身で、一つ下の後輩だった。

彼女の事は、図書室でよく見かけていたので顔だけは知っていたが、特に話し掛ける理由も無かったのでその程度の認識でしかなかった。

彼女と時折話すようになったのは、今のように彼女がイジメにあってるのを遭遇してからだ。

その時のイジメ相手がさっきの四人組だったかどうかは覚えてない。

と言うか、さっきの四人に既に興味が無かったので、俺の記憶から抹消されてるけど……。

その時も少しばかり小細工をして助けた事があった。


そんな事を思い出しかながら彼女を見ると、何かを必死に伝えようとするが、上手く言葉にならず、結局は俯いて口を閉じてしまった。

俺はそんな変わらない彼女に苦笑する。

彼女はとても内向的な性格だ。

昔も、俺から話掛ける事が殆どで、彼女から話しかけられた記憶はあまりない。

まさか、同じ高校に彼女が入学していたとは思いもしなかった。


なんせ、ここ最近はよく屋上で黄昏ていたからな……。


前に何故イジメられて言い返さないかと聞いた事がある。

今思っても何て無責任な質問をしてしまったのかと反省してしまうが、俺はてっきり、言い返して更にイジメが悪化するのを恐れてるからだと思ったが、彼女はたった一言「争いたくないから」とそう言ったのだ。

俺は自分の見通しの甘さを認めるしかなかった。

彼女は自分が傷付く事よりも、他者を傷付けてしまう事を良しとしなかったのだ。

そんな彼女が、いきなりこんな訳の分からない【異世界】に送られ、今日から戦いを強要されるのだからたまったものじゃないだろう。

俺はそれとなく、彼女を気にかけるようにと、今日から指導に当たるだろう【聖騎士四天王】の顔を思い浮かべる。

とは言え、今は俺が傍にいる事で彼女を追い詰めてるのだと思い、俺は静かにこの場を離れようと踵を返した。

けれど、そんな俺の足は佐々木さんの呼び止めの声により止まる。


「ま!待って……!!」


珍しくもその声は思いの外大きく、本人も自分の声に驚いている様子だった。

俺は、佐々木さんの方に顔を向ける。

けれど、振り向いた彼女の顔はまるで泣いてるように見えて……俺は咄嗟に何かを言わなければと思い口を開いたが、その瞬間、佐々木さんの声に遮られる事となった。


「好きですっ!!!!」

「「「は?」」」

「…………ん?」


……………………あれ?何か今俺以外の声が聞こえなかったか?


佐々木さんの唐突な告白に一瞬呆けてしまったが、何故か背後でも疑問の声が聞こえたので、俺は声のした方に顔を向けた。

すると、そこに居たのは七鈴菜さんと、それにアリアまでもが、呆然とこちらを見て固まっていた。


「「「……………………」」」


こんな告白の場面を見られた羞恥心と気まずさで、俺達は何とも言えない微妙な空気になる。

佐々木さんの方を見ると、告白などするつもりはなかったのだろう。

つい勢い余って口走ってしまったと言った感じだった。

顔を真っ赤にしたかと思うと、今度は顔面蒼白になり、今にも失神してしまいそうな雰囲気であった。


え~と…………。

俺は七鈴菜さん同様に、彼女の気持ちは一切!!全く!!気付いてなかった最低男である。


本気で自分の鈍感さに辟易する。

いつから俺の事を想ってくれてたのか、いや、恐らくは中学の頃からかもしれない。

とは言え、それでも告白されて嬉しくない男はいないのだ。


「えっと……佐々木さ「「ちょっと待った(てください)っ!!」」ッ!!!!」


俺が佐々木さんに声を掛けようとするが、その言葉を二つの声に遮られてしまった。

驚いて後方を振り返ると、二人は凄い形相で俺の下に近寄って来た。

その剣幕に、俺は一歩後ろに引いてしまう。


「な、何かな?」


その迫力に、情けなくも上擦った声になる。


「何?じゃありませんわ!!この場は私にも告白する権利があると思いますの!!」

「そうよ!!私だってまだ告白もしてないのに!!」

「本来ならこんな状況下でするべき事ではないかもしれませんが、セツナ様はいつまで経っても気付いてくれませんし……」

「私なんて中学の時からアプローチかけてたのに気付いてくれなかった……」

「私は10年以上も想い続けてました……」

「え?!そんなに?それなのに気付いてもらえないなんて可哀想…………」

「ですよね!!そろそろ報われてもいいと思うんですよ!!貴方も大変ですわね」

「だよね~?いくら鈍くても限度があるよね?」

「まあ、相手はセツナ様ですし」

「うんうん。セツナくんの鈍感さは今に始まった事じゃないしね!」

「ストーーーーップ!!二人共取り敢えず落ち着いて!!」


何故か途中から意気投合してお互いを慰め合う二人を止める。

佐々木さんも突然の事に戸惑い、置いてけぼりを食らった感じで、逆に同情してしまう。


でも結局は今迄気付かなかった俺の方に問題はあるんだが……。


取り敢えず、このままでは話が進まないと思い、俺は二人に向き直る。


「え、えっと……七鈴菜さんは実は今朝気付いたんだけどね。でも、アリアもその……そうなのか……?」


それを聞いた七鈴菜さんは、ぱぁと顔を明るめて、恥ずかしいやら嬉しいやらで、赤くなった顔を両手で覆ってくねくねしだした。


「え~?気付いてくれてたの?何だ~、それなら言ってくれればいいのに~」


けれど、対照的にアリアの方はショックが大きかったようだ。


「何で……何で私の事は気付かないんですか……っ?!」


顔を俯かせて肩をぷるぷる震わせながら、怒り心頭だと言わんばかりに呟く。


「いやいや!アリアはあの頃はまだ子供だったじゃん!!」


そう、俺は悪くない…………と思う。


「…………セツナ様以外の方は気付いていたみたいですが?」

「へ?マジですか…………」


何故か敬語になる俺。


周囲が気付いて、俺が気付かないってよっぽどたろ?!

けどそんな事を言われても、俺にとってアリアは昔の11歳のままだしな……。

俺は決してロリコンではない!!

ん?…………あれ?

でも初めてアヤメと関係を持ったのは、アヤメがまだ12歳の頃だったような……

しかも、今のアヤメは20歳を超えてるとは言え、多少は成長してはいるようだが、元より童顔なわけで……それは傍から見たらつまり……?


…………………………………………

いや……考えるのはよそう……怖くなってきた…………。


俺は自分の考えに冷や汗を流した。


そんな俺に、アリアは今度は瞳に強い意志を宿し、俺の目を真っ直ぐ見つめて来た。

俺はその瞳から逃れる事が出来なく、俺もアリアの瞳を見つめ返す。


「なら、これからは私の事も見て下さい」

「アリア?」

「セツナ様が私を妹以上に思われていないのは知っています」

「……」

「ですがこれからは私を一人の女性として意識して下さい。私は『何番目』でも良いので、いつまでも待ちますから」


その笑顔は反則だと思った。

そこに居たのは、紛れもなく美しい大人の女性だった。

何だか置いていかれた気分にはなったが、俺はアリアの純粋な気持ちを、真摯に受け止めるべきだと決意する。


「……分かったよ」


すると、そんな俺達のやり取りを聞いていた七鈴菜さんが、オズオズと口を開いた。


「あの~……『何番目』ってどう意味でしょう……?」


その疑問は最もである。

地球の、特に【日本】と言う国で生まれ育った者にとっては、馴染みの無い台詞だろう。


俺も最初の頃は戸惑ったしな……。


それに答えたのはアリアだった。


「ああ、そうでした。この世界では【一夫多妻】【一妻多夫】は常識なんですよ?」

「「本当 (ですか)?!」」


これには七鈴菜さんだけでなく、先程まで放心状態だった佐々木さんまでもが強く反応した。

そんな自分の声に自分でまたもや驚いてしまい、彼女は顔を真っ赤にして慌てて俯いてしまう。

けれども、今度は自分の気持ちをはっきりと俺に伝えて来た。


「で、でも……こんな太ってる子……先輩も迷惑ですよね…………?」


そんな事をポツリと洩らす。


どうやら彼女は、よっぽど自分に自信がないようだ。

確かに佐々木さんは、他の子と比べればポッチャリ女子ではあるが、俺からすれば「それが何?」と言う感じである。


「ん?そうかな?そんな事はないと思うけど?俺には、佐々木さんは充分魅力的に見えるし、寧ろ俺の方が釣り合い取れてないと思うけど?」


なので俺は、素直に彼女に自分の気持ちを伝える。


だってほら……漸く見せてくれた彼女の笑顔は、こんなにも可愛らしいものなのだから。


俺の言葉を聞いて、佐々木さんは今日初めての満面の笑顔を見せてくれたのだった。


「……これは負けてられませんわね」

「そうですね。誰が一番早く刹那くんに女性として見られるか……勝負です!!」


俺が佐々木さんの笑顔に見蕩れていると、後ろで二人が何故か勝手に闘志を燃やしていたのだった。

それを聞いて、再び真っ赤になる佐々木さんだったが、不意に何かを思い出したように、躊躇いながらも口を開く。


「あ、あの……今更なんですが……一つ気になってる事があるのですけど…………」

「あら、何かしら?」

「王女様と神宮先輩は知り合いなんでしょうか?」

「「「あ」」」


…………本当に今更であった。





「つ……疲れた……」


あの後、後日アリアの方から詳しい事情を話すと言う事で、何とか二人に納得してもらい解散となった。

その時は、善文も一緒に説明してやってほしいとは伝えてある。

まさかこんな形で知られる事になるとは……もっと先の話だと思ったんだけどな……。

昨日といい今日といい、何とも濃厚な二日間である。

俺は、昼飯を食べるのは諦めて、部屋で少し仮眠を取ろうと自室までの道程を歩いていた。

すると、前方からある方が優雅にこちらに歩いて来るのに気付く。


「あ!」


その方も俺に気付くと、瞬時に顔を強ばらせる。

俺はそれに気付かないふりをして挨拶をした。


「ごきげんよう。殿下」

「あ、はい!こ、こんにちは!」


少し緊張しながらも、クルト王子はそんな挨拶を返してくれたが、すぐに周りをキョロキョロとしだした。


「?」


俺が少し訝しんでいると、クルト王子が俺の下に足早に近付き、声を殺して聞いてくる。


「も、もし宜しければこの後お時間をいただければ嬉しいのですが……」


何故俺なんかにそこまで畏まるのか疑問ではあるが、折角の申し出だったので、俺は二つ返事で了承した。

どうせ自室に戻って寝るだけだったし、『例の事案』を施すまでまだ時間はあるしちょうどいい。

クルト王子は俺の返事を聞くや否や、喜色満面にいそいそと俺を自室兼部屋に案内する。

クルト王子の俺に対するこの態度にどう対応すれば良いか正直困ってしまう。

そう思いながらも、クルト王子の後に着いていき、自室に招き入れられた俺は、勧められるようにソファーに腰を下ろす。


「………………」

「………………」


え?何この状況?

沈黙が痛い……。

てっきり何か話があると思ったが違うのか?


クルト王子はチラチラと俺の方を見るが、特に何かを言う訳でもなく、先程メイドが用意してくれた紅茶を飲んでいるだけだった。

俺はこの沈黙に耐えられなくなり、とうとう自分から話を振る事にした。


「えっと……殿下?」

「は、はい!」

「いや……前から気になってたのですが……何故俺にそんな緊張なされるのです?」

「え?」


クルト王子は最初何を言われたのか分からないと言ったようにキョトンと首を傾げた。


いや……首を傾げたいのは俺の方なんだけど……。


「あ……あの、私とセツナ様はこれが初対面ではないんですよね?」

「……え?そうですね。殿下は当時まだ4歳ではありましたが……」

「そう!!それです!!」


いきなりクルト王子が勢いよく立ち上がり叫ぶので、俺は驚いてしまった。


「し、失礼しました……」


自分の醜態を恥じるように、クルト王子は顔を赤らめ、居住まいを正す。


「実は、その頃の記憶が曖昧でして……何となくしか覚えていないのです」

「まぁ、当然ですよね。殿下はまだ幼くあらせられましたから」


結局何が言いたいんだろうか?


「最初の頃は、何か『兄』みたいな方を慕っていたような、そんな朧気のような記憶しかなく……ですが!父上や姉上、それにトマルスでさえからも、セツナ様の武勇伝を聞かされました!!それこそ幾度となく!!私はとても心が踊りました!!魔王を倒しただけでなく、この世界の為にセツナ様がなされた事!!セツナ様は正しくこの世界の【救世主】であらせられます!!私はセツナ様を心から尊敬して「ストーップ!!」……はい?」


はい?じゃありませんよ殿下……。


咳き込んで語り出したクルト王子を、失礼ながら俺は無理矢理に制止させた。

このままでは永遠に語り尽くされてしまう勢いだったからだ。


しかも、何やら【救世主】とかなんとか不穏な単語も聞こえてきた気が…………。


「と、取り敢えず落ち着いて下さい。お父上達に一体何を聞かされたのでしょうか?」


その内容に、俺は悶絶する事になる。

魔王をたった一年で討伐し、尚且つ三年かけてこの世界の奴隷制度を廃止、世界を平定した【初代勇者】ーー。


それは嘘ではない……嘘ではないんだが…………。

何か色々と脚色されて美化されてるんですけど?!


クルト王子は目を輝かせて、俺の事を語ってくる。


いや……もう……こんな奴ですみません。


実物を見せられて失望されるのではないかと思いきや、長年刷り込まれた事はそうそう簡単には払拭されないらしい。

挙句の果てに、クルト王子だけでなく、この世界の人達は俺の武勇伝を鵜呑みにし、あまつさえそれらが本として出版されている事に心底驚いてしまった。

俺はもう頭を抱えるしかなかった。


本当に何でこんな事になった……?


とは言え、その事がきっかけとなり、クルト王子もすっかり緊張の糸が解れたのか、俺に普通に接してくれるようになった。

クルト王子の要望もあって、彼の事もアリア同様に名前を呼び捨てにする事(めっちゃお願いされた)も許され、俺達は時間一杯までお互いの事を語らった。

俺はクルト王子……クルトの部屋を退室したのち、急いで『例の事案』を施す為にとある部屋に向かった。

まだ今日中にやらなければならない事があるのだーーー。

………………………………………………カオス(バルス)!!


作者としては、年下ヒロインを出したくて……あまつさえ、複数の少女達に迫られてタジタジになる主人公を書きたかったの……


無双主人公だけど鈍感で女に弱い……そんな王道まっしぐらを書きたかった筈が…………作者も途中から、何を書いてるのか分からない結末になってしまいました! (T^T)


こんなふざけた内容を、最後まで読んで下さった皆々様には、本当に感謝感激雨あられでございまする~<m(__)m>

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