77 先を見据えて
今日は二話投稿。
こっちが一話目。
目的が出来れば、人生にはやりがいが出る。
俺の場合は、マクスウェルから情報を引き出す事だ。
奴が何者で、どういう人物なのかなどどうでもいいことだ。
次の試合の開催を知らせるファンファーレが鳴り響いた。
すでにトーナメント表は各所に張り巡らされ、どの代表がどいつと戦うかは分かっている。
情報が解禁されてから六時間余り。
そろそろ情報が周知されているはずだ。
トーナメント参加者は全部で八人。
七の代表と一の予選通過者で構成されている。
各代表は里から選りすぐった人材を派遣している。予選通過者は何人もの頂点に立ったほどの実力者だ。
すでにマクスウェルは勝利を収め、準決勝へとコマを進めている。
予選通過者を瞬殺するほどの強さを見せ、会場が盛り立ったことは記憶に新しい。
大会参加者が通る通路でアイカたちに見送られ、装備の点検をする。
板金鎧も兜も腕当ても脚当てもその他諸々。異常なし。
ドワーフ印の最高の防具だ。
「行ってくる」
贈る言葉は聞かず、駆け出した。
通路から漏れる光がまぶしい。
先が見えないが、すぐに目も慣れた。
闘技場はコロシアムのようになっている。
観客も大勢収納できるようになっているようで、たくさんの目が俺を射抜いていた。
ドワーフ代表が人間であることに、若干の落胆は見られるが、それでも推薦された人物という事もあり、期待はされているようだ。
賭け事も行われている。
俺は下から二番目にオッズが高い。
つまり、期待されていない。
余談だが、一番低かったのは予選通過者だ。
被推薦者の実力はそれだけ高いという事である。
俺は全参加者中、二番目に弱いと思われている。
どうも他の連中は名の知れた人物なようで、どいつもこいつもその筋では有名らしい。
ということはマクスウェルもかなりの有名人という事だ。
その中で無名の俺がポツンと大会の参加に食い込んでいるのだ。
誰もお俺には賭けはしない。
せいぜい大穴狙いくらいだろう。
そして俺の相手は、オッズで上から三番目。
リザードマン種族のガナドス。
三つ又の槍と鱗鎧を着ている。鎧の方は軽そうながら、頑丈そうだ。
体格も人間を超えていて、二メートル五十センチはある。
一回りも二回りも大きい。
体表は赤い鱗で覆われており、元から固そうだ。
並大抵の攻撃は効かないと見える。
まだ試合開始のゴングは鳴っていない。
ガナドスは俺に近づいて、槍をゆっくり向けた。
俺も黒剣を抜いて、軽く槍に当てた。
これが試合前の礼儀らしい。互いの武器を軽く当てる。
正々堂々戦おうという所作だという事だ。
ガナドスが爬虫類丸出しの顔で、俺の左腕に視線を向けた。
「して、それは如何に?」
「喰いたいってやつがいてな。左腕と命を交換してやった」
「それは何とも豪快」
フフッとガナドスは笑って、数メートル後ろに飛んだ。
「しかし某なら無傷で倒せたことでしょう」
「かもな」
俺とガナドスは同時にゴングを持つ男に目を向けた。
会場の緊張感が一気に高まる。
ガァァァアン! 銅鑼が鳴らされた。
試合開始だ。
ガナドスが先手必勝という気概を見せながら、一歩踏み込む。
三つ又の槍が俺の心臓を狙ってきた。
防具を着ているからその程度なら死にはしないが、衝撃が全身に伝わるだろう。
サイドステップで回避しつつ、黒剣で撃ちかかる。
「縮地突き!」
槍の遠い間合いからはやりあわない。
ガナドスはすぐさま槍を引いて、俺の剣を弾いた。
「重ッ!?」
突きの威力が予想以上に高く、ガナドスは体勢が流れた。
剣の軌道は僅かにしか弾かれず、そのままガナドスの右胸を捉えた。
縮地突きの威力は減殺されず、鱗鎧を砕き、黒剣の刃は少しだけガナドスに埋まった。
ガナドスは横なぎに槍を振り廻した。
一歩下がり槍の範囲外に出る。
「ぐぅぅ……」
「大見得切ってその程度か?」
油断なく構える。正中線に片手で剣を構え、防御の姿勢を取った。
ガナドスの右胸からは血が流れ出す。
会場からはどよめきが渦巻いていた。
ざわざわとうるさい奴らだ。
「まだやるか?」
「……その内倒れるであろう。しかし、まだ終わってはおらんぞ」
「その意気だ。華々しく、散れ」
ガナドスの気力は衰えず、槍を握り直し、突撃した。
決死の覚悟だ。
何やるかは分かっている。
真っ向勝負をお望みだ。
ならば、真っ向から叩き潰す。
オッズ三番目を倒す。
オッズ一番目のマクスウェルを倒すため、まずは俺の糧となれ。
「乱れ突き!」
「乱れ突き!!」
やはりガナドスも乱れ突きを選んだ。
槍も一本突き、二連突き、乱れ突きを使える。
この中から自分の実力と気力勝負に持ち込みたいなら、乱れ突きしかない。
剣と槍がぶつかり合う。
火花を散らし、金属音が会場中に響き渡る。
打ち合いが何十合にも上ると、会場の観客も立ち上がり、応援し始めた。
ガナドス負けるな、と叫ばれ、一層の力を出してくる。
乱れ突きは力の限り打つ事が出来る。
どこまでいけるか。
勝負。
「うらあああぁぁっぁあああ!!」
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅううう!!」
槍と剣では、槍の方が有利だろう。
だがそれでも、ガナドスの槍は俺には当たらない。
全て乱れ突きで打ち落とした。
そして、試合は終わる。
致命的な金属音とともに、もう一つ地面から落下音が鳴り響いた。
「折れたか……」
ガナドスが折れた槍の穂先を手に取った。
「装備の差、と言いたいが、それも含め勝負だ」
「生きているだけましだ。続けるか?」
ガナドスは首を振った。
「やめておこう。槍で剣に勝てないのでは、勇者にはなれまい」
「そうか」
銅鑼が鳴り響いた。
勝ったのは俺だ。
この選考会の台風の目が静かに、そして荒々しく暴れはじめた。
次もどうぞ。




