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49 愚痴と祈り

今日は二話投稿

こっちが二話目

「まじふざけんなっつーかありえなくないっていうかもうこれはどうしようもないけどあの時の俺はどうかしていたとしか思えないマジで」

「早口すぎ」


 瓦礫を撤去しながらぼやく俺。

 隣ではアイカとルイちゃんも励んでいる。


「いやでもありえないからこれ。なんでこんなことしてんの俺。ねぇ。聞いてる? また早口でしゃべるぞこら」

「聞いてますよ。どうぞ」


 台車に乗せれるだけ瓦礫を乗せて、アイカが移動し始めた。

 俺も瓦礫を持って、それに付いて行く。


「なんで俺がこんなことしてんの? ねぇ? なんで俺が町の復興作業手伝ってるの? 言ってみ? ねぇ? 言ってみ? この糞みたいな作業をなんで俺がしているのでしょうか?」

「ユウキさんが町を壊したからじゃないんですか?」


 壊れた町を見ながら門の外に出た。

 そこにはたくさんの瓦礫が転がっていた。

 どうやって処理するのかは不明だが、とりあえず騎士団から町の外に出しておけという依頼が出ていた。


 その騎士団も瓦礫の撤去に精を出しているのだが、何とも言えない気分になる。


「町を壊したのはしょうがなかったって言っただろ」

「団長さんに言ってませんよ。あの時、ユウキさん黙り込んでましたし」

「ぐっ……!」


 瓦礫を集積場において、また瓦礫の収集作業に戻る。

 ルイちゃんも台車から瓦礫を下ろして、こっちにきた。


「お金がもらえなかったのは残念だったわね。もっと現実的に交渉するべきだったのよ。金貨100枚とかじゃなくて、3枚くらいならもらえたんじゃない?」


 ルイちゃんが台車を転がしながら、思いをはせた。

 金貨100枚は確かにやりすぎた感が満載だった。


「でもでも、あの仕事はそれなりに危険だったし。正当な報酬としてだな」

「私は、団長さんの気持ちも分からなくもないわよ。守る町を破壊しながら移動していたんですもの。まぁ、守りたいなら自分たちがちゃんと守れっていう感じはあるけど」

「だろぉ!? あの野郎。自分の責任は棚上げにして、全部おれたちのせいにしやがった。そのおかげで、町の住人には、白い目で見られるし。踏んだり蹴ったりだわ!! もうこういう依頼受けないから。受けてもいいけど、もうあんなことしない。これ命令ね。決定ね。アイツのいう事なんて聞きたくもない。顔も見たくもない。死んでほしい。死ね。死に腐れ。あーあ。アイツ死なないかな。ねぇ、いつ死ぬのかな。明日? あ、今日だな。殺しに行こう」

「口より手を動かしてくださいよ」


 アイカが瓦礫を台車に詰め込みながら、苦言を呈した。

 アイカはすでに荷台に瓦礫を積み終えていた。


 俺もさっさと瓦礫を詰め込んだ。


「ねぇ。これもう何日やってる?」

「さぁ? 一週間くらい?」

「アホ、死ね。やってられるか。もう抜け出したい。全然面白くない。迷宮も面白くないけど、こっちはもっと面白くない。やりたいことやりたい。無いけど。やりたい事なんてないけど。糞が。なんでこんな作業してるんだろ。作業ゲー。つまんねー。無駄に疲れるし。騎士団本部でも強襲した方が絶対面白い。行こうか。行こう。殺りにいこう。あのいけ好かない団長を首チョンパしてやろう。そうしよう」


 門の外に出て瓦礫を転がす。

 口では不満を垂れているが、仕事だけはやっている。

 一応は金も出るので、やらない訳にはいかないのだ。


 それでも給金は雀の涙。一日の食事代程度だ。

 糞喰らえ。


 そんなこんなで、今日は瓦礫撤去の最終予定日。

 今日で町の瓦礫はすべて撤去できる。

 すべて手作業だ。

 つらい。 

 レベルも上がらないし。


 つまらん。


 町に滞在しつつ、つまらない作業は今日で終わりだ。


「はい、ようやく終わり。ああ。糞。アイツ死なないかな。死ぬよね。明日死ぬよね」

「もういいじゃない。終わった事よ。ユウちゃん。流して流して」


 俺は悶々としながら、カギ付きの宿屋に戻って武装を整えた。

 金属鎧は残念ながら買えない。


 金貨をアテにしていたので、その金貨が無ければいい鎧は買えない。

 それでもオークに腹のあたりを貫かれたので、修理には出した。


 それだけでも銀貨数枚が飛んでいくのだから恐ろしい。

 二人の装備も修理に出したりしていたら、あっという間に金貨一枚が無くなってしまった。


 俺たちの全財産はそうない。

 ここで散財したら、食えるものも食えなくなる。


 装備を着たら、門の外に出てアイカに案内させた。

 

「元々は、アイカの復讐のために来たわけだしな。里帰りと行くか」



 森の中に入り、アイカの案内を受ける。

 オークはいない。

 この前の戦闘で全滅してしまったのだろうか。


 一体や二体居てもいいと思うのだが。


 俺が不思議そうな顔をしていると、ルイちゃんがフォローを入れた。


「オークが他のモンスターを制圧したって言ってたでしょ。当分はこの辺りも安全地域よ」

「なるほど」


 緊張していた俺がバカみたいだ。

 アイカの移動方向が少し変わった。


 そろそろアイカの生まれ故郷だ。


「ここ、ですね……」


 見る影もないというのはこの事だろうか。

 家であっただろう物だけはある。


 焼けていたり、潰れていたりする。

 血痕も残っているし、壮絶な戦いがあったのだろう。


 アイカは無表情だ。

 血痕は残っているが、死体はない。


 オークに食われてしまった。

 食物連鎖だ。

 知らないが。


「お墓、作りましょ」


 ルイちゃんの一声に、アイカが一つ頷いた。

 デカイ石を持ってきて、それを墓石にした。


 騎士剣で村の住人の名前を刻み込んだ。

 

 何人も、何人も。

 これだけの人が死んだのか。


 共同墓地みたいになってしまったが、仕方がないだろう。

 遺体のない墓だが、無いよりはマシだ。


 アイカが誰も居ない墓に手を合わせる。

 俺とルイちゃんも茶化さないでその様子を見守った。


 虫や鳥類の声しか聞こえない。

 無残な残骸しか残らない村には、俺たち3人だけ。


 それから数分。

 アイカは祈り続けていたが、遂に終わったようだった。


 アイかこちらに振り向いて、ニコリと笑った。

 吹っ切れた様子だ。


 ボーッとしていた訳ではないが、少しだけドキッとした。

 落ち着いて、落ち着いて。

 

「で、どうしますか? また迷宮にでも行きますか?」


 この町にも迷宮はある。

 一階層はオークだ。


 あいつらの顔はあまり見たくないが、ここから移動するのも面倒ではある。

 それに町の復興作業はまだ終わっていない。


 ぶっ壊した建物を修理する手伝いくらいはしなくてはならない。

 それが一応の義務だとは思っている。


 町を守護する騎士団の数も減ったし、少しばかり滞在しても構わない。


 要は、町のために少しだけ働こうという事だ。


「当分は迷宮は無しだ」


 二人は少しだけ驚いた顔をした。

 俺はそれを無視して、アイカの故郷を後にした。

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