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虚無主義の果てに

作者: 鱈井 元衡

第一条 全ては幻想である。この世界に真理と言うものは存在しない。


第二条 人間は『全ては幻想である』以外のいかなる信条にも従ってはならない。


第三条 この世界に存在するあらゆる思想は、人間をたぶらかし、殺し合いをさせるために創造された。


第五条 目に見えるものがそうであるように、心の中にあるものもすべて幻想である。


第六条 一番良いことはとにかく平静であることである。


第七条 自分の存在を誰にも知られることなくこの世を去るのは、最高の死に方である。


第八条 あらゆる災難に遇っても、心を()たせることができる者は至高の人間である。


第九条 愛はあらゆる感情の中でもっとも下劣なものである。なぜなら、それはこの世界がさも生きるに値する場所であるかのように我々を錯覚させるからである。


第十条 あらゆる欲望と崇拝心は絶対悪である。


第十一条『すべては幻想である』という思想は、言葉で理解するだけでは足りない。それには実感がともなわなければならない。


第十二条 命のある限り、誰でも『すべては幻想である』という言葉を常に心の奥底から抱きつづけねばならない。


第十三条 この幻想である世界の他に真実の世界があると意ってはならない。それは極めて現実逃避的な思考である。


第十四条 人間の上に立つ者は人間しかいない。


第十五条『すべては幻想である』とむやみに他人に強要する必要はない。『この世界は真実である』とおごりたかぶっている人は、必ずこの世界が無価値であることを思い知るであろう。


第十六条『すべては幻想である』ことを拒否する人間を極力避けよ。


第十七条『すべては幻想である』という信条に価値はない。しかし意味はある。


第十八条 この世界は単に自然発生したにすぎない。


第十九条 全ての物は幻想であるという点で平等である。


第二十条 人間は無力で無価値な肉の塊にすぎない。


第二十一条 思考は脳の働きだけではなく、それ以上に精神に根づいている妄念によっても動かされている。


第二十二条 妄念とは、この世界に意味があるかもしれないという思いであり、誰もが犯している究極の大罪である。


第二十三条 人間にとって最悪の行いは、自らの思想信条によって人を殺すことである。


第二十四条 罪を持たない者など、この世界には一人としていない。


第二十五条 妄念がある限り、死んでも人間は生まれ変わってしまう。妄念は、一人の精神世界を超越するのである。


第二十六条 生まれ変わりをすることは、妄念に次いで重い罪である。


第二十七条 生まれ変わりを終わらせるためには、妄念を棄てねばならない。


第二十八条 妄念の支配をゆるめるには、周りに何もない環境に暮らすことが望ましい。


第二十九条 物質的だけではなく、頭の中も極力無の状態にとどめておいた方がよろしい。


第三十条 死ぬと、人間は自分が持っている精神に順応した世界に生まれ変わるが、その際記憶や思考と言ったものは全て破棄される。


第三十一条 精神と物質は、本来同一の物である。


第三十二条 自己と他人は、本来同一の物である。


第三十三条 全てが無である以上、この世界にある物全てはみな、無から派生したのである。


第三十四条『ある』ものは『ない』が、『ない』ものは『ある』ことにはならない。


第三十五条 我々は何も知らされずにこの世界にたどりつき、何も知ることができないままこの世を去っていく。しかし、その中で経験したことは決して無駄にはならない。


第三十六条 もし『すべては幻想である』ことを否定し、輝かしく生きている人がいるのなら、その人はおそらく賞賛に値すべき人間である。


第三十七条 もし『すべては幻想である』ことを受け入れて悲嘆にくれている人間がいるならば、その人は憐れむべきであろう。


第三十八条『すべては幻想である』を正しく受け入れているのは、それが世界の真理であることを片時も忘れず、しかしそこに生きる力を見出している人間である。


第三十九条 無からは無しか生じない。


第四十条 我々は、無を具現化した存在である。

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