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9 買い物

 どうにもならない事は、しょうがないのだ。

 俺がどこか違う場所にいる事も、命を狙われたことも。

 

 一様に仕方がない。


 起こったことを後悔しても始まらない。

 取りあえず、身の回りのものをそろえないといけない。


 さっき外に出ようとしたとき、オルガにこう言われた。


「やっぱり、ユウキさん臭いですよ! お風呂入ってきてください!」


 確かに、もう10日以上風呂には入っていない。

 服も洗っていない。


 ここの宿にはお風呂はないという。

 人々は体を拭く事を風呂に入るというらしい。

 浴槽が無いのかと聞いてとんだ恥をかいた。


 お金がかかるとのことで、少しのお金を銀貨で払い、銅貨をお釣りでもらった。

 お湯は20ギルだそうで、銀貨を払うと、80枚も銅貨を渡された。

 銀貨は100ギルみたいだ。そして、銅貨は1ギル。


 効果の値段を把握したところで気づいた。

 金貨はかなり使いにくい。

 大きな買い物でもしないと、これは使えない。

 あと2枚ある。


 あの爺は余程金持ちだったらしい。

 これは運が良いと思いながら待っていると、オルガがお湯を持ってきてくれた。

 そのまま二階の部屋へ移動してもらい、お湯を運んでもらった。


「それじゃ、ちゃんと拭いてくださいね」


 タオル1枚を渡され、オルガは仕事に戻っていった。

  

 桶に入ったお湯でタオルを濡らして、体を拭いていく。

 汗をかいていたし、垢もあるだろう。

 強めにタオルを押し付けて、「臭いよ去れ」と念じつつ体を隅々まで拭いていった。


 10分くらい体を拭くのに格闘していた。

 ある程度清潔になった体で、10日以上着た服を着たくはなかったが、これ以外に服はない。


 仕方なく服を着ると、やる事が出来たことに気付いた。


「服買って来るか」


 汚れた水の入った桶を持って、階段をゆっくり降りると、オルガが玄関を掃除していた。


「オルガ」


 呼びかけると、すぐにこっちに来てくれた。


「はい、じゃ、貰いますね」


 オルガは桶を受け取り、愛想笑いか何かすると、そのまま水を捨てに行った。

 聞きたいことがあるので、ちょっと待っておく。


 少しすると、オルガは戻ってきた。

 不思議そうな顔をして、俺を見てくる。


「どうかしたんですか?」

「いや、服のストックが無いから買ってこようと思うんだけど。どこに行けばいいかなって……」

「あぁ、なるほど。それならここを左にまっすぐ行くと、市場があります。大体の物は揃っていますから、服もあると思いますよ」

「分かった。ありがとう、行ってみるよ」


 外に出て、左に曲がる。


 歩きながらオルガは使えるな、なんて思ってしまった。

 危ない。心を許すな。

 誰が敵か分からない。


 でも、街中で襲ってくる奴はいないだろう。

 油断しないようにするだけでいい。

 それに、自意識過剰になっている節がある。


 誰もかれもが俺を殺そうとしているなんて事は無い。


 落ち着けば、良い。


 武器を持っている奴が怪しい。

 というか、気を付ける。


 俺も武器を携帯している。

 でも防具はない。

 防具も買うべきだろうか。


 護身用として要るかもしれない。

 金貨があれば買えるだろう。


 そうと決まれば早いな。

 取りあえず、必要なものを確認しつつ、俺は市場へ向かった。




 印象は雑多だな、だ。

 人がたくさんいる。さっきまでは(まば)らだった人影も、たくさんいる。

 露店が立ち並び、色々なものを打っている。

 食べ物。衣服。日用品。武器。

 

 デパートみたいだ。

 デパート? ってなんだっけ。

 何か思い出しそうだ。


 色々記憶が欠如しているな。

 どこを覚えていて、何を忘れているのか分からない。

 

 忘れたことを忘れた、みたいな感じだ。


 どんな薬剤を使ったのか、分からんな。


 それよりも今は変えるものを買わなくては。

 俺の格好は目立つ。


 今はローブを着ているからいいが、その下は制服だ。

 周りの人とは違う格好をしている。


 目立つのは避けた方が良い。


 俺を殺しに来た奴らの仲間がいないとも限らない。

 出来るだけ目立たないようにしないと。


 適当にぶらついていると、安そうな衣服がたくさん置いてある露店を見つけた。

 下着も置いてある。


 値段も銅貨数枚で買える物ばかりだ。

 安い。中古だろう。それで十分だ。


「銀貨1枚分で上下をそろえてほしい。下着も頼む」


 足元を見られないように、上からものを言ってみた。

 店員は悪い顔をするどころか、良い客が来たとでもいうばかりに破顔した。


「銀貨1枚分ですね。ちょいとお待ちを」


 どこにでもいるようなおじさんが、露店の中に山積みになっている服の中からどんどん服を選び取っていく。

 ファッション性など皆無だが、周りに溶け込むにはちょうどいい。

 1分ほどで、かなりの衣服を詰め込まれた袋を渡された。


「こんなにいいのか?」

「中古ですからね。安さがモットーで」

「なるほど」


 礼を言って、その場を後にした。

 うん。良い買い物だった。袋いっぱいの衣服を持って、さらに市場を見て行った。

 防具だな。


 軽いのでいい。

 でも、よく考えれば要らない気がする。

 何に使うというのか?


 別に戦いの達人でもあるまいし。 

 戦いに行くわけでもない。でもな。また襲われたときに、困るかも。


 結構ここらへん危なそうだし。

 ほら。あそこにいるおっさんとか超危険人物。

 ムッキムキでモーニングスター持ってるよ。


 あんなので襲われたら一たまりもない。


 俺は狙われているという観念の下、行動した方が良いか。


 そうだ。

 俺たちは拉致監禁された挙句、31人も死んでしまったのだ。


 何か陰謀がありそうだ。

 とにかく、情報を持つ俺を生かそうとはしないだろう。


 いるか。防具。


 周りをきょろきょろしながら、武具を探す。

 ピッカピカの鎧などもあるが、とても金貨1枚で買えそうにない

 中古だな。

 それに軽そうなやつ。


 5分位人の波にもまれていると、それらしい店を見つけた。

 若い男が防具に囲まれた状態で、人を呼び集めている。

 俺もそれに誘われて、そこに行った。


「いらっしゃい! 何買う?」


 男は目ざとく俺を見つけると、大声で俺に話しかけてきた。

 買うつもりだからいいのだが、あまり大きな声を出さなくても聞こえてるよ。


「安くて、軽くて、良い防具」

「そりゃ理想だ」

「金属じゃなくていいよ」

「オッケー」

 

 男が奥へ引っ込んだ。俺はさらに男に告げる。


「一式ね!」

「了解、了解!」


 男はその辺に積んである皮鎧や小手を弄っている。

 あまり嵩張らないようだ。あとは足当てとか。ほとんど服に近い。


「兜的なものもない?」

「あいよ」


 男は帽子が立ち並ぶ一角に手を突っ込んだ。

 適当に選んでいるように見えるが、大丈夫だろうか。


 選んだのは本当に帽子にしか見えない。ないよりはましか。ヘルメットみたいだ。


「占めて、9800ギルでいいぞ。ちょっとおまけ」

「はい、金貨」


 残り2枚になった金貨が吹き飛んでしまった。残る金貨は後1枚。

 袋に入れてもらい、あとは日用品を買うと、市場を後にした。

分量少なくてすみません。

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