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幕間2

今日は2話投稿。

こっちが二話目

 私の名前はレイ・アブソリュート。

 名門のアブソリュート家の出自だ。


 私の生まれが高貴なだけでなく、天性の才能を授かっていた。

 スキルだ。


 私は生まれながらにして、スキルを持っていた。

 先天的スキル持ちというやつだ。


 格が違う。


 後天的にスキルを手に入れるような野蛮な事をしなくても、私は神に選ばれている人間である。

 神は私に期待し、周りの人間も同様に私に期待を置いている。


 生まれて瞬間から私の人生は、勝つことが約束され、負ける事など断じてない。

 私と対等に争えるとしたら、それは貴族出身であり尚且つ先天的スキル持ちの連中だけだ。


 そんな連中は少ない。

 ただでさえ、神に愛される人間は少ない。


 私は数少ない神に寵愛を受けた、特別な人間である。

 その私は、神に愛されるがゆえに、正義を重んじる。


 神に与えられしこの剣は、正義のために使えと神は仰られている。

 正義。


 魔の連中に使うのだ。

 私はそのつもりで訓練を積み、戦う術を磨いてきた。


 それがどうだ。

 今は逃亡犯を負う一人のタダの人間だ。

 はっ。

 笑える。


 私の力はこんなものではないと、隊長も気づいておられない。

 私の先天的に与えられた剣術は、何者にも負けない。


 たかだか後天的スキル。

 何が蠱毒の法。


 私こそが最強であり、それを証明するための武術大会でも私は優秀な成績を収めた。

 私こそが正義であり、私の行為そのものが正義である。


 故に、これは正義の断罪であり、正当化される事柄である。


「や、やめて、ぐれ……」


 一人の男が血と涙でぐちゃぐちゃになった面を晒している。

 おお。なんと汚い。

 汚らわしい。


 私の近くに居て良い存在ではない。


 私は剣を振り下ろした。

 私の剣は絶対。

 敗れる根拠などなく、勝利するのに疑う余地は存在しない。


 何と嫌な仕事か。しかし、神よ。分かっております。

 これこそが試練。


 私に課せられた試練なのですね。

 この薄汚い連中を排除する事こそが、私を一段階昇華させるのに必要な仕事。


 私は分かっております。神よ。


 私は後ずさるの冒険者を追って、悠然と歩を進めた。

 

「お、お願いします! 何でもします! お助けを! 慈悲を!」


 女が叫ぶ。

 豚が。

 耳が穢れる。


 私は躊躇なく剣を振り下ろした。

 頭を完ぺきに割った。


 剣術レベル5の兜割り。

 文字通り頭を割る技だ。


 これを食らって無事なのはそうはいない。


 兜すら割るような技だ。

 防御不可能。


 私にふさわしい技だ。


 周りを見れば、死体がたくさん転がっている。

 占めて6体。

 この人数で迷宮に潜るという卑しさ。


「これだから冒険者は……」


 私はハンカチを鼻にあてがい、優雅にその場を去る。

 振り返る必要もない。

 証拠は迷宮が隠滅する。


 隊長。

 あなたは甘い。


 蠱毒の法? 


 所詮は後天的に手に入れたスキルです。

 私の才能あふれだす剣術の前には、すべては無に帰す。


「しかしここははずれだったようですね……」


 逃亡者はここの迷宮には潜っていないようだ。

 目ぼしい新人はすべて殺したが、そのような奴はない。


 いや、むしろ殺してしまった可能性もある。 

 我が、剣によって無残にも敗北したのだ。


「くふっ」


 それはそれで愉快。

 所詮はその程度だったのだ。


「おっと、いけない」


 決めつけはよくない。

 まだ生きている。

 この前提で動いていないと、タダ働きになってしまう。


 この迷宮の一階層はどうやらボギーのようだ。

 けもくじゃらの猿みたいなやつだ。

 

 どうにもスマートじゃない。

 尖兵を送り込むなら、もっと美しく気高い存在であるほうが私はいいと思うのだが、諸君はどうだろう? 

 ボギーは私に鋭い爪を振り下ろすが、意味がないぞ。


「斬り返し……!」


 剣術レベル6のカウンター技、斬り返しでボギーを真っ二つにした。

 

「口ほどにもない……」


 私は魔宝石すら要らない。

 それ程困窮していない。

   

 給金は十分だし、死体漁りなど高貴なる私がするような行いではない。


 正義にのっとれば、敵味方にはわけ隔てなく接するべし。

 敵であっても死体を辱める必要はない。


 私の正義は皆に平等で、残酷だ。

 隊長にそう言われたことがある。


 なるほど。と私は思った。

 私は博愛主義者なのだ。


 すべてを愛し、すべてを憎む。

 この相反する感情の同居が、私を成立させているのだ。


 逃亡者よ。

 あなたには同情しよう。

 しかし、私の正義の心はあなたを許しはしない。


 あなたは存在するだけで、震える者たちがいるのを忘れてはならない。

 良いか?


 私の思考が正義なら、そなたは悪。

 悪なのだよ。


 逃亡者よ。


 擦り付けではない。

 上層部はお前におびえ、日々を震えながら過ごしている。

 それはまるで可愛いワンコのようだ。

 

 屑の集まりだ。

 そう私だって思う。

 だが、神は違うようだ。


 あいつらを正義だという。


 仕方がない。

 私は敬虔な信徒なのだ。


 神の前にひれ伏し、神の助言に耳を傾ける。


 殺せ。


 神はそう仰せだ。


 私の口が吊り上がる。

 どこだ。蠱毒。


 貴様を殺すのは、


「私だ」

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