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46 奪還へ

 地下から町へと入るため、地面を押すように扉を開ける。

 だが、かなり重いようで、盗賊のナツでは開けられないようだ。


「アイカ」


 代わりに獣人のアイカを向かわせる。


「開けれるかな……」


 真上にある扉を必死にあけている。

 押しまくっていると、少しだけ隙間ができた。


「ゆっくりな」


 魔法使いのルインの火球で照らされる扉を目にしながら、音をたてないように注意を促す。


「ちょっと黙っててくださいよ」


 アイカが何もしていないのに、注文だけはする俺にいら立っている。

 アイカの両腕の力こぶが浮き出るころには、完全に扉が開いていた。


「扉っていうより、蓋みたいな感じね」


 ナツが出口を見てそう言った。

 

「そらっ」


 アイカが床であろう扉をずらして、最初に騎士団本部だという内部に侵入した。

 続いてナツが侵入。


 軽やかな身のこなしだ。


 踏み込んだだけで、かなりのジャンプ力を見せて内部に侵入している。


「安全です。来てください」


 アイカが顔を覗かせて、手を伸ばしてきた。

 俺は手を掴んで、アイカが引き上げる。


 俺も騎士団内部に侵入できた。

 応接室のような間取りだ。


 ソファーと机。

 豪奢な内装が目につく。


「と、その前に」


 俺も脱出口から手を伸ばして、スキンを引き上げる。

 魔法使いのルインや狩人のツーベルクも引き上げ、最後に戦士カルベラとルイちゃんを引き上げれば、侵入隊8名が揃う。


「どうする? このまま外に出るか?」


 スキンが扉に手をかけようとしたが、アイカが待ったをかけた。


「血のにおいがします。不用意に出るのは……」

「だが、どうする? このまま中に居ても仕方ないぞ」


 スキンが現状を鑑みてそう言う。その顔は困り顔だ。


「血の匂いがするという事は、オークがいるという事だろ? 騎士団と合流――」


 その時、ガキンと剣が打ち合う音と共に、断末魔が聞こえた。

 

「近いな……!」


 戦士のカルベラが剣を抜いたが、盗賊のナツに止められている。


「あなたが戦うとうるさいでしょ。駄目よ」


 カルベラが不満そうにしている。

 戦えないことにイラついているのか。


「うぃうぃうぃ、じゃ、俺が行こうかな。魔法は五月蠅くないし」

「じゃあ、僕も」


 魔法使いのルインと狩人のツーベルクが準備を始めた。

 ツーベルクは矢をつがえる。


 扉の前にナツが配置され、ツーベルクとルインが武器を構える。


「3、2、1、行け……!」


 ナツの合図とともに、扉が開けられた。

 率先して、好青年のツーベルクが駆けだした。

 扉の向こうに出て、小さな声で報告する。


「オーク、1」


 その瞬間、矢が放たれた。

 ヒュガッという音と連動して、矢が一直線に廊下を突き抜けた。


 俺からは見えないが、矢が直撃したのだろう。


 ドサッと何かが倒れる音がした。


「うぃうぃうぃ、俺なんもする必要なかったな」


 ルインが笑いながら、杖を収めた。


「お前の魔法はまだ温存だな」


 スキンが廊下に出て、辺りを検分する。

 

「他には居ないみたいだな」


 その言葉を聞いて、他の連中も廊下に出る。


「居ないって言っているが、外は五月蠅いな」


 今も怒号と共に、剣が打ち合う音が聞こえる。

 この騎士団本部に入らせないようにしているのが分かる。


「加勢するか?」


 スキンがバカなことを言い始めた。


「アホ。今アイツらががんばっているから、ここには一体しかオークがいなかったんだろう。それに、俺たちの仕事は、門を開ける事だ」

「……まぁ、そうなんだが」

「不満そうだな」


 あからさまに嫌そうな顔をするスキン。

 もう少し表情を隠してほしい。


「二手に分かれよう」


 スキンが言い始めた。


「8人で移動しても目立つ。俺たちはここで戦ってる奴らを守る」

「でたよ。我が儘」


 戦士のカルベラがうんざりした顔でそう言った。


「我が儘ってことはないだろう」

「いや、我が儘だ。8人で行動するのは確かに目立つからやめた方が良いが、騎士団や非戦闘員を守るのは不可能だ」

「やってみなきゃ分からんだろ」

「無理だ。どれだけのオークが来ていると思っているんだ。俺たちが言っても焼け石に水だ」


 そう言われれば、スキンも黙るしかない。


 ツーベルクが矢をつがえながら、スキンに迫る。


「どうするんですか? やるんですか? やらないんですか? 言っときますけど、矢の本数にも限りがあるんですからね」

「ぐぅ……」


 それはツーベルクのサポートが無くなることを意味している。

 そうなれば困るのは、スキン達前衛だ。


 大量のオークを相手に、矢を温存していては、死ぬのはスキンだ。


「……仕方ない。諦めるとしよう」


 カルベラが安心したように息を吐いた。


 空気と化していた俺が会話に割って入る。


「二手に分かれるのはいい手だ。隠密行動でこの人数はないだろう。最終的にはうちのアイカとナツさんが生き残ればいい」


 スキンが「俺だって生き残るわ」なんて言っているが、無視だ。


「正面から出る必要はない。適当な窓から外に出よう」


 廊下にあるガラス窓を静かにあけて、ゆっくり音をたてないように外に出た。

 騎士団本部はそれなりの高さの塀に囲まれているようだ。


 音のしない方にコソコソ移動する。


「……流石に飛び越えられないな」


 コンコンと壁を叩いて、強度を確認する。

 これなら壊せなくもない。


「ここからは素早く行こう」

「うぃうぃうぃ、ユウ。壊す気だな」


 ルインが杖を構えて、魔法力を行使しだした。


 全員すぐに離れた。

 そして備える。


火槍(ファイヤランス)


 一本の火槍が塀に炸裂して、轟音を轟かせた。

 ガラガラと音を立てて、塀が崩れ去った。


「うぃうぃうぃ、早く行くぞ」


 確かにこれ以外の方法は思いつかなかったが、即断即決とは。

 恐れ入る。


 話し合う余裕すらなく、俺たちは破壊した塀から出た。


 音を聞きつけたオークがやってくる。

 東方面からやってくる。


 俺たちが目指しているのは、南だ。


 南にも少なくない数がいるに違いない。

 十字路に差し掛かって、スキンが叫んだ。


「ここでお別れだ。坊主、せいぜい生き残れ!」


 スキン一行は左に曲がり、南門を目指す。

 俺たちは右に進んだ。


「だいたい、場所がどのへんか分からないんだよな……」

「あれだけ偉そうなこと言っておいて、分からないとか……」


 アイカがとても残念な人を見る目で、ご主人様を見つめた。

 その目をやめろ。


 適当に南に向かう。誰ともすれ違わない。

 当然と言えば、当然だが、寂しい感じがするのは仕方がないというものだ。


 誰も居ない街を駆け抜ける。


「来てる!」


 アイカが警告をかける。

 止まる事は出来ない。

 止まれば見つかる。


 止まらなくても見つかる。

 ならば、どうするかなんて決まってるだろ。


「抜け!」


 3人で同時に武器を抜いた。

 曲がり角からオークが二体来た。


 どっちも鎖帷子を着ている。

 ぼろいが、防御力が少し高い。


 アイカでは真正面戦闘は難しい。


 ルイちゃんもそれが分かって、棍棒を片手に突っ込んだ。


「ぬぉぉおおおおお!!」


 ガキンと剣と棍棒が打ち合った。


 俺も騎士剣で残りのオークと攻撃をかわしあう。

 アイカが後ろから来る。


「一本突き!」


 アイカの攻撃は鎖帷子に阻まれる。

 通りはしない攻撃だったが、オークの体勢が若干崩れる。


 女とはいえ、獣人。

 オークとも勝るとも劣らない戦闘力。

 オークの体勢が悪いところに、俺は剣を振り下ろした。


 本気の一撃は、硬度の騎士剣によって破壊力を増大させる。

 オークの鎖帷子を粉砕して、肩口を砕いた。


「オッガ……!」


 痛みからオークが剣を落とす。

 隣のオークが少し引いた。

 かさになってルイちゃんが棍棒を振り廻す。


 振って振って振りまくる。


「そらそらそらぁぁ!!」


 ルイちゃんの激しい棍棒の嵐に、オークはたじろいだ。

 アイカが向かう。


 その間に俺はオークの頭に剣をたたき込んだ。

 頭蓋を砕く音が、アイカとルイちゃんに届いたはずだ。


 隣のオークは一体が死んだことで動揺した。

 その隙を逃さず、アイカが一本突きで下半身を突いた。


 太ももだ。


 オークの動きが鈍る。出血が激しい。

 ルイちゃんが走る。棍棒を振りかぶり、全力で振り下ろした。


「ッ!!」

 

 裂帛の気合で棍棒がオークの頭に叩き込まれる寸前に、オークは剣でガード。

 押し合う。この瞬間、オークの全意識はルイちゃんに向いた。


「んっ!」


 アイカがオークの後ろから切りかかる。

 鎖帷子に阻まれるが、勢いそのままに組み付いた。


 オークが暴れる。

 ルイちゃんが棍棒でオークの肩をたたいた。


「オギャッ!」


 オークが呻く。アイカが顎下に短剣を突き込んだ。


「……ォッ!!」


 オークの動きが鈍る。

 アイカがぐりぐり短剣を動かした。

 それに伴い、オークの動きが悪くなる。


 そこに追い打ちとして、ルイちゃんが頭に棍棒をたたき込んだ。

 ドカッと重い音がした。


 オークが片膝をついた。ルイちゃんが攻める。棍棒がまた頭に当たった。


「フゴッ……!」


 今度こそオークは倒れた。

 死んではいないだろうが、脳震盪で動けないくらいのダメージはあるはずだ。


「行くぞ!」


 止めは刺さず、その場にオークを放置する。

 走りながらアイカが焦ったような声で聴いてきた。


「殺さなくていいんですか?」

「お前がのどぶっ刺しただろ。そのうち死ぬやつを相手にしている時間はない」


 戦場となりつつある住宅街を走り抜ける。


 遠くの法で派手な音がし始めた。

 俺達じゃない。


「スキンだな……!」


 その音と同時にオークが後ろから追いかけてきた。

 オークは大きな音の方を気にかけているが、俺達を見逃す気はない。

 まっすぐこっちに走ってくる。


 オークは太って見えるくせに、スプリンター張りに早い。

 筋肉の権化と化している奴らの機動力は、ルイちゃんを軽く凌ぐ。


「ひぃ、ひぃ、どうしましょ……!」


 ルイちゃんのスピードに合わせていると、だんだん距離が詰め寄られ始めた。

 オークたちのテンションがめちゃくちゃに上がりつつある。


 オッ、だか、ハッシュ! だが言って、俺たちの後に続いている。


「やばいな……!」


 派手な戦闘音を背景に、俺たちは走り続ける。

 その間にも、オークたちの姿形が段々と大きくなっていく。

 早ぇ。

 鎧をガッショガッショ言わせながら追いかけられるのは、精神的な圧迫がすごい。

 あいつらの武器もやばい。

 でかい。


 つーか、あいつ。

 

「弩を持ってるわ!!」


 ルイちゃんの警告と同時に、矢が放たれた。

 ヒュガッと鋭い音とともに、俺の真横と矢が通過した。


「あぁっつ! いったぁぁ!!」


 アイカだ。

 肩に刺さった。 

 皮鎧を問題なく貫通している。


 アイカがよろめく。


「倒れんなよ!!」

「くっ……! あぁぁ!!」

 

 倒れかけたアイカは、自力で体勢を立て直す。

 治す暇はない。


「曲がれ曲がれ!!」


 後ろで弩を持ったオークがしゃがんで、矢を再装填し始めた。


「ルイちゃんは頭守ってろよ!!」


 一撃即死もあり得る。

 アイカが先に曲がり角を曲がった。

 続いてルイちゃん。


 最後に俺――!?


「ぶっな……!」


 足元に矢が刺さっている。

 間一髪だ。


 走る先には米粒大の集団が戦闘をしていた。

 スキンたちだ。


 追いすがるオークたちをなぎ倒している。

 強い。

 光の加護なしで、あそこまでできるのか。


 スキンがこっちを見た。

 俺たちの方に少しだけ移動する。


 しかし俺達には余裕はない。

 今すぐにでも助けてほしいくらいだ。


「後ろいるわ!」


 弩を持ったオークが一体、曲がり角から姿を現す。

 他のオークも射線に入らないように配慮しつつ、俺達を追いかけている。

 

 馬鹿じゃない。

 それだけの脳はある。

 認識を改めろ。


 オークが膝射に体制に入った。

 狙っている。

 だれだ。

 

 くそ。俺だ。

 まじかよ。

 よけろ。避けれるわけないだろ。

 矢を見てから避けるのか? あ? 無理だろ。


 やば。来てる。

 撃ちやがった。


 まっすぐ飛んでくる。

 ほとんど影しか見えない。

 線としてしか見えなかった。


 腕で射線を遮れ――!


 腕を持ち上げた瞬間、目の前が覆われた。


「ユウちゃん!」


 ルイちゃんだ。

 俺をかばう。

 ガキン! と大きな音がした。


「ラッキー……!」


 ルイちゃんは止まった足をあわてて動かし始めた。

 かばってくれたことに気づくまで、数秒かかった。


「……大丈夫か!?」


 遅れて確認する。


「鎧に当たったわ。大丈夫。刺さってない」


 ルイちゃんにはできるだけ固い装甲を渡してある。

 それが今回幸いした。

 背中に矢が当たっただけで、矢自体は弾かれたのだ。


「……私は、治してほしいんですが」


 アイカが血をドバドバ出しながら、前で呻いている。


「我慢しろ! あいつから逃げる事だけ考えろ!!」


 すると、前から怒声が響き渡った。

 ほとんどなに言ってるかわからない。

 スキンの大声だ。


「ッベルゥゥゥ!!」


 ツーベルクがあわててこっちを見た。

 目線があったような気がする。

 ツーベルクはこっちに矢を向けた。


 すぐに放たれる。


 俺の横を通り過ぎ、矢は後ろへと飛んで行った。


「ギャシ……!」


 それだけが聞こえた。

 後ろを振り返る。

 弩持ちのオークが倒れていた。

 頭に矢が刺さっている。


 あの距離で当てるなんて……。

 その時、また爆発音が耳に襲い掛かった。


 ルインの火魔法がオークの集団に炸裂していた。

 建物すら巻き込んでの一撃必殺だった。


「なんだ、あれ……」


 あの魔法はなんだ。

 着弾直後に、周りが勢いよく吹き飛んだ。

 木端微塵と言っていい。

 それに巻き込まれて、オークも燃えている。


 火槍じゃない。

 火槍の効果範囲はかなり限定的だ。

 一体しか攻撃できない。


 対して、ルインの火魔法。


 うらやましいな。

 ここからでも気味悪く笑っているのが分かる。

 殺し合いというか、一方的な殺戮だ。


「見とれてる場合じゃない……!」


 ツーベルクやルインの鮮やかさに目を取られていた俺たちは、また走り出す。

 路地に入って、後ろから来るオークを撒こうとするが、上手くいかない。


 走って、走って、曲がって、直進して。

 偶に爆発音がして。

 爆発音がして……。


「なるほど……!」


 ルインはオークも殺していたが、建物も意図的に破壊していた。

 殺そうと思えば、あのド派手な魔法じゃなくて、火槍を使えばいい。


 だが、あの爆発する魔法を使うというのは、それなりに意味がある。


「死ねオラァぁぁ!!」


 火槍で建物を破壊する。

 何本も火槍を展開して、後ろに射出した。


 攻撃力の高い火魔法による建物の破壊。


 破壊された部位が、高所からオークたちに降り注ぐ。


 オークたちは慌てて止まる。

 中には、瓦礫に巻き込まれる奴もいた。


 アイカとルイちゃんが喝采する。


「やった……」

「いいわよ……! やっちゃいなさい!」


 アイカが肩に突き刺さった矢を引き抜いた。

 時間的余裕ができたおかげだ。


 瓦礫の中に木材があって、それが燃えている。

 オークたちはそれに完全に足止めを喰らっていた。


 束の間、安息が訪れる。


「歩きながらでいい。治療するぞ」


 後ろのオークたちが下がっていった。

 遠回りするつもりか。


「前言撤回だ。急ぐぞ」

「うっ……。せっかく治ると思ったのに……」


 アイカがやけくそ気味に走り始めた。

 直してやりたいのはやまやまだが、俺たちも下がれない。

 路地を塞いだなら、俺たちは進むしかないのだ。


 ここで立ち止まって、出口に回り込まれてはたまらない。


 走って路地を抜けた。走る。

 明るい。

 薄暗い路地を抜けると、太陽がかなり上っていた。


 時間の経過を感じさせる。

 右からもオークが来ている。


 さっきの連中だろう。

 右の路地から来たみたいだった。


 時間稼ぎもあまり意味をなさなかったようだ。


 逃げるべく、走る。

 遠くの方で爆発がした。

 ルイン。


 いいな。

 俺も一気に建物を破壊しないと、後ろの連中を足止めできない。


 それに、また弩を持った奴が来た。

 こっちに構えている。


「よけろ!」


 さっと3人で横っ飛びした。

 アイカが若干遅れ気味だったが、狙われたのは俺だった。

 すぐ隣を矢が駆け抜けた。


「くっそ……!」


 じり貧だ。

 路地に入る。

 火槍で建物を破壊する。

 瓦礫が降り注いで、路地を塞いだ。


 この手には慣れている。

 オークたちはすぐさま引き返した。


 左右に分かれている。

 挟撃されてしまう。


 ちんたら走るアイカを押しのけた。


「どけ!!」

「わっ……!」


 急げ。

 この機会を逃せば、殺される。

 走れ、走るんだ。


「はっ、はっ、はっ……!!」


 心拍が早い。

 呼吸が乱れそうだ。

 それでも止まらない。

 止まったら死ぬ。


 こんな所では死ねない。

 金もあるし、復讐の事もある。


 こんなのはただの試練に等しい。


 次のステージに駆け上がるための、俺のきっかけとなれ。


 俺は路地を駆け抜けて、オークに先んじて、大通りに出た。

 どこだ。ここ。知るか。そんなの。

 今重要なのは、


「ぶっ壊すことだ!!」


 可能な限り、火槍で辺り構わず建物を破壊する。

 瓦礫の山が量産される。

 オークの阿鼻叫喚の声が響いた。


 建物が燃える。

 火槍が燃え移った。

 

 そこら中から火の手が上がっている。

 遠くを見れば、ルインの物と思われる被害も出ていた。


 だが、目に映る路地は全て塞いだ。

 瓦礫と炎で進むことはできない。


 オークたちは実質俺たちを見失った。

 新手は除くが。


「あ、危ないでしょ! 私たちも巻き込まれるところでしたよ……!?」


 アイカが傷口を気にしながら怒鳴ってきた。

 それについては猛省しても悪くないが、緊急措置だ。


 傷口に手を当てて、治してやることで落としどころにする。

 光魔法で数秒。掌が光る。

 完治だ。


「べ、便利、ね……」


 ルイちゃんが息を切らしながら、そういった。

 無理する必要はないのだが。

 

「もう少しだ。行くぞ」


 休ませたいのはやまやまだが。今は敵地にいる。

 多くのオークがこの町を占領しようと散っている場面だ。


 それに暴れすぎた。

 その内にこの辺りには、オークがあふれるように来る。


 その前に、南門を開けるのが俺たちの仕事。


 走りながら、門を見る。

 遠かったあの門も、あと少しだ。

 だんだん朝日が町を照らす。


 俺たちは走り抜ける。

 体が熱い。

 調子がいい。

 これだけ走れば、眠気なんてどこかに行ってしまった。


 体中の筋肉が、雄たけびをあげている。


 もう、万全であると。

 十全の力を発揮できると言っている。


 剣を抜いた。

 門の前には少なくないオークがいた。

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