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44 開戦

 夜も明け、朝日が昇る直前。

 空は白み始めて、もうすぐ太陽も上る時間だ。


 南門の前には多数の騎士と冒険者が軒を連ねている。


 もう眠いなんて言っている時ではない。


「やっぱり、オークたちはまだ攻めない」


 外にいるオークたちは、そこにいるだけで攻めようという姿勢に欠けている。

 森の中に隠れようともしていない。


「舐められてるな」


 自分たちの存在をアピールして、俺たちを牽制しているのか。


「ふざけやがって」


 周りの殺気立った男たちの反応を見ても、俺の見解は間違っていない。

 オークたちはすでに勝った気になっている。


「豚が……!」


 続々と剣を抜く騎士と冒険者。


「殺してやる……!!」


 静かに闘志を燃やす。

 魔物如きに舐められているという時点で、人間の尊厳が傷つけられている。

 かくいう俺も、多少むかつく。


 騎士剣を抜く。


「行くぜ」


 門はまだ閉められている。

 巻き上げ式の強固な門だ。


 門の両端に筋肉で覆われた二人の男が、一気に鎖を巻きあげた。


 門が開く。


 ゴゴゴ、とゆっくりではあるがその閉ざされていた門が開く。

 開戦だ。

  

 始まる。


「気を抜くな。死ぬぞ」


 アイカとルイちゃんにそういった。


 数秒もしないうちに、人一人が通れる高さまで巻き上がる。


 怒号が響き渡った。


「突撃!!」


 騎士団リーダーが率先して走った。

 早い。

 疾風の如き速さで一人、門を駆け抜ける。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……!!」


 周りもそれに続く。

 狭い門に人が殺到している。

 

 早くいかせろ、俺を出せ。


 続々と騎士から門を出ていく。

 先頭のリーダーは突出して、オークに突撃している。


 まだ始まっていない。


 遠すぎてどうなっているか分からないが、接敵はしていない。


 どんどん人が排出される。

 来る。


 俺たちの移動だ。


「行くぞ!」


 走る。

 前の連中に付いて行って、門を抜けた。


 南の奥には広い森が広がっていた。


 その手前でオーク共が寝そべっていた。

 そして俺たちが来たことに驚いて、慌てて武器を取り出している。


 奇襲するつもりが、奇襲された形だ。


「づぇぇぇえぃ!!」


 前方から金属音が聞こえ始めた。

 剣戟の音だ。


 始まった。

 人間とオークの全面戦争だ。


「行け行け行け!!」


 誰ともなく叫ぶ。

 前を行く連中も全力疾走で、オークの群れに突撃していく。

 残り数メートルもしないうちに大量のオークの群れにかち合う。


 先頭はどうなっているか。

 騎士団リーダーは生きているかなんて思ったが、そんな余裕もない。


 周りの冒険者も散り散りになって、オークを殺害しに行く。

 パーティー単位で散開していく。

 俺たちは3人。


 アイカとルイちゃん。


 左右を見れば余裕綽々で付いてくるアイカと、必死の形相で走るルイちゃん。


 俺は舌なめずりする。


 昨日の戦闘でオークの感じは分かった。

 行ける。

 経験した。


 オークが来ている。

 撃ち漏らしか。


光の加護(プロテクション)!!」


 必須魔法を二人にかけて、光魔法の恩恵が俺たちの全身を支配する。

 軽い。

 体が羽毛のように軽い。


 来る。

 オークも剣を構えた。


「俺が行く!!」


 血沸き肉躍る。

 完全に目の前のオークは俺を舐めている。


 ひょろい様に見えるだろう。

 だが、俺の力はドワーフにも勝る。


 オークが剣を振り下ろした

 盾を使う必要もない。


「おらぁ!!」


 片手で騎士剣を操り、オークの剣を全身全霊で弾いた。

 文字通り弾き返した。


「オッ……!?」


 オークの手から剣が離れた。

 俺の攻撃に剣を握る手が耐え切れなかった。

 

 オークは剣を手放し、無装備になる。

 オークの筋力は把握している。

 

 人間に勝るだろう。


「ただの人間だったらな」


 ニヤリと俺の顔が醜く歪んだ。

 そうなっているはずだ。


 一本突きでオークの喉元を粉砕した。

 爆発したかのような威力に、後ろに二人が息の飲んだ。


 オークの首は折れ曲がり、二度と動かなくなった。


「ふふふ……!!」


 ようやく把握した。

 

「俺は強い」


 笑いが止まらない。

 だが、醜い笑いだ。

 悲壮な笑いだ。


「復讐するための力だ……!」


 またしても生贄のオークが来た。

 両手で剣を持っている。


「見たな」


 俺の筋力を。

 膂力を。


 オークは両手持ちで剣を握る。

 ガッシャガッシャと金属鎧を鳴らしながら、俺に駆け寄る。


 肉弾戦車だ。

 筋肉だるまめ。


 理解すれば早い。

 俺は強いんだ。


 低能なお前らにやられる余地など存在しない。


 オークが剣を振り下ろす。

 一歩引いて何事もなく回避。

 オークは連続で剣を振り廻す。

 

 剣で弾き、盾で防ぐ。


 ガツンガツンオークの攻撃は止まないが、俺に当たることなどまずあり得ない。


「オッシュ! オッシュ! オッシュ!」


 ガンガン来るが、関係ない。

 俺の騎士剣は折れないし、盾が壊れるはずもない。


 魔法は温存だ。


「二連突き!!」


 金属鎧を打ち抜く。

 切っ先は全く欠ける様子はない。


「良い剣だ……!」


 体勢が崩れるオークにルイちゃんが来た。

 

「どぉぉぉぉい!!」


 棍棒を振り下ろして、オークの体をぶっ叩いた。

 衝撃がオークの体を貫く。


 体勢が良くない状態でルイちゃんの攻撃を受けて、オークは立て直すだけで必死だ。

 後ろを気にしている様子はない。


「……ッ!」


 ひそかに移動していたアイカがオークの背中に組み付いた。

 喉を掻っ切る。


 最近あの行動が多い。

 組み付いてから、喉を斬るのがアイカの常套手段だ。


 オークは喉を切り裂かれ、崩れ落ちた。


 周りを見る。

 どこも激戦だ。


 オークも逃げる様子がない。

 数で押し殺せるつもりなのだろう。


 確かに数こそ多いが、質の高い連中もこっちには多い。


 一騎当千張りの奴も少なくないという事だ。


 そういう奴は無視して、さらに奥に進む。


 まだまだオークはいる。

 見晴らしのいい平地。


 そこかしこで死体が乱立され、死が夥しく生産される。


 しかし、やはりというか。

 

「オーク強いな」


 一階層から出てきたオークだと聞いていたが、確実に3階層コボルトより強い。

 あいつらなんて比較対象にもならないほどの筋力と体格だ。


 装備も良いし。


 数も多い。


 これは村が滅ぼされても仕方がない。


 周りの冒険者も殺されている。

 一階層オークだと思って侮っていたのか。


 それとも純粋に力の差があったのか。

 数も力だ。


 散り散りになったのは失敗だったんじゃ……?


 後悔に駆られるまもなく、オークが来た。

 あっちも必死だ。


 殺さなければ殺される。


 それは俺たちにも言える。

 盾で相手の攻撃を防いでいる間に、ルイちゃんも攻撃する。


 オークから見れば小さなルイちゃんは的にしづらい。

 それに俺がオークの攻撃を確実に弾いたときにしか攻撃しないという徹底ぶりだ。


 オークがじりじりと追い込まれる。


「右!」


 アイカが叫ぶ。


「ワタシが行くわ!」


 ルイちゃんが棍棒片手に駆け出す。

 それを見たアイカもルイちゃんと一緒に行った。


 二人だけでは厳しい。


 オークはルイちゃんがいなくなって、ここを好機と判断した。

 一気呵成に打ち掛かる。


 騎士剣で受け止め、盾でぶん殴った。


「ブグッ……!」


 オークのむき出しの牙が折れた。

 肩口から騎士剣をたたき込んだ。


 本気の一撃だ。

 鎖帷子を食い破り、鎖骨を粉砕する。


「オゲッ……!」

 

 苦しむオークの鼻っ面に再度盾をたたき込む。

 殴る。殴る。殴りまくり、オークは膝をついた。


火弾(ファイヤバレット)


 回避する時間すらなくオークの頭が燃え上がった。

 数発叩き込み、炎上するオークを確認して、アイカたちの救援に向かう。


 ルイちゃんは対等にオークと渡り合っている。

 だが、それはアイカありきだ。


 ちょこまかとアイカの支援が入る。

 すごいスピードでオークを斬りつける。

 だがオークの装備が硬くて、刃が通らない。


 それでいい。

 獣人の筋力も高い。


 一撃を受けるオークの姿勢が崩れ、ルイちゃんが攻撃する。

 オークは必死に受け止め、アイカが攻撃。ルイちゃんが棍棒を振り下ろす。


 オークが地面に逃げた。転がって、回避する。


「縮地突き」


 起き上がる寸前に、騎士剣がオークの喉を穿つ。

 剣をねじり上げ、止めを刺した。


「良いとこ取りですね」


 アイカが息を切らせながら、こっちに来る。

 ルイちゃんも来た。こっちはあちこち板金鎧に傷がついていた。


 ルイちゃんは装備を生かした戦い方をするが、こっちから見るとひやひやしてしょうがない。

 わざと攻撃を受けて、反撃するのだ。

 金属の鎧をしているからと言って、あまり危ない事をしないでほしい。

 

 兜を付けていないし、頭に一撃喰らったら死んでしまう。


 戦闘開始から数分。


 人間、オーク双方に多大な被害が出ている。

 迷宮じゃないから、勝手に死体が無くなったりはしない。


 太陽が昇り始めて、当たりも明るくなり始めている。

 日光が死体を照らし出し、血のにおいを鮮明にする。


 血臭が嫌でも鼻についた。


 その最中、オークたちに動きがあった。


 ドタドタと東から足音がしている。

 

「どういうことだ?」


 俺たちがいるのは南だ。

 あのあたりに人間はいない。


 そう思った時には、オークたちが歓声を上げていた。

 オウ、オウ、オウ!! みたいな感じでテンションが上がっている。


 自殺行為のような突撃をしてくる。

 殺されるのを覚悟で、人間に襲い掛かっている。


「オッシュ!! オオォォッシュ!!」

「ちょ、まじか、どんだけ……!」


 常軌を逸した猛攻だ。

 もう死んでもいいという気迫すら感じる。

 周りのオークたちもそんな感じだ。


「どういう――!?」


 そして、俺たちは嵌められていたことに気付く。

 奴らの方が上手だった。

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